「SharePoint リストとDataverse、似たような機能でわからん!」
Power Platformには、SharePointリストとDataverseという2つの主要なデータ管理オプションがあり、どちらを選択すべきか迷う方も多いのではないでしょうか。
SharePointリストは、ファイル共有やシンプルなデータ管理に便利で、直感的に操作できます。一方、Dataverseは、エンタープライズレベルの高度なデータモデリング、スケーラビリティ、セキュリティを備えた本格的なデータベースです。
この記事では、SharePointリストとDataverseの機能、特徴、メリット・デメリットを解説します。どちらを使うかで悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。
SharePoint リストとは
SharePointリストは、Power Platformにおけるデータ管理の選択肢の一つです。 複雑なデータベースを構築する必要がなく、直感的に操作できるインターフェースが特徴です。 まるでスプレッドシートのように、データを入力し、共有し、共同作業を進めることができます。
SharePointリストの基本機能
SharePointリストは、ファイルやデータを整理して共有するための基本機能を備えています。
- ファイル共有: ドキュメント、画像、スプレッドシートなど、様々なファイル形式を保存・共有できます。バージョン管理機能も備えているため、最新版のファイルが常に明確です。
- リスト作成: 顧客情報、タスク管理、イベント管理など、様々な用途に合わせて自由にリストを作成できます。項目(列)を自由に設定し、データを入力していきます。
- ワークフロー: Power Automateと連携することで、承認プロセスなどのワークフローを簡単に構築できます。これにより、業務プロセスを自動化し、効率化を図ることが可能です。
- シンプルなデータ構造: スプレッドシートのようなシンプルなデータ構造のため、誰でも簡単に操作できます。特別なトレーニングや専門知識は必要ありません。
- 柔軟なカスタマイズ: 必要に応じてリストのカラムを追加・削除したり、表示形式を変更したりできます。
SharePointリストが適している業務例
SharePointリストは、特に以下の業務に適しています。
- ドキュメント管理: 部署やプロジェクト単位でドキュメントを整理・共有できます。バージョン管理機能により、常に最新版のドキュメントにアクセスできます。
- タスク管理: チームメンバー間のタスクを共有し、進捗状況を管理できます。担当者、期限、ステータスなどをリストに登録することで、タスクの漏れや遅延を防ぎます。
- イベント管理: 会議やイベントの予定、参加者などを管理できます。カレンダー表示機能と連携することで、スケジュール管理も効率化できます。
- 顧客管理: 顧客の基本情報(氏名、住所、電話番号など)をリストに登録・管理できます。
メリット:
- 操作が簡単で、直感的に利用できる
- シンプルなデータ構造で、容易に構築・管理できる
- 標準機能で十分な機能を備えている
デメリット:
- 複雑なデータモデルやリレーションシップには対応しにくい
- 大規模なデータ管理には向かない
- セキュリティ設定は、リストやフォルダ単位が中心で、列単位でのきめ細やかな制御は難しい
SharePointリストは、ファイル共有やシンプルなデータ管理に最適なツールです。しかし、複雑なデータモデルや大規模データの管理、高度なセキュリティが必要な場合は、Dataverseなどのデータベースシステムを検討する必要があります。次のセクションでは、Dataverseの特徴について詳しく見ていきましょう。
Dataverseとは
Dataverseは、Power Platformの中核を担うクラウドベースのデータ管理サービスです。SharePointリストのようなシンプルなデータ管理とは異なり、エンタープライズレベルの高度なデータモデリング、スケーラビリティ、セキュリティを備えています。
Dataverseの基本機能
Dataverseでは、リレーショナルデータベースと同様に、テーブルを設計し、データの構造を明確に定義できます。
- テーブル設計: 自由にテーブルを作成し、必要な項目(列)を定義できます。データ型(テキスト、数値、日付など)や必須項目などを設定可能です。
- リレーションシップ: テーブル間にリレーションシップ(関連付け)を設定することで、複数のテーブルにまたがるデータの関連付けを明確に定義できます。これにより、データの整合性を保ち、複雑なデータ構造を容易に管理できます。1対多、多対1、多対多といった様々なリレーションシップが定義可能です。
- セキュリティロール: ユーザーやグループごとにアクセス権限を設定できます。テーブル、列、行レベルで詳細な権限設定が可能で、きめ細やかなセキュリティ制御を実現できます。
- ビジネスルール: データ入力時の検証ルールやワークフローを設定できます。データの整合性を保ち、データ入力ミスを防止します。
- ワークフロー: Power Automateと連携することで、承認プロセスなどのワークフローを構築できます。これにより、業務プロセスを自動化し、効率化を図ることが可能です。
- 高度なデータモデリング: 複雑なデータ構造にも対応可能な高度なデータモデリング機能を備えています。
- スケーラビリティとパフォーマンス: クラウドベースであるため、データ量が増加しても柔軟にスケールアップできます。インデックスやパーティションなどを活用することで、大規模データセットでも高速なクエリ処理を実現できます。
Dataverseが適している業務例
Dataverseは、特に以下の業務に適しています。
- CRM (顧客関係管理): 顧客情報、商談履歴、営業活動などを一元管理できます。
- 在庫管理: 商品情報、在庫数、発注状況などを管理できます。
- 人事管理: 従業員情報、給与情報、勤怠情報などを管理できます。
- その他エンタープライズ業務: 複雑なデータ構造と高度なセキュリティが求められる業務全般。
メリットとデメリット
メリット:
- エンタープライズレベルの機能を備えている
- 高いスケーラビリティとパフォーマンス
- 強固なセキュリティ機能
- 複雑なデータモデルにも対応可能
- Power Platformとのシームレスな連携
デメリット:
- SharePointリストと比較して、導入・運用に専門知識が必要
- コストがSharePointリストより高額になる可能性がある
Dataverseは、大規模なデータ管理、高度なセキュリティ、複雑なデータモデルが必要な業務に最適です。SharePointリストでは対応できないような複雑なシステム構築にも対応できます。 次のセクションでは、SharePointリストとDataverseの機能を比較します。
SharePoint リストとDataverseの比較
SharePointリストとDataverseは、どちらもPower Platformでデータ管理に利用できるサービスですが、その機能や特性は大きく異なります。どちらを選ぶべきかは、データの規模、複雑さ、セキュリティ要件、そして将来的な拡張性などを考慮して決定する必要があります。
そこで、このセクションでは、SharePointリストとDataverseを様々な観点から比較し、それぞれのメリット・デメリットを明確にします。
項目 | SharePoint リスト | Dataverse |
データ構造 | シンプルな表形式。リレーションはルックアップ列で限定的。 | リレーショナルデータベース。複雑なリレーションシップに対応可能。 |
データ容量 | リストの項目数に制限あり (数千万件程度が目安)。大規模データには不向き。 | 大規模データに対応可能 (テーブルあたり数十億件)。 |
スケーラビリティ | 制限あり。リストの項目数増加に伴いパフォーマンスが低下する可能性あり。 | 高いスケーラビリティ。データ量の増加にも柔軟に対応可能。 |
データモデリング | シンプル。複雑なデータモデルには不向き。 | 高度なデータモデリングが可能。複雑なリレーションシップを定義できる。 |
セキュリティ | サイト、フォルダ、アイテムレベルでの権限設定が中心。列レベルのセキュリティは限定的。 | テーブル、列、行レベルでのきめ細かい権限設定が可能。フィールドレベルセキュリティも利用可能。 |
権限管理の粒度 | 比較的粗い | きめ細やかな権限管理が可能 |
クエリ機能 | リスト内での検索が中心。複数のリストを跨る複雑なクエリは難しい。 | 高度なクエリ機能を備え、複雑なデータ分析が可能。 |
ワークフロー | Power Automateと連携可能だが、複雑なワークフローには向かない場合も。 | Power Automateとシームレスに連携し、複雑なワークフローも容易に構築可能。 |
コスト | 一般的に低コスト | 使用量に応じてコストが発生。大規模なデータ管理には費用がかかる可能性あり。 |
操作性 | 直感的で容易。特別なスキルは不要。 | データモデリングの知識が必要な場合がある。 |
Power Appsとの連携 | 容易 | 容易。高度なデータ活用が可能。 |
Power Apps との連携はどちらも得意
SharePointリストとDataverseは、どちらもPower Appsと連携してアプリ開発を行うことができますが、その連携方法やメリットは異なります。 どちらのデータソースを選択するかは、開発するアプリの種類や機能、そしてデータの規模や複雑さによって最適な選択が変わるでしょう。
SharePointリストとの連携
SharePointリストは、Power Appsと簡単に連携できます。リストにあるデータを、ギャラリーやフォームコントロールに表示・編集したり、Power Automateと連携してワークフローを構築したりできます。
メリット:
- 手軽な連携: SharePointリストは、Power Appsから直接データにアクセスできるため、連携設定が簡単です。
- シンプルなデータ構造: シンプルなデータ構造であるため、アプリ開発が容易です。
- ファイル共有との連携: SharePointリストはファイル共有機能と連携しているため、アプリからファイルのアップロードやダウンロードも簡単にできます。
デメリット:
- データモデリングの制限: 複雑なデータ構造やリレーションシップには対応しにくい。
- 大規模データへの対応: 大量のデータを含むリストへのアクセスは、パフォーマンスに影響を与える可能性があります。
- 高度なセキュリティ制御: 列レベルでのセキュリティ制御が難しい場合があります。
Dataverseとの連携
Dataverseは、Power Appsとシームレスに連携し、高度なデータ活用を可能にします。リレーショナルデータベースとしての機能を活かし、複雑なデータ構造やリレーションシップにも対応できます。
メリット:
- 高度なデータモデリング: 複雑なデータ構造やリレーションシップに対応できるため、より高度なアプリを開発できます。
- 大規模データへの対応: 大量のデータでも、高いパフォーマンスを維持できます。
- 高度なセキュリティ制御: テーブル、列、行レベルでのきめ細かいセキュリティ設定が可能。
- ワークフロー機能: Power Automateと連携し、複雑なワークフローを構築できます。
デメリット:
- 導入・運用コスト: SharePointリストと比較して、導入・運用コストが高くなる可能性があります。
- 専門知識の必要性: Dataverseを効果的に活用するには、データベース設計に関する知識が必要な場合があります。
まとめ:どちらを選ぶべきか?
- シンプルなデータ構造、ファイル共有機能との連携が必要なアプリ: SharePointリストが適しています。
- 複雑なデータ構造、高度なセキュリティ、大規模データ処理、高度なワークフロー機能が必要なアプリ: Dataverseが適しています。
Power Appsでアプリ開発を行う際には、データソースの特性を理解し、アプリの要件に最適なデータソースを選択することが重要です。
データの相互利用という面ではSharepoint は強みが薄く、大量データの保管には向きません(厳密にいえばSharepoint はデータベースではない)。
BIツールや生成AIツールとの連携などの将来性を考慮するとDataverseの方が向いているといえます。