数年前から「システム開発の内製化」が話題になっています。プロダクトや社内システムを持つ企業が、自社メンバーのみでシステムを開発することを指します。
従来はSIerをはじめとした開発ベンダーにすべて任せるケースが一般的でした。こうした状況から一変し、現在では社内完結型に切り替わりつつあります。
そんななか、経営者や開発責任者のなかには「システム開発を内製化したらどんなメリットとデメリットがあるの?」「どうやって内製化したらいいの?」と悩んでいる方もいるでしょう。
今回はシステム開発の内製化について、注目されている背景から、目的、メリット・デメリット、成功事例などを紹介します。
記事を参考にしつつ、メリットが大きいと感じた場合は、採用・教育など内製化に向けた取り組みを進めてみてください。
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システム開発の内製化とは
システム開発の内製化とは、その名の通り「社内のメンバーだけでシステムを開発すること」を指します。
従来、システム開発をSIerをはじめとした外部ベンダーにすべて委託するのが、王道の開発手法でした。打ち合わせをおこないつつ、企画・要件定義から開発、保守運用までを外部ベンダーに任せる方式です。
一方、近年では社内でエンジニアチームを組成し、自社メンバーのみで開発を推進する方式が増えてきています。
システム開発の内製化の目的
システム開発を内製化する目的は複数あります。なかでも大きいのは「目まぐるしく変わるビジネス環境についていくこと」です。
2020年ごろ「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉が流行りました。我々の普段の生活のなかでデジタルツールを活用をする機会が増え、企業も積極的にデータを取得しながら高速でPDCAを回すようになりました。
そんななか、外部ベンダーに開発・運用を委託した状態では、市場の変化に付いていけなくなっています。
自社で開発をすることで、ナレッジを生かしつつ、運用の最中に柔軟に機能改善などができるようになります。
その結果、DXに対応することを目的として内製化に踏み切る企業が増えました。
システム開発の内製化の現状
それでは、どれくらい内製化は進んでいるのでしょうか。
独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)の2020年の調査によると、全体(821部署)のうち、22.7%が「全体工程の内製化を進めている」と回答しています。
また30.2%は「プログラミング工程以外の上流のみを内製化している」と回答しています。
このように、システム開発を外注せず、社内で完結する企業が徐々に増えている印象です。
システム開発の内製化が進む理由
それではシステム開発の内製化が進む理由を、3つの観点から紹介します。
開発コストの削減
一つ目の理由は「開発に関する外注コストを減らせるため」です。外部に開発をすべて委託すると、コストが膨れ上がってしまいます。
特にプログラミングなどの実装業務以外だけでなく、企画・要件定義などを含めると、多額の費用を支払う必要があります。そのうえ社内窓口となる社員の人件費もかかります。
「内製化による採用コスト・人件費と天秤にかけたうえで、開発コストを削減できる」という理由で内製化を進めている企業は少なくありません。
業務効率化の実現
外部ベンダーにすべて委託すると、常に外部とのコミュニケーションを取りつつ開発を進める必要があります。具体的には毎週の定例ミーティングなどを設定し、その場で外部ベンダーがレポーティングしながら進めていきます。
つまり外部企業が主導となり、自社でGOサインを出しながら進めるため、効率が悪くなります。
一方、内製で推進する場合は、毎日データを取得しながら打ち手について議論できるため、迅速な意思決定が可能です。。「開発・運用業務を効率化したいから」という理由で、内製化を進める企業もあります。
システム開発の内製化のメリット
3つのメリットを紹介します。
開発スピードが向上する
先述したように、外部のベンダーに企画・要件定義から実装まで委託する場合、社内の開発担当チームと打ち合わせをしながら開発を進めていきます。そのため意思決定に時間を要することが懸念されるでしょう。
一方で内製化した場合は、社内の開発チームで完結するため、スムーズにコミュニケーションが取れます。日々、意思決定でき、進捗確認もスムーズに進むため、開発スピードが向上します。
開発ナレッジが蓄積される
外部ベンダーが開発する場合は、開発方法・システムの仕様などのナレッジが社内に溜まりません。その結果、保守運用に関しても外部ベンダーに依存することになります。
一方で、内製化した場合は、社内の開発チームでナレッジを保持できる点がメリットです。。運用・保守も社内で完結するほか、ドキュメンテーションを徹底することで、恒久的に社内で管理ができる体制を構築できます。
柔軟なシステム開発が可能
冒頭で説明した通り、現在はIT・AIの進化、SNSの普及など、ビジネス環境が目まぐるしく変化しています。
この変化に付いていくためには、常に利用者のデータを収集しつつ、システムを柔軟に開発することが必要です。
外部ベンダーに委託する場合、契約内容の関係、追加コストなどがバイアスとなり「追加開発を発注しにくい」「既に進んでいる計画を見直しにくい」という問題が発生します。
一方で、内製した場合は、ターゲットユーザーの動向、競合の機能追加などに合わせて「機能追加を検討する」「開発計画を見直す」など、柔軟にシステム開発を進めることが可能です。
システム開発の内製化のデメリット
一方でシステム開発の内製化にはデメリットもあります。
ITエンジニアの採用・育成が難しい
内製化を阻む課題となるのが「ITエンジニアの採用難易度の高さ」です。
プログラミングやコーディングのみを担当する人材は、比較的採用しやすいですが、上流の設計から進められる人材は限られます。。そのため採用コストが大幅に上昇する可能性もあります。
一方で「初級者のエンジニアを採用し育成する」という手段もあります。しかしこちらも、社内の教育フロー、使用する教材、講師のレベルなどの観点を整備する必要があります。
したがって、はじめて内製化に挑む際は難易度が高いといえるでしょう。最初はコンサルタントなど、アドバイザーと一緒に教育体制を設計するのも手段の一つです。
開発品質が下がる可能性がある
SIerをはじめとした外部ベンダーは、高いスキルセットを持っています。またクライアントワークという側面から、緊張感を持って開発を進めるため、完成したシステムの品質も高くなります。
一方で内製化する場合、社内エンジニアのスキルによっては、品質が低くなる可能性があります。社内で品質基準をしっかり設けないと、バグが頻発するようなシステムとなってしまう恐れがあります。
そのため、レベルの高いエンジニアがリードして開発を進めるとともに、システムの品質基準を厳しめに設定することが必要です。
設備投資や運用コストが増加する
外部に委託する場合、開発に伴うインフラ環境・Githubなどの作業ツールに関する費用は、外部ベンダーが担保します。
また自社としては社員を抱えないため、人事・労務などのコストも発生しません。
一方で内製化に舵を切る場合、これらの設備投資・運用コストが発生するようになります。これらの費用を最初に試算したうえで、外注か内製かを選択しましょう。
システム開発を内製化した事例
最後に、実際にシステム開発の内製化に成功した企業の事例を3社紹介します。
エディオン
家電量販店などの、複数の事業を同時展開しているエディオンは、これまでシステム開発について大半を委託していました。
社内にナレッジがないため、外部ベンダーの提案を受け入れるしかない状態に課題を感じていたのだそうです。
そんななか、社会環境の変化に対応するため、会員情報や物流をはじめとした大規模な基幹システムをクラウド環境に全面移行しました。それと同時に内製化を進め、業務効率化を成功させています。
外部ベンダーを使っていたときは1~2カ月ほどかかっていた業務が、数日で完了するほどインパクトある改革を実現しました。
ファーストリテイリング
「ユニクロ」で有名なファーストリテイリング。EC事業が好調であり、アパレルでは早い段階で無人レジのシステムを導入するなど”IT力”が高いイメージがあります。
しかし意外にも2016年の社内エンジニアは数十名程度で、多くの開発業務を委託していました。
しかし顧客からのリクエストに対応するため、大規模な採用を実行。海外の人材を含め、現在では100名以上のエンジニアを抱えています。
内製化によって店舗スタッフと連携でき、顧客からの要望に応じて柔軟にシステム開発ができるようになりました。
星野リゾート
全国でホテル・旅館などを運営する星野リゾートも、システム開発の内製化に力を入れている企業の一つです。
もともと2000年に情報システム部を立ち上げ、IT化に乗り出していました。そんななか施設予約、顧客管理系のシステム運用に課題を感じていました。
2018年からはエンジニア組織を本格的に内製化しています。星野リゾートはアジャイル型のエンジニア組織を打ち出しており、スピード感を持って開発を進めているのが特徴です。
またローコード・ノーコードツールを社内に導入し、全社員が使う環境を整備しています。非エンジニアの職種もITの知識を持っている状態を目指しているのだそうです。
カインズ
家具、ホームセンター用品を扱うカインズもアジャイル型のエンジニア組織を作って内製化に取り組んでいる企業です。
内製化のハードルの一つである「採用」をクリアするため、都内に「CAINZ INNOVATION HUB(カインズ イノベーションハブ)」を開設。またエンジニアが働きやすい環境を整備するために子会社を設立するなど、環境整備に力を入れています。
まとめ
今回はシステム開発の内製化について、網羅的に紹介しました。
SIerをはじめとした外部のITベンダーは技術力があり、高品質なシステムを提供してくれます。しかし長くシステム運用するうえで、ベンダー依存はコスト観点・ナレッジ観点で早く脱却すべき課題です。
市場の変化が激しい現在は、より柔軟かつスピード感のあるエンジニア組織が求められます。課題を感じている方は、採用・教育を通して内製化にシフトしましょう。
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