Exceは多くの企業で必須ツールとなっています。Excelを用いた業務は多岐に及び、集計、分析、メモ、議事録など、さまざまな業務で活躍できるのが魅力です。
一方で企業によっては手動での作業となり、非効率な運用となってしまいます。Excelは一部作業を自動化する機能もあるため、積極的に活用すべきです。
そんななか「具体的にExcelの業務を自動化する方法を知りたい」「どの作業を自動化できるか知りたい」などの課題を持っている方は多いでしょう。
この記事では「Excelを用いた業務の自動化」について、具体的な手法を紹介します。Excelを積極的に業務活用している企業の担当者の方は、参考にしつつ自動化を組み合わせて運用を見直してみてください。
監修者
竹村貴也
株式会社ファンリピートCEO
著書:「ChatGPTによるPythonプログラミング入門. AI駆動開発で実現する社内業務の自動化」
Excel業務の課題
はじめにExcel業務の課題について紹介します。今後の打ち手を把握するためにも、自社の運用方法を確認しながら課題を明確にしましょう。
複数名で同時に更新できない
ExcelはGoogleスプレッドシートと違って、基本的にローカル環境で作業するため、同時編集ができません。
チームで運用するにあたって、同時に作業する場合は、実際に編集画面を共有しながら認識を合わせる必要があります。
例えば「部下が作ったシートにエラーが出たので上司の指示のもと修正する」といった作業をする場合、Googleスプレッドシートの場合は直接コミュニケーションを取らずに「部下がどのセルをどう編集したか」を確認できます。
一方でExcelの場合は、対面や、リモートツールの画面共有機能などで進捗を見える化する必要があります。これによりチームでの作業が非効率になります。
データ集計に時間がかかる
手動でデータ集計をする場合はその都度作業の時間がかかり非効率になります。
例えば「マーケティングやセールスのための顧客データ」などは日々更新されるものです。「MA、CRM、SFA、Googleアナリティクスなどの外部ツールのステータスを確認しながらExcelに書き写す」といった面倒なタスクが必要になります。
毎日のタスクになるので、手動での作業はとても非効率です。
どれが最新ファイルかわからなくなる
Excelをチームで運用する場合、最新ファイルがわからなくなることがあります。メンバーが別ファイルとして保存するなどの行動をとると、正式なファイルがどれなのか分からなくなり、作業のミス・無駄につながります。
「上書き保存をルール化する」「ファイル名の命名規則を定めておく」などのレギュレーション設定が必須です。それでも手動の作業が入ると、ヒューマンエラーのリスクは発生してしまうので注意が必要となります。
ファイルが属人化しやすい
シートの作成者だけが関数などの仕組みを把握している場合、Excelの編集が属人化してしまいます。
例えば社内のデータ集計・分析内容が変化した場合、Excelシートの改善が必要となります。この際に編集作業が属人化していると、作業の遅れが出ます。特定のメンバーが退職した場合、Excelシートを運用できなくなる可能性もあります。
Excel業務を自動化するメリットとは
Excel業務を自動化することで、上記の課題の解決につながります。具体的なメリットについて紹介します。
人的ミスの削減
Excelシートの集計・分析を自動化すると、ヒューマンエラーを防止できます。先述した通り、手動での作業は記入ミスが起こりがちです。特に同時編集できないExcelの場合は「誰がいつミスをしたのか」がブラックボックスになることもあります。
自動化において、ヒューマンエラーが起こる箇所は「最初の設定」だけです。設定が上手くいけば、後は人間の手で編集する必要がないため、人的ミスのリスクを大幅に軽減できます。
人材不足の解消
Excel業務は毎日の作業になるものです。手動で運用をすると、どうしても工数がかかります。「Excel業務がひっ迫しすぎて、社内リソースが不足する」といった問題はよく起こります。
その点、Excel作業の自動化によって手動作業の工数を削減できるため、人材不足を解消できます。より働きやすい環境づくりにも寄与します。
生産性の向上
Excel作業を手動で進めるのは非効率です。自動化することで生産性が向上します。
単純にExcelの記入作業工数を効率化できるのはもちろん「ヒューマンエラーが減少する」という点でも生産性向上につながります。ミスを報告・改修する手間が省けるためです。
また自動化によって空いたリソースを他の仕事に集中することで、生産性が高まるのも魅力です。
業務コストの削減
Excel業務の自動化による社内の工数削減は、費用で置き換えると「人件費の削減」につながります。作業工数削減だけでなく、ミスの改修の時間的コストも削減できます。
また業種によってはコスト削減ではなく、売り上げの向上にもつながります。例えば「ミスの防止」によって顧客満足度が高まり、チャーンレート(解約率)が下がる・LTV(顧客生涯価値)が高まるなどのメリットが考えられます。
従業員満足度の向上
Excel業務を手動で進めることで、無駄な工数がかかります。その工数によって「本業に集中できない」「人員が足りない」といったデメリットがあります。
すると、社内の不満・疲弊が進みます。その結果、離職が増え、さらに人材不足が進んでしまう、という悪循環は中小企業に多い失敗例です。
Excel業務を自動化することで、社内リソースを確保しやすくなり、また本業に集中できるようになります。これにより「働きやすい職場環境づくり」にも寄与します。
従業員満足度が高まることで、離職率を下げられます。その結果、間接的に「採用コストの削減」「社内スキルの向上」などのメリットにもつながります。
Excel業務を自動化する方法
それでは、具体的にExcel業務を自動化する方法について紹介します。自動化したい作業によって、手段を選びながら活用してみてください。
マクロ
マクロとは希望する処理を設定することで操作を自動化できる機能を指します。プログラミングのスキル・ナレッジは必要ありません。
Microsoft公式は、マクロのユースケースについて、以下の例を挙げています。
- 社員の稼働時間と給与テーブルから給与を算出する
- 各部署の売上を合算する
- ダウンロードしたCSVレポート形式に整える
- 取引先ごとの入金額と明細を突き合わせる
- システムのインポート機能に合うCSVファイルを作る
- 部門ごとの在宅勤務比率のグラフを作る
- 伝票・請求書を印刷する
参考:Microsoft「Excel マクロは難しくない! VBA からマクロ ボタンまで業務効率化の方法を解説」
Excelの「表示タブ」には「マクロ」という項目があり、記録をおこなうことで設定を保存できます。高度なスキルが必要ないので、実践しやすいです。
VBA
VBAとは「Visual Basic for Applications」の略称です。Microsoft製品に搭載されているプログラミング言語を指します。
マクロと比べて、より高度な処理ができます。例えば以下のような作業が可能です。
- 高度な条件分岐のロジックを実装する
- 複数のブック・シートにまたがった処理をおこなう
- 外部Webサイトのデータを取得して処理する
VBAはプログラミング言語ですが、比較的易しく、初心者の方でも習得しやすいといえます。開発環境の構築も必要ありません。
RPA
RPAとは「Robotic Process Automation」の略です。端的に言うと「人間がおこなうタスクをロボットで自動化するツール」を指します。
基本的には、サードパーティのツールを導入しExcelと連携することで活用します。各社が自動化したいタスクごとに性能の異なったツールをリリースしています。
RPAではマクロやVBAと比べて、より柔軟なタスクに対応可能です。自社でマクロ・VBAの実装、運用のスキルがない場合など、RPAを導入することで安心して運用できます。トラブルがあった際にも、対応を他社に任せられます。
弊社・ファンリピートは、Excel業務を自動化するサービス「Unify」を提供しています。
はじめにお客様にヒアリングをしたうえで「Excelを用いて推進したい業務」を、Unify上で開発します。従来のExcel業務をUnifyに移すことで、直感的に操作できるようになります。また必要な費用は構築のイニシャルコストのみで、ランニングコストは必要ありません。
気になる方は以下より詳細をご確認ください。
生成AI(Copilot)
2024年1月16日、Microsoftは「Copilot Pro」をリリースしました。生成AIを駆使してExcelデータの分析、グラフ化などを半自動化できるサービスです。
「Copilot Pro」に加入すると、タブに「Copilot」というボタンが出現し、サイドバーにチャット画面が表示されるようになります。現状のExcelの記載内容について、自然言語で対話をすることで、データ抽出・分析・グラフ化などができる機能です。
チャットでの対話が必要になるので完全に自動化はできません。しかし、手動でおこなっていた分析業務を半自動化できます。
Webスクレイピング
Web上のデータを収集してExcelに記載する業務は「Webスクレイピング」をすることで自動化できます。
例えば「新規事業開発のために競合のサービスの情報を集める」「マーケティング施策のために競合製品の口コミを集める」などの業務を自動化できます。手動でおこなうと、丸一日かかってしまうような面倒な業務です。
WebスクレイピングはVBAを使ってできます。Microsoft製品に備わっている「Microsoft HTML Object Library」「Microsoft Internet Controls」というライブラリファイルを使ってWeb上のデータを参照します。
そのほかExcelには「Power Query」という機能が標準で備わっています。これを用いてスクレイピングすることも可能です。またRPAを使って作業することもできます。自社のスキル・ナレッジレベルに応じて、適した方法を選びましょう。
Excelを使って自動化できる業務の例
これらの手法を用いて、具体的に自動化できる業務の一例を紹介します。
業務内容 | 自動化内容 |
データ入力 | 商品情報、顧客情報、売上データなどを自動的に入力する。 |
レポート作成 | 毎月の売上レポートや顧客リストなどを自動的に作成する。 |
データ分析 | 売上データや顧客データを分析する際に、グラフやピボットテーブルなどを自動的に作成する。 |
メール送信 | 顧客への注文確認メールや請求書などを自動的に送信する。 |
ファイル整理 | ダウンロードしたファイルを自動的にフォルダに整理する。 |
Webスクレイピング | Webサイトから自動的に価格情報や商品情報を収集する。 |
データ変換 | CSV形式のデータをExcel形式に変換するなどの業務を自動的に実践する。 |
計算 | 複雑な計算式を自動的に計算する。 |
スケジュール管理 | タスクや予定を自動的に入力する。 |
資料作成 | 提案書やプレゼンテーションの議事録などをCopilotを用いて自動的にExcelにまとめる。 |
基本的には定型化されたタスクを自動化できます。ただしCopilotが登場してからは、より柔軟な業務も半自動化したり、提案してもらったりできるようになりました。
Excel業務を自動化する際の注意点
実際にExcelを用いた業務を自動化する際の注意点を紹介します。始める際に心がけたいことも記載しますので、参考にしてみてください。
業務フロー全体を確認したうえで無駄のない設定を心がける
Excel業務を自動化する場合は、最初に「どの業務を自動化したいのか」を明確にすることが重要です。まずは業務フロー全体を俯瞰して確認しましょう。
思いつきで一部の業務だけを自動化してしまうと「1つの設定で済んだマクロ・VBAを複数作成しなければいけない」など、無駄が発生します。設定が増えるごとにExcelの処理動作が遅くなるとともに、マニュアル・レギュレーションが複雑になります。
そのため、まずはExcelを用いた業務フロー全体をまとめましょう。そのうえで無駄のない設計を心がけることが必要です。
Web版のExcelではマクロ・VBAの機能が制限される
Web版のExcelはブラウザで機能するよう軽量化されています。セキュリティを守りつつ処理速度を担保するため、マクロ・VBAの機能を使えません。
自社でマクロ・VBAの記録、実行をする場合は、デスクトップ版Excelを使用しましょう。ただし、これにより業務フローが変わり、反対に非効率になる可能性もあります。この場合は「RPAの導入」など、別の方法を模索する必要があります。
仕組み・レギュレーションをチームに共有しておく
マクロ・VBAなどの仕組みは社内で属人化しがちです。属人化すると改修担当者が固定されたり、退職に伴ってナレッジが失われたりします。Excelのシートは定常的に使うものですので、リスクを回避しましょう。
具体的には「自動化の仕組み」をドキュメントに残す必要があります。また改修のルール・レギュレーションを定めたうえで社内に共有しましょう。
もし社内にスキルを持つ人材が少ない場合は、社内講習をするのも手段の一つです。場合によっては外部の研修サービスを取り入れてください。
デバッグ・メンテナンスなどの保守体制を整えておく
特に初めてマクロ・VBAなどを設定する場合は、設定のミスが起こりがちです。必ず設定した後は第三者によるデバッグをおこない「正しく動作しているか」を確認しましょう。
また運用した後の保守体制も整備しておくべきです。改修のスキーム・担当者をあらかじめ決めておきましょう。
まとめ
今回はExcel業務の自動化について解説しました。手動でおこなうと、膨大な工数がかかってしまう業務ですので、紹介した手法を用いて、自動化を推進しましょう。
また自社でマクロ・VBAに関するスキル・ナレッジがない方は、外部サービスを用いてExcel業務を効率化する方法があります。
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