ChatGPTとCopilot(旧Bing AI)は、どちらもOpenAIが開発した言語モデルを使用していることもあり、性能や機能は同じと考えている方もいるのではないでしょうか。
確かに、言語モデルの性能に大きな差はありませんが、機能や利用環境、セキュリティ性能には違いがあります。これらは、ビジネスで利用する際に重視したいポイントなのではないでしょうか。
本記事では、ChatGPTとCopilot(旧Bing AI)を7つの項目で比較し、おすすめの用途を解説します。AIの選定で迷っている方は、自身が重視する項目を中心に見ながら、どちらが導入に適しているか考えてみてください。
ChatGPTとCopilot(旧Bing AI)の概要
それぞれの概要や利用できるモデルなどを解説します。
ChatGPTとは
ChatGPTは、OpenAI社が開発した大規模言語モデル(LLM)です。2022年11月末にリリースされ、ソフトウェア・アプリ史上最速で1億ユーザーを突破するなど、AIが普及するきっかけとなりました。
ChatGPTで利用できる最新モデルは、OpenAIのフラグシップモデルである「GPT-4o」です(2024年7月現在)。GPT-4oは、単純な自然言語処理だけでなく、画像とテキストを組み合わせたような複雑なタスクにも対応しています。
Copilot(旧Bing AI)とは
Copilot(旧Bing AI)とは、Microsoft社が提供するAIアシスタントです。ChatGPTと同様に、チャットへの応答や文章タスクの処理、画像生成などを行います。
理由は次章で詳しく解説しますが、CopilotのモデルはOpenAIの「GPT-4」です。そのため、ChatGPTとCopilot(旧Bing AI)は似た性能を持っているともいえます。
Copilotは、2023年11月まで「Bing AI」という名称だったため、「Bing」や「Bing Chat」のほうが聞きなれている方が多いかもしれません。
ChatGPTとCopilot(旧Bing AI)の違いを徹底比較
ChatGPT | Copilot | |
言語モデル | ◎ GPT-4o | 〇 GPT-4 Turbo |
料金形態 | 〇 無料で利用可 | 〇 無料で利用可 |
利用可能なブラウザ・アプリ | 〇 ブラウザを問わない アプリ有 | ✕ Edgeのみ アプリなし |
情報の正確さ・学習データ | 〇 | 〇 |
会話内容の制約 | 〇 ※不適切なコンテンツのみ | 〇 ※不適切なコンテンツのみ |
機能性・拡張性 | 〇 | ✕ |
セキュリティ性 | 〇 | ◎ |
言語モデル
言語モデルにおいては、ChatGPTのほうが優れています。
ChatGPTでは、OpenAIのフラグシップモデルである「GPT-4o」が利用可能です。一方、Copilotでは、GPT-4oよりも一つ古い「GPT-4 Turbo」までしか利用できません。
このように、より優れた言語モデルを利用できるのはChatGPTといえます。しかしながら、Copilotで利用できる「GPT-4 Turbo」も高性能なマルチモーダルモデルであり、一般的なAIアシスタントとしては十分な性能を持っています。
料金形態
ChatGPTとCopilot(旧Bing AI)はどちらも基本無料で利用できます。有料プランも用意されていますが、料金にも大きな差はありません。
一般的な質問をする場合やアシスタントとして利用する場合には、どちらも無料で十分な性能を持っています。しかし、ビジネスで利用する場合、機能やカスタマイズ性を考慮すると有料プランが必要になることもあるでしょう。
・ChatGPTの料金
月額料金(ユーザー当たり) | |
Free | 0ドル |
Plus(個人向け) | 20ドル |
Team(小規模チーム向け) | 30ドル(年間契約で25ドル) |
Enterprise(大企業向け) | 要問合せ |
・Copilotの料金
月額料金(ユーザー当たり) | |
Microsoft Copilot | 0円 |
Microsoft Copilot Pro | 3,200円 |
Copilot for Microsoft 365(法人向け) | 4,497円 |
利用可能なブラウザ・アプリ
ChatGPTのほうが幅広いブラウザ・アプリに対応しています。
ChatGPTは、SafariやChrome、Firefoxなど多くのブラウザ上で利用可能です。また、ChatGPT専用のアプリも、アンドロイド・IOSで用意されています。
一方、Copilotが利用できるのはBing、MicrosoftのEdge、CopilotのWebサイト、Windowsに限られます。Edgeは世界的に利用者の多い検索サイトですが、Googleに比べると利用者は少ないため、不便に感じる方もいるかもしれません。
情報の正確さ・学習データ
情報の正確性や学習データの品質には、大きな差がないと考えられます。
ChatGPTとCopilot(旧Bing AI)はどちらも、Webブラウジング機能により最新の情報を参照できます。そのため、どちらもWebに公開されている最新の情報を参照し、回答を出力することが可能です。
また、Copilotで用いられているGPT-4 Turboは2023年12月までのデータを、ChatGPTのフラグシップモデルであるGPT-4oは2023年10月までのデータを学習しています。
会話内容の制約
基本的に、どちらも不適切な質問に対しては出力を拒否します。質問に制約はありますが、不適切な入力をしない限り、業務に支障がでることはないでしょう。
ChatGPTとCopilot(旧Bing AI)は、どちらも悪意を持った質問や危険性の高い質問には回答しません。例えば、「ダイナマイトの作り方を教えてください」と聞くと、以下のような回答が返ってきます。
このように、違法行為につながる質問や、プライバシーを侵害する可能性のある質問には答えないよう設計されています。
しかし、MicrosoftもOpenAIも安全性には十分に配慮していますが、AIは予期せぬエラーを起こすことがあります。100%安全とは言い切れない点には注意しておきましょう。
機能性・拡張性
ChatGPTのほうが、機能性や拡張性に優れています。
ChatGPTでは、さまざまな用途に最適化した機能を持つGPTsの使用が可能です。GPTsの数は数十万~数百万あるといわれており、マイナーな用途に特化したものもあります。
「生産性・研究と分析・教育・ライフスタイル」など幅広い分野のGPTから、自身が活用できるものがないかを探してみてください。
参考:OpenAI「GPT」
Copilotでも拡張機能であるプラグインは利用できますが、その数は2024年7月現在で8つのみであり、ChatGPTに比べると大きく劣ります。しかし、プレビュー段階ではありますが、Microsoft Copilot for Microsoft 365ではプラグインを作成できます。
ChatGPTのプラグイン(GPTs)の具体的な利用方法は、以下の記事で解説しています。GPTsを業務効率化に活用しようと考えている方は、参考にしてください。
セキュリティ性
Copilotのほうが高いセキュリティ性能を持っていると考えられます。Microsoftは5年で200億の投資をするなど、セキュリティにはかなり力を入れています。
一方、ChatGPTもセキュリティ対策を行っていますが、過去にはバグにより個人情報が漏洩したことがあります。
どちらも高いセキュリティ性能は高いと考えられますが、より安全なのはCopilotと考えられます。しかし、クラウドサービスを利用する以上、100%安全とは言い切れないため、機密情報や重要なデータは入力しないなどの対策を取るようにしましょう。
ChatGPTとCopilot(旧Bing AI)でしかできないこと
ChatGPTのみで利用できる機能と、Copilotのみでできることを解説します。
ChatGPTでしかできないこと
ChatGPTでしかできないこととして、GPTsの利用があります。
GPTsは、目的に応じてカスタマイズされたChatGPTであり、さまざまな用途に利用可能です。例えば、資格試験の対策や論文の検索などに活用できます。
GPTsの使い方や開発事例を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
また、ChatGPTは外部サービスとの連携性にも優れています。APIを活用すれば、社内のサービスと連携することも可能です。
Copilot(旧Bing AI)でしかできないこと
Copilotでは、無料でテキスト指示による画像生成が可能です。
ChatGPTでは、有料版でしか画像を生成することができません。しかし、Copilotでは無料でテキスト情報から画像を生成できます。
以前までCopilotは、GPT-4を無料で利用できる唯一のプラットフォームでしたが、ChatGPTでもGPT-4が無料で利用できるようになりました。また、ChatGPTでもWebブラウジング機能が利用できるようになったため、Copilotにしかできないことは少なくなりました。
以下の記事では、Copilotを活用したExcel活用術を解説しています。業務でExcelを利用している方は、効率化が図れる工程がないかを探してみてください。
ChatGPTのおすすめ用途
ChatGPTのおすすめ用途は、以下の3つです。
- チャットボットなどのシステム開発をしたい場合
- クリエイティブのアイデア出し
- 外部サービスとの連携をしたい場合
チャットボットなどのシステム開発をしたい場合
ChatGPTのコーディング支援は、チャットボットなどのシステム開発に活用することが可能です。
また、APIを利用すればChatGPTの自然言語処理を自社のアプリで利用できるため、自社のシステム開発にも活用できます。
AIをシステム開発に活用すれば、従来よりも安く迅速に実装できる可能性が高まります。以下の記事では、AIを用いたシステム開発の手順や事例を解説しています。
クリエイティブのアイデア出し
ChatGPTのGPTsには、特定の分野のデータを集中的に学んでいるものがあります。自身がアイデアを出したい分野に特化したGPTsを利用すれば、最適化されたアイデアを得られる可能性が高まります。
また、ChatGPTは他の大規模言語モデルに比べて、創作性が高いといわれることがあります。クリエイティブな目的で利用するなら、ChatGPTがより優れたアイデアを出してくれるかもしれません。
外部サービスとの連携をしたい場合
ChatGPTはAPIを発行しています。APIを活用すれば、ChatGPTを外部サービスで利用できるようになるため、活用の幅を広げられるでしょう。
例えば、LINEでChatGPTのAPIを利用すると、LINEのチャットでChatGPTが動作します。これを活用すれば、AIによる顧客対応が実現します。
Copilot(旧Bing AI)のおすすめ用途
Copilotのおすすめ用途は、以下の3つです。
- 費用を掛けずに高度な言語モデル(GPT4)を使いたい場合
- 普段WindowsPCを使用しており手軽にAIを活用したい場合
- 手軽に画像生成をしたい場合
費用を掛けずに高度な言語モデル(GPT-4)を使いたい場合
Copilotでは、GPT-4を無料で利用できます。費用をかけずに高性能な大規模言語モデルを利用したい方におすすめです。
ただし、ChatGPTでもGPT-4は無料で利用できるため、使いやすいほうを選択しましょう。
普段WindowsPCを使用しており手軽にAIを活用したい場合
Windows PCでは、EdgeでCopilotが簡単に利用できます。Edgeを開き、検索バー内にあるアイコンをクリックすることで、Copilotを利用できます。
ChatGPTはブラウザを選びませんが、ChatGPTのWebサイトにアクセスするか、アプリを開く必要があります。一方、CopilotはWindows PC上ですぐに利用できるので、場合によってはCopilotのほうが早く情報を得られるかもしれません。
手軽に画像生成をしたい場合
Copilotでは、無料でテキスト情報から画像を生成できます。Copilotに「〇〇の画像を出力して」と入力するだけで、目的の画像を手軽に得られます。
ただし、生成した画像の商用利用ができない点には注意が必要です。基本的に、Copilotで生成した生成物は商用利用できません。
個人的かつ非商業的な使用への限定特段の規定のない限り、本サービスの使用は、お客様の個人的かつ非商業的な使用に限定されます。 お客様は、本サービスから取得した情報、ソフトウェア、製品、またはサービスについて、改変、複写、頒布、送信、展示、上映、複製、公開、使用許諾、二次的著作物作成、譲渡、販売を行うことはできません。
引用:Microsoft「Microsoft 使用条件」
まとめ|ChatGPTとCopilot(旧Bing AI)は用途にあわせて使い分けよう
ChatGPTには機能性・拡張性に優れたGPTsがあり、CopilotにはWindows PCですぐに利用できる手軽さがあります。どちらが優れたAIプラットフォームというわけではなく、それぞれに優れた点があるので、状況に応じて使い分けられるとよいでしょう。
また、ビジネスで利用するのであれば、有料版の契約も検討してみてください。利用できるモデルの性能が上がるうえ、ビジネスに有効な機能が多く使えるようになります。