顧客が必要な商品を素早く発注できるようにし、欠品時のフォロー業務を削減したい……
本記事ではこのような悩みを持つ方向けに、Shopify Flow と Power Automateを連携させて在庫管理の自動化をする方法を解説します。
手作業での在庫管理においてミスを減らしたい!と考えている方はぜひ最後までご覧ください。
手作業で在庫管理するのはとっても大変
ECサイト運営において、商品の「在庫管理」は売上を左右する重要な業務。この在庫管理を手作業で行っているところは意外と少なくありません。
今までだと以下のようなお悩みをいただきました。
- 「倉庫から商品が入荷するたびに、店舗や卸先ごとにメールや電話で個別連絡。件数が多くて、連絡漏れがないかいつもヒヤヒヤする」
- 「ECサイトで在庫切れの商品について、「いつ入荷しますか?」という問い合わせが何度も舞い込んでくる。毎回同じような回答をするのに、時間が取られてしまう」
- 「ECサイトの在庫数を手動で更新しているけど、更新作業がどうしても後回しになりがち。気が付いたら在庫数がズレていて、お客様にご迷惑をかけてしまった」
- 「忙しい時期には、どうしても入力ミスや連絡ミスが発生してしまう。ダブルチェックはしているけど、完全にミスをなくすのは難しい」
人的ミスは顧客からの信頼を大きく損なう可能性があります。「在庫あり」と表示されていたのに、実際には在庫切れでキャンセルになってしまった…このような経験は、顧客のECサイトへの不信感を招き、リピート率の低下に繋がります。
また、在庫情報の更新遅れは、機会損失にも繋がります。「在庫切れ」と表示されているために、購入を諦めてしまった顧客は、競合サイトへ流れてしまうかもしれません。
なので、手作業での在庫管理は大変だからリスクヘッジとして「在庫管理を自動化しよう」という提案につながります。
Shopify Flow × Power Automate で在庫管理を自動化
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Shopify Flow と Power Automateを連携させることで在庫管理の自動化が可能です。
Shopify Flow は、Shopifyに標準搭載されている自動化ツール。ECサイト上で発生する様々なイベント(注文、在庫変動、顧客情報更新など)をトリガーにして、条件分岐やアクションを設定することで、業務を自動化できます。
一方、Power Automate は、Microsoftが提供するクラウド型のRPA (ロボティック・プロセス・オートメーション) ツールです。様々なアプリケーションやサービスと連携し、複雑なワークフローをノーコードで構築できます。Shopify Flow とも連携可能で、Shopify Flowだけでは実現できない高度な自動化を実現します。
今回の提案では、この Shopify Flow と Power Automate を組み合わせることで、在庫管理に関わる以下の3つの業務を自動化し、一連のフローを構築します。
提案する自動化フローの全体像
- 在庫数減少時、倉庫管理担当者へ自動通知: 特定商品の在庫数が一定数を下回ったら、倉庫担当者へ自動でメール通知。発注・補充のタイミングを逃しません。
- 入荷時、ECサイトの在庫数を自動更新: 商品が入荷されたら、ECサイトの在庫数を自動で更新。タイムラグをなくし、常に最新の在庫状況を反映します。
- 入荷時、予約登録された卸先・店舗へ自動通知: 入荷情報をトリガーに、事前に予約登録されている卸先や店舗へ入荷を自動で通知。個別の連絡作業をなくし、スピーディーな情報共有を実現します。
1: 在庫数減少時の通知自動化
まず、Shopify Flow を使用して、「在庫レベルが一定数を下回ったら」という条件をトリガーに設定します。
例えば、「特定商品の在庫数が 5個以下 になったら」というトリガーを設定することで、Power Automate へ自動的に通知が送信されます。
次に、Power Automate 側で、Shopify Flow からの通知を受け取るフローを作成します。 トリガーには 「HTTP 要求の受信時」 を選択し、Shopify Flow からのWebhookを受け取るように設定します。
そして、アクションとして 「メールを送信 (Outlook)」 などを設定し、倉庫管理担当者へ通知メールを送信します。 メール本文には、商品名、現在の在庫数 などを記載することで、担当者は迅速に状況を把握し、発注などの対応に移ることができます。
ステップ2: 入荷時のECサイト在庫自動更新
入荷情報をトリガーにする方法はいくつか考えられますが、例えば、倉庫管理システム (WMS) と連携する方法や、入荷処理を行う担当者が手動でトリガーを起動する 方法などが考えられます。
ここでは、例として 「手動でトリガーを起動する」 方法を想定して説明します。
まず、Power Automate 側で、「手動でフローをトリガーします」 トリガーを設定します。 トリガーの入力として、商品名、入荷数 などを設定できるようにしておきます。
次に、アクションとして 「Shopify – 製品在庫を更新する」 アクションを選択します。
このアクションで、トリガーで入力された 商品名 と 入荷数 をもとに、Shopifyの該当商品の在庫数を自動で更新します。 これにより、ECサイトの在庫情報は常に最新の状態に保たれ、在庫ズレによる機会損失を防ぐことができます。
ステップ3: 入荷時の卸先・店舗への自動通知
ステップ2と同様に、入荷情報をトリガーとして、Power Automate フローを開始します。
次に、アクションとして 「メールを送信 (Outlook)」 などを設定し、事前にリスト化しておいた卸先や店舗のメールアドレス宛に、入荷通知メールを送信します。 メール本文には、商品名、入荷数、入荷日 などを記載することで、卸先・店舗は迅速に入荷情報を把握し、発注業務や販売計画に役立てることができます。
これらの自動化フローを構築することで、これまで手作業で行っていた煩雑な在庫管理業務から解放され、業務効率を大幅に向上させることができます。
自動化フロー構築のステップ
自動化フローを構築する主なステップは以下の通りです。
ステップ1:自動化したい業務範囲の明確化
まず最初に、どの業務を自動化したいのか、どこまで自動化するのか、範囲を明確に定義します。 今回の例で言えば、
- 在庫数減少時の倉庫担当者への通知
- 入荷時のECサイト在庫自動更新
- 入荷時の卸先・店舗への自動通知
という3つの業務を自動化範囲としています。 まずは、自社の課題や業務プロセスを洗い出し、自動化によって最も効果が得られる範囲を特定しましょう。
ステップ2:Shopify Flow でのトリガー設定
次に、Shopify Flow を開き、自動化フローの起点となるトリガーを設定します。 例えば、
- 在庫数減少通知: 「在庫レベルが変更されたとき」トリガーで、在庫数が一定数を下回った場合にフローを開始
- 入荷時在庫更新/通知: 外部システムからのWebhookトリガー、または手動トリガーなどを設定
トリガーの設定は、自動化フローの成否を左右する重要なステップです。 業務要件とShopify Flowの機能を照らし合わせながら、最適なトリガーを選択しましょう。
ステップ3:Power Automate でのフロー構築
Shopify Flow で設定したトリガーを受け取り、Power Automate で具体的なアクションを定義するフローを構築します。 例えば、
- メール通知: 「メールを送信 (Outlook)」アクションで、担当者や卸先・店舗へメールを送信
- Shopify 在庫更新: 「Shopify – 製品在庫を更新する」アクションで、ECサイトの在庫数を更新
- 条件分岐: 「条件」コントロールで、在庫状況や通知先に応じて処理を分岐
Power Automate は豊富なコネクタとアクションが用意されています。 ノーコードで直感的にフローを構築できるため、プログラミングの知識がない方でも比較的容易に自動化を実現できます。
ステップ4:Shopify Flow と Power Automate の連携設定
Shopify Flow と Power Automate を連携させるためには、Webhook を利用する方法が一般的です。
Shopify Flow のアクションで 「Webhookを送信」 を選択し、Power Automate で作成したフローの 「HTTP 要求の受信時」トリガーのエンドポイントURL を設定します。 これにより、Shopify Flow でトリガーが発生すると、Power Automate のフローが自動的に実行されるようになります。
ステップ5:テストと改善
フロー構築が完了したら、必ずテスト環境で十分にテストを行いましょう。 実際に在庫数を変動させてみたり、入荷処理をシミュレーションしたりして、フローが想定通りに動作するか、エラーが発生しないかなどを確認します。
テストで問題が見つかった場合は、フローを修正し、再度テストを行います。 PDCAサイクルを回しながら、より実用的で安定したフローへと改善していくことが重要です。
導入時の注意点
自動化導入にあたっては、以下の点に注意しましょう。
初期設定は慎重に
初期設定を誤ると、意図しない動作を引き起こしたり、システムに負荷をかけたりする可能性があります。 設定時には、各項目の意味を十分に理解し、マニュアルやヘルプドキュメントなどを参考に、慎重に設定を行いましょう。 不安な場合は、専門家への相談も検討しましょう。
エラーハンドリングを考慮
自動化フローは、常に正常に動作するとは限りません。 API連携エラー、システム障害、予期せぬデータ形式など、様々な要因でエラーが発生する可能性があります。 エラーが発生した場合に、どのように対応するか、誰に通知するか、再実行処理をどうするかなど、エラーハンドリングを事前に設計しておくことが重要です。
データセキュリティに配慮
自動化フローでは、顧客情報や注文情報といった機密性の高いデータを扱う場合があります。 データへのアクセス権限を適切に設定したり、暗号化通信を利用したりするなど、データセキュリティに十分配慮した設計・運用を行いましょう。
スモールスタートで始める
最初から複雑なフローを構築しようとせず、まずはシンプルなフローからスモールスタートで始めることをお勧めします。 例えば、まずは「在庫数減少時の通知」フローだけを構築し、運用しながら徐々に自動化範囲を広げていく、といった進め方が現実的です。
継続的な監視と改善
自動化フローは、構築して終わりではありません。 運用開始後も、定期的にフローの動作状況を監視し、パフォーマンスやエラー発生状況などを確認しましょう。 必要に応じて、フローの改善やメンテナンスを行い、常に最適な状態を維持することが重要です。
まとめ
Shopify FlowとPower Automate連携による在庫管理自動化は、ECサイト運営の課題を解決する強力な一手です。手作業から解放され、業務効率が向上、人的ミスも削減。顧客満足度と売上アップにも貢献します。導入にはステップと注意点がありますが、スモールスタートで着実に進めましょう。