第三次AIブームの中、私たちの身の回りで本格的に生成AIツールの活用が進められています。
しかし、生成AIツールの種類が多すぎて、どれを選べばよいか迷っている方も多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では「文章・画像・動画・ボイスボット」の4つの分野でおすすめの生成AIツールを厳選してご紹介します。
さまざまなツールの機能や性能を知ることで、生成AIを活用するためのヒントを得られるかもしれません。
記事後半では、生成AIツールを選ぶ際に知っておきたい4つのポイントも解説しています。
デジタル化で競合他社に後れを取らないよう、自社に最適な生成AIツールを導入できるようになりましょう。
生成AIツールとは
生成AIツールとは、創造的なコンテンツを生成するAIを搭載したツールを指します。
生成AIは、従来型の「認識系AI」とは異なり、学習データから新たなコンテンツを生成できます。2022年11月にリリースされたChatGPTも、生成AIの一つです。
現在、生成AIツールは、業務改善や効率化に広く活用されています。効果的な活用ができれば、競争力の向上につなげられるでしょう。
一方、DXやIoT化を推進せずにいると、大きな技術的負債を抱えてしまい、デジタル競争の敗北者になると考えられています。
今後も競争力を維持していくためには、生成AIツールなどのデジタル技術の活用が不可欠です。実際、多くの企業がデジタル化による競争力の向上を目指しているようです。
このような背景もあり、生成AIの市場規模は2022年から2030年までの間、年平均で35.6%の成長を遂げると考えられています。
参照:総務省「新時代に求められる強靱・健全なデータ流通社会の実現に向けて」
生成AIツールの種類
生成AIツールは、生成するコンテンツによっていくつかの種類に大別できます。ここでは、以下4つの生成AIツールを解説します。
- 文章生成型
- 画像生成型
- 動画生成型
- ボイスボット型
文章生成型
文章生成型AIツールは、英語や日本語などの自然言語や、プログラミング言語を生成するAIツールです。AIブームの火付け役となったChatGPTは、文章生成型に分類されます。
文章生成型AIツールは、文章生成のほか要約や校正、チャットでのコミュニケーションが可能です。誤字脱字のチェックや、プログラミング支援などに活用できるでしょう。
画像生成型
画像生成AIツールは、入力データに従って新たな画像を生成するAIツールです。テキスト情報や既存の画像をもとに画像を生成します。広告やSNSに利用する画像の作成が可能です。
画像生成型AIツールを活用すれば、カメラマンやイラストレーターに依頼しなくても、指示通りの画像を入手できます。さらに、短時間での画像制作や細部の修正も可能なため、制作時間の短縮や工数削減に役立てられます。
動画生成型
動画生成AIツールは、入力データに従って新たな動画を生成するAIツールです。動画生成は画像生成の延長上の技術といえるため、生成AIの中でも難易度が高い分野といえます。
しかし、近年の飛躍的な技術発展により、高品質な動画生成が実現されつつあります。
従来、動画を準備するには撮影や編集など多くの工程を踏まなければならないうえ、大きなコストがかかっていました。
動画生成型AIによりこれらの手間やコストが低減できれば、動画の制作負担を大幅に低減できるでしょう。
ボイスボット型
ボイスボット型は、音声認識技術によりボイスメッセージに対応したAIツールです。
音声認識技術に加えて、文章の構築プロセスでは、文章生成AIで活用されている自然言語処理の技術も用いられています。これらの技術により、AIが人の言葉を理解し、会話することが可能です。
ボイスボット型では、機械学習により自然な音声が出力できるようになっています。実際に、コールセンターのオペレーション業務では、すでにボイスボットが活用され始めています。
文章生成AIツールおすすめ4選
ここでは、文章生成に活用できるおすすめの生成AIツールを4つご紹介します。すべて無料で利用できるため、気になるツールがあれば試してみてください。
- ChatGPT(OpenAI)
- Gemini(Google)
- Llama(Meta)
- Claude(Anthropic)
ChatGPT(OpenAI)
ChatGPTは、2022年11月にOpenAIが公開した文章生成AIツールです。会員登録さえすれば誰でも利用できる手軽さと高い精度が評価され、公開2ヵ月で1億人以上のユーザーを獲得しました。
ChatGPTは基本的に無料で利用できますが、上位版のChatGPT Plusは月額20ドルに設定されています。
有料版では、上位の生成モデルのGPT-4や、同社の画像生成AIであるDALL・E3が利用できるなどのメリットがあります。
Gemini(Google)
Geminiとは、2023年12月にGoogleが公開した文章生成AIツールです。以前は「Bard」という名称でしたが、2024年2月にGeminiに統合されました。
自社製品との連携性が高いため、Googleドライブやスプレッドシートをよく利用する方におすすめです。
Geminiは基本的に無料で利用できますが、上位版のGemini Advancedは月額2,900円に設定されています。有料版では、Googleの最高位モデルであるGemini Ultra 1.0が利用できます。
Llama(Meta)
Llamaは、2023年3月にMetaが公開した文章生成AIツールです。オープンソースで公開されているため、コードの再利用やカスタマイズにより自社のシステムに組み込むことができます。
Llamaは基本的に無料で利用できます。月間アクティブユーザーが7億人を超える場合はライセンスを取得する必要がありますが、世界規模のサービスを想定していない方は気にしなくても問題ないでしょう。
Claude(Anthropic)
Claudeは、2023年3月にAnthropicが公開した文章生成AIツールです。Claudeは処理可能なトークン数が多いという特徴を持ちます。具体的には、文庫本100ページ以上に相当する10万トークン分の文字を処理可能です。
Claudeは基本的に無料で利用できますが、上位版のClaude Proは月額20ドルまたは18ポンドに設定されています。
論文や本の要約など、大きなデータを読み込ませる機会が多い方におすすめの文章生成AIです。
画像生成AIツールおすすめ4選
ここでは、画像生成に活用できる生成AIツールを4つご紹介します。無料で活用できるツールもあるため、興味がある方は一度試してみてください。
- DALL・E3(OpenAI)
- Canva(Canva)
- Midjourney(Midjourney)
- Stable Diffusion(Stability AI)
DALL・E3(OpenAI)
DALL・E3は、OpenAIがDALL・E2の後続版として2023年9月に公開した画像生成AIツールです。Bingでも利用できるため、使用したことがある方も多いのではないでしょうか。
DALL·E 3は自然言語を処理する能力が高いため、文章のニュアンスを正確にくみ取れるという強みがあります。
DALL·E 3を利用するための独立したプラットフォームはありません。現在は、ChatGPTの上位版であるChatGPT Plusか、Bingで利用できます。Bingでは無料で利用できるため、DALL·E 3を試してみたい方は、Bing Image Creatorから利用してください。
Canva(Canva)
Canvaでは、2022年に提供が開始されたCanva AIで画像生成AIを利用できます。Canvaは画像生成AIがメインのサービスではなく、機能の一部として生成AIを搭載しています。
そのため、生成した画像をCanva上でそのまま編集することが可能です。
Canvaでは基本的に無料で画像を生成できますが、無料版だと50回の制限があります。1回あたり最大4枚まで出力できるため、最大でも200枚が上限です。
有料版のCanva Proは年間12,000円かかりますが、1ヵ月当たり500回まで出力できるようになります。
Midjourney(Midjourney)
Midjourneyは、2022年7月に公開された画像生成AIです。Web上では利用できませんが、Discordというチャットアプリ上で利用できるため、スマホからでもチャット感覚で簡単に画像を生成できます。
Midjourneyは以前まで無料で利用できましたが、現在は有料版のみ提供されています。月額10ドル、30ドル、60ドル、120ドルのプランが用意されています。
Stable Diffusion 3(Stability AI)
Stable Diffusion 3は、Stability AIが2024年2月に公開したStable Diffusionの最新モデルです。
画像生成AIは、画像内の文字を正しく表現できない傾向にありましたが、Stable Diffusion 3ではスペリング能力が大きく向上しています。
Stable Diffusionはオープンソースのため、無料で利用できます。Stable Diffusionは、Hugging FaceやMage、Dream Studioなどで利用できます。
Mageが最も簡単に利用できるため、複雑な設定が不要な方はMageからStable Diffusionを試してください。
動画生成AIツールおすすめ3選
動画生成AIは他の生成AIと比べると発展途上であるため、そこまで種類は多くありません。ここでは、動画生成に活用できるAIツールを3つご紹介します。
- Sora(OpenAI)
- Lumiere(Google)
- Gen-2(Runway)
Sora(OpenAI)
Soraは、OpenAIが2024年2月に公開した動画生成AIツールです。
プロンプトによってはAIが制作したものだと明らかな動画も生成されますが、実写動画と見分けがつかないほどに精巧な動画も生み出しています。
2024年4月現在、Soraはまだ一般公開されていません。しかし、非常に高精度な動画を公式が公開しているため、リリースされる日はそこまで遠くないと予想できます。
Lumiere(Google)
Lumiereは、Googleが2024年1月に公開した動画生成AIツールです。動画を一度に生成するため、一貫性があり、なめらかな動きの再現が得意です。Lumiereもまだ一般公開はされていません。
同社によると、生成した動画をテキストベースの指示で修正できる仕様にするようです。動画の生成や編集が簡単にできるようになれば、動画制作の労力を大きく削減できるでしょう。
Gen-2(Runway)
Gen-2は、Runwayが2023年6月に公開したGen-1に次ぐ動画生成AIツールです。テキストや画像などのデータから動画を生成できます。
テキストから動画の生成は精度が低い印象を受けますが、画像から動画の生成は精度高く出力できます。
Gen-2は、無料で合計25秒の動画を生成できます。それ以上の動画を生成するには、1秒あたり0.05ドル(約7.5円)かかります。
数秒程度の短い動画であれば無料で生成できるので、公式サイトから試してみてはいかがでしょうか。
ボイスボット型AIツールおすすめ3選
ボイスボット型でおすすめのAIツールは以下の3つです。企業レベルで利用しても数百円程度で収まるツールもご紹介します。
- Amazon Lex(Amazon)
- Azure AI Bot Service(Microsoft)
- Dialogflow(Google)
Amazon Lex(Amazon)
Amazon Lexは、Amazonが提供するボット構築ツールです。
音声を認識して意図を理解し、それに応じた回答を自然な音声で返すことができます。コールセンターなどの顧客対応業務で役立てられています。
Amazon Lexは従量課金制を採用しており、利用した分だけ料金を支払います。
料金の目安は、一回の音声リクエストに対して0.004ドル(約0.6円)、一回のテキストリクエストに対して0.00075ドル(約0.1円)です。
これは、8,000回の音声リクエストと2,000回のテキストリクエストに対応したとしても約5,000円と、非常に安く利用できます。
オペレーターをAmazon Lexで代替できれば、大幅なコストカットが実現できるでしょう。
Azure AI Bot Service(Microsoft)
Azure AI Bot Serviceは、Microsoftが提供するボット構築ツールです。音声認識や言語処理などが可能なAzureサービスを組み合わせることで、高機能なボットを構築できます。
基本的な機能はあらかじめ搭載されているため、プログラミング能力が高くなくてもボットの構築が可能です。
Azure AI Bot Serviceは、Freeプランを利用すれば無料で利用できます。無料でも、Microsoft のファーストパーティサービスで利用できるStandardチャネルでの利用制限はありません。
ただし、独自のアプリやWebサービスで活用する場合には、Premiumチャネルを利用する必要があります。
Free | S1 | |
Standardチャネル | 無制限 | 無制限 |
Premiumチャネル | 10,000メッセージ/月 | 1,000メッセージあたり0.5ドル |
Dialogflow(Google)
Dialogflowは、Googleが提供するボット構築ツールです。Dialogflowは日本語に対応しているうえ、インテントやエンティティを登録するだけでボットを構築できます。
さらに、LINEやメッセンジャーなどのアプリにも簡単に統合できるというメリットがあります。
Dialogflowは従量課金制を採用しており、料金は一回のテキスト出入力当たり0.002~0.007ドル(約0.3~1.0円)、音声の出入力には一回当たり0.0004~0.0010ドル(約0.6~0.15円)が目安です。
初期費用がかからないうえに維持費も非常に安く抑えられるでしょう。
生成AIツールを選ぶ際のポイント
AIツールを効果的に利用するには、自社に合ったツールを選択することが重要です。ここでは、AIツールを選ぶ際に注意したいポイントを4つご紹介します。
- 利用料金は予算内に収まるか
- UIや操作性が高く使いやすいか
- 目的・課題解決につながっているか
- セキュリティに問題がないか
利用料金は予算内に収まるか
同じ機能が搭載されていても、ツールによって利用料金が大きく変わります。予算に収まるようなツールを利用するようにしましょう。
小規模利用であれば従量課金制、大規模利用であれば年額制を選ぶなど、自社に適した選択をすることが重要です。
ツール一つ当たりの利用料金を抑えられれば、他の生成AIツールの初期費用に回せるかもしれません。予算に限りがある場合は、無料で利用できるツールから活用してみてはいかがでしょうか。
UIや操作性が高く使いやすいか
操作性が高ければ業務効率が向上するため、性能だけではなくUIや操作性も判断基準に取り入れましょう。
特に生成AIツールに慣れていない従業員が利用する場合、操作性が悪ければ業務効率が大幅に低下する可能性があります。
もちろん最低限の性能は必要ですが、要件以上に性能が高くても使いこなせなければ意味がありません。現場で実際に利用する従業員の意見も聞きながら実装しましょう。
目的・課題解決につながっているか
導入するAIツールに、自社の目的や課題を解決できる機能が搭載されているかを確認するようにしましょう。ツールによっては、必要な機能が搭載されていないことがあります。
例えば、自社のアプリにボイスボットを組み込みたいのに、外部アプリと連携できないツールを利用してしまっては、そもそも目的を達成できません。
自社で解決したい課題を明確にしておけば、ミスマッチを防げます。生成AIツールを選ぶ際には、必要な要件をまとめておくとよいでしょう。
セキュリティに問題がないか
クラウド型の生成AIツールを利用する際には、情報漏洩のリスクがあります。バグやミスで入力情報が第三者に渡るリスクがあるため、注意が必要です。
実際に、社内のPCでは競合他社の言語生成AIにアクセスできないようにしている企業もあります。
とはいえ、生成AIツールを利用する場合、このリスクをゼロにすることは現実的に不可能です。
機密情報を打ち込まないことや、入力情報を学習させない設定にするなど、可能な限り対策を講じるようにしましょう。
まとめ|生成AIツールは自社の課題に合わせて選ぼう
AIが業務改善に用いられるようになったいま、さまざまな生成AIツールが登場しています。一見どれも同じ機能や性能に感じるかもしれませんが、それぞれ得意な業務は異なります。
自社の要件に適していないツールを選んでしまうと、生成AIを活用する効果が低減してしまいます。
とはいえ、オーバースペックになってしまっては、コストがムダになるうえ、操作性が悪くなる可能性が高くなります。
生成AIツールを導入する目的を明確にし、適したツールはどれなのかを今一度考えてみてはいかがでしょうか。