「AIの開発には大きな労力とコストがかかりそう」
「AIを開発するには優秀なプログラマーが必要」
と考えている方も多いのではないでしょうか。
確かに、一昔前のAI開発は、非常に大きな労力と時間がかかるプロジェクトでした。しかし今では、プログラミングの知識すら不要なうえ、たった数日でAIを開発できます。
それを実現するのが「ノーコードAI」です。ノーコードAIはコーディングが一切不要で開発できるため、簡単かつ迅速に望み通りのAIを開発できます。
本記事では、ノーコードAIのメリットや導入事例、おすすめの開発ツールを解説します。自社に適した利用方法や開発ツールを見つけて、業務改善に活かしてください。
ノーコードAIとは
ノーコードAIとは、コードを書かずに開発するAIのことです。コーディングの手間がかからないため、開発が短時間で終わり、迅速な業務改善が図れます。
現在、AIはさまざまな業界で用いられていますが、開発には大きな労力と高度なコーディング技術が求められます。しかし、ノーコードAIはコーディングが不要なため、従来よりも簡単にAIが活用できるようになっています。
ノーコードとは
ノーコード(NoCode)とは、ソースコードを用いずにWebサービスやアプリケーションを開発する手法を指します。最低限のコーディングが必要なローコードと異なり、ノーコードはプログラミングをする必要が一切ありません。
関連記事:ノーコードとローコードの違いとは?代表的なツールも解説!
ノーコードでの開発は2020年頃から注目されるようになりました。現在は多くの開発プラットフォームが提供されており、簡単にノーコード開発ができるようになっています。
ノーコードについてより詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
ノーコードとは?特徴やメリット、導入の注意点から事例まで解説
ノーコードAIのメリット
ノーコードAIを活用すれば、労力の削減や開発時間の短縮などのメリットを受けられます。ここでは、以下3つのメリットを解説します。
- プログラミングスキル不要でAIを活用できる
- 高速な開発と迅速な実装
- コストとリソースの削減
プログラミングスキル不要でAIを活用できる
ノーコードでのAI開発は、プログラミングをしなくてもよいように設計されています。そのため、プログラミングスキルを習得していなくてもAIを開発・活用できます。
また、プログラミングをしなくてもよいため、プログラマーの確保が不要なうえに、コーディングの手間もかかりません。特に、社内にプログラマーがいない企業に向いているAI開発手法といえます。
高速な開発と迅速な実装
ノーコードAIの開発にはコーディングが不要であるため、その分迅速な開発が可能です。ノーコードAIは、すでにコーディングが完了しているテンプレートやツールを組み合わせて開発を進めるため、従来の開発よりも直感的にAIを構築できます。
また、多くの開発プラットフォームはプログラミングに慣れていない人でも使いこなせるように設計されているため、操作方法でつまずくリスクも低いでしょう。これまでよりもAIを簡単に構築できるため、迅速な実装が実現します。
コストとリソースの削減
ノーコードAIの開発は、コーディングが不要な分、短時間で終わるため、開発にかかるコストやリソースを削減できます。AIは、基本的に省力化や効率化のために活用されますが、導入効果よりも大きな労力を開発業務に割いていては、導入の効果がなくなってしまいます。
ノーコードでのAI開発は、従来のAI開発よりもコストやリソースを抑えられるため、経済的な導入効果を得られやすくなります。また、開発のリソースを削減できるため、通常業務に支障をきたすことなくAIの導入を進められるでしょう。
ノーコードAIのデメリット
ノーコードAIは、簡単かつ迅速な開発ができる一方で、以下のような制限や懸念があります。
- カスタマイズ性の制限
- 機能や精度の制限
- セキュリティやプライバシーの懸念
それぞれの詳しいデメリットや解決策を解説します。
カスタマイズ性の制限
ノーコードで開発する場合、基本的には開発プラットフォームに用意されているツールやテンプレートを利用します。しかし、用意されていない機能を利用する場合には、追加でプログラミングが必要になるため、ノーコードでの開発はできません。
機能を追加するには、プログラミング技術を持ったエンジニアが必要です。特殊な用途に利用するAIを開発するには、ノーコード開発は難しいかもしれません。その場合は、多少プログラミングが必要になりますが、ローコード開発を視野に入れてもいいでしょう。
機能や精度の制限
先述の通り、ノーコードAIに搭載できる機能は開発プラットフォームに依存します。場合によっては、機能が制限されることで必要な操作が行えず、精度が低下することもあります。これにより、目的の用途に利用できない場合があります。
例えば、医療の現場では人命を左右するため、高い精度が求められます。このような場面では、精度の低いAIを利用することができません。ノーコードAIを利用する際には、求める精度が出せるかどうかを確認する必要があります。
セキュリティやプライバシーの懸念
ノーコードAIは、セキュリティ性能が開発プラットフォームに依存します。そのため、セキュリティ性能が不十分なプラットフォームを利用すると、情報漏洩やプライバシー侵害などのリスクが高くなります。
基本的には高いセキュリティ性能を持っているため、問題ありません。しかし、重要な情報を扱う際は、利用するプラットフォームが信頼できるかどうかを専門家に確認するとよいでしょう。
また、セキュリティ性能を維持するためにも、日々のメンテナンスやバージョンの更新は欠かさないようにしてください。
関連記事:ローコード開発のセキュリティーは万全か?ツールごとの対策を解説
ノーコードAIを活用した導入事例3選
ここでは、工場・研究において、ノーコードAIを活用した事例を3つ解説します。
- 精度90%以上の画像認識AIをノーコードで開発
- 専門外の学生がAIを研究に活用
- 最適なAIを現場担当者が開発
精度90%以上の画像認識AIをノーコードで開発
AI inside 株式会社は、工場内の滞留を分析する「工場内混雑分析AI」をノーコードAIで開発しました。同社はこれまで、エレベーターの前で生じる待ち時間を課題としていました。
これを解決するため、「いつ・何が・どの程度待ち時間が発生しているか」を把握するためにノーコードAIを活用しました。
開発にはノーコードAI開発ツールを活用し、画像認識AIをコーディングなしで構築しました。データの収集には、エレベーター前に設置してあるカメラの動画を活用したそうです。
開発ツールでは、待ち時間や荷物の種類を解析できる機能をノーコードで実装し、90%以上の精度で認識できるようになりました。
その結果、いつ・何が・どれぐらいの時間滞留しているのかをデータとして把握できるようになりました。ノーコードで開発したことにより、アノテーション・データの追加・ディープラーニングを直感的な作業により実施できたようです。
同社は今後、収集データと解析結果を用いて、工場内の導線改善を計画しているようです。
参考:AI inside 公式note
専門外の学生がAIを研究に活用
日本大学理工学部建築学科の建築環境・設備研究室では、設備の異常を検知するAIをノーコードで構築し、活用しています。株式会社AIロボティクス社のADFIを利用して、テーマごとに必要な迅速にAIを開発し、研究の解析に役立てています。
同研究室は建築学科ということもあり、情報工学に精通していない学生も多く、AIのような高度な技術を使った解析は難しかったようです。しかし、ADFIを利用すれば、Webブラウザ上で直感的にAIを構築できるため、学生も研究に活用できています。
このように、ノーコードAI開発ツールを活用すれば、知見がない人でも簡単にAIを開発できます。
参考:ADFI導入事例
最適なAIを現場担当者が開発
花王株式会社は、Microsoftの「Power Platform」を活用して工場のデジタル化を推進し、業務効率化や省力化を図っています。すでに263件のアプリケーションを開発し、デジタル化を進めています。
これまで同社の工場では、紙を用いて点検記録や原料指示を行っていました。そこで、ノーコードAIを導入して製造現場の担当者でもAIを開発できるようにしたことで、デジタル化や自動化が進みました。
このように、現場の状況を最も理解している人がAIを開発できれば、多くの最適なツールを簡単に活用できるようになります。ノーコードAIは手軽な反面、機能は制限されますが、デジタル化の第一歩には最適といえるでしょう。
ノーコードAI開発ツールおすすめ5選
現在、ノーコードAIを開発できるツールがいくつも提供されています。ここでは、編集部がおすすめする代表的なノーコードAI開発ツールを5つ紹介します。
- PowerApps
- ADFI
- DataRobot
- Matrix Flow
- Node-AI
PowerApps
PowerAppsは、Microsoft社が提供するアプリケーション開発ツールです。同社が提供するMicrosoft365やAzureとの連携できるため、Microsoftユーザーに向いています。
PowerAppsでは、ドラッグアンドドロップでシステムを構築できるため、高度な技術や開発環境が不要です。構築済みのテンプレートが利用できるため、AIを迅速に開発できます。
Forrester Consulting社の調査によると、同ツールを利用した場合、アプリ開発のコストを平均で74%削減できるようです。このように、PowerAppsは幅広いツールと連携して迅速にAIを開発できます。
料金はユーザー当たり2,998円ですが、無制限のアプリを「開発者向けプラン」で試すことができます。無料で使い心地を試せるため、ツール選びで迷った際には利用しましょう。
PowerAppsについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
powerappsできること、できないこと|ローコード開発会社が詳しく解説
ADFI
ADFIは、株式会社AIロボティクスが提供する画像認識AIの構築サービスです。少量のデータで画像認識AIを構築できるため、低コストで開発を進められます。
ADFIの画像認識AIは、主に異常検知や外観検査に利用できます。高精度な認識を可能にするパラメータ設定が不要なうえ、ワンクリックで検査閾値を変更できるため、専門知識がなくても容易に活用できます。
また、少量のデータで画像認識AIを構築できるため、2~3日でシステムを開発できます。さらに、使用回数が多くない場合は「オンラインプラン」の従量課金制を選択して、月々のコストを押さえることも可能です。
プラン | オンラインプラン | ローカルプラン |
料金 | 0.02米ドル/枚 | 600米ドル/月 |
DataRobot
DataRobotは、データ分析・予測システムを構築する機械学習プラットフォームです。AI構築環境やAIシステムの運用・構築までを同ツールだけで行えます。
同ツールでは、さまざまなAIシステムが活用できるほか、比較機能によって複数の環境を試すことができます。また、ドラッグアンドドロップとクリックによりモデルの構築が完了します。これにより、最適なAIシステムの選定を比較によって選定しつつ、迅速な開発が実現します。
同ツールは製造・小売・金融・医療など非常に多くの業界で活用されています。それぞれの業界にパーソナライズされた機能が利用できるため、業界特有のニーズにも対応できます。
Matrix Flow
Matrix Flowは、データ分析や予測をするAIシステムの構築サービスです。5,000以上の導入実績を持ち、幅広い業界の企業に活用されています。
同ツールでは、統計やプログラミングの知識がなくてもAIシステムを構築できます。そのため、現場に精通している人にAI構築に関する専門知識がなくても、有効なAIシステムを構築できます。
また、AIシステム構築に必要な労力の8割を占めるともいわれるデータの前処理を、自動的に行う機能もあります。これにより、従来のシステム開発よりも開発期間とコストを大幅に抑えることが可能です。
同ツールは、企業の業務改善だけでなく、大学の研究にも活用されています。プログラミングの知識が必要とされないため、幅広い組織で活用できます。
Node-AI
Node-AIは、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社が提供するノーコードAI開発ツールです。ドラッグアンドドロップでシステムを構築できるよう設計されています。
主に製造業で活用されており、デジタル化された工場である「スマートファクトリー」を実現します。工場で重要視される故障検知や予知保全、品質管理などのデータ分析システムを容易にします。
また、同ツールはWeb上で利用可能です。インターネット環境があれば、前処理から学習、テストなど一連のモデル開発業務を実施できます。特別な開発環境が不要な点も大きなメリットです。
まとめ|ノーコードを活用すれば簡単にAIを開発できる
AIを一から開発するには非常に大きな労力が必要になりますが、ノーコードAI開発プラットフォームを活用すれば、プログラミングの知識すら不要で自社に適したAIを開発できます。
ノーコードAI開発プラットフォームを活用すれば、価格を抑えた簡単なAI開発が可能です。自社に適したAI開発ツールを見つけて、業務効率化や省力化に活かせないかを考えてみてください。
ファンリピートでは、ノーコードやローコードに特化したシステム開発・導入支援サービスを提供しています。ヒヤリングやお見積もりは無料で行っておりますので、お気軽にご相談ください。