「Dataverseってなに?」って言われてすぐ答えられますか?データ管理のツールってことはわかるけど、それ以上は理解されていないってことも少なくないでしょう。
この記事では、SharePointリストとDataverseの機能、特徴、メリット・デメリットを解説します。PowerPlatformを利用する際のデータソース選びの際に参考になれば幸いです。
Dataverseとは?
Dataverseは、Power Platformの中核を担うクラウドデータベースです。単なるデータの保存場所ではなく、エンタープライズレベルの高度な機能を備えているため、複雑なデータ構造や大規模データにも対応できます。
SQ+など専門的な知識を持たない人でもGUI操作でテーブルの作成や設定が可能。PowerPlatformで提供される各サービスはDataverseとシームレスに接続できる点、柔軟なセキュリティ設定ができる点、Dataverseにデータが格納されていることが前提で利用できる機能が複数ある点により、PowerPlatformを離床する際に最適のデータソースです。
Dataverseは有償環境の場合で使える選択肢
Dataverseは、Power Apps Premiumなどの個別購入ライセンス契約で使えるデータソースです。基本的に、Microsoft 365などに付属するPower Apps環境だと使えません。
Dataverse for Teamsと何が違うの?
Dataverse for Teamsというデータベースもありますが、Dataverse比べ低下の点が異なります。
- 保存できるデータ量が2GBまで
- プラグインやカスタムAPIが使えない
- 作ったシステムを別の環境にコピーできない
- Teams環境内でしか利用できない
SharePointリストと何が違うの?
SharePointリストは、Dataverseと比較して導入・運用コストが低く、特別な専門知識は必要ありません。 しかし、Dataverseは、SharePointリストでは実現できないような高度な機能を提供します。
以下の表に、SharePointとDataverseの主な違いをまとめました。
項目 | SharePoint | Dataverse |
データ構造 | シンプルな表形式、リレーションはルックアップ列で限定的 | リレーショナルデータベース、複雑なリレーションシップに対応可能 |
データ容量 | リストの項目数に制限あり、大規模データには不向き | 大規模データに対応可能 |
スケーラビリティ | 制限あり | 高いスケーラビリティ |
データモデリング | シンプル、複雑なデータモデルには不向き | 高度なデータモデリングが可能 |
セキュリティ | サイト、フォルダ、アイテムレベルでの権限設定が中心 | テーブル、列、行レベルでの詳細な権限設定が可能 |
権限管理の粒度 | 比較的粗い | きめ細やかな権限管理が可能 |
クエリ機能 | リスト内での検索が中心 | 高度なクエリ機能を備え、複雑なデータ分析が可能 |
ワークフロー | Power Automateと連携可能 | Power Automateとシームレスに連携 |
コスト | 一般的に低コスト | 使用量に応じてコストが発生 |
操作性 | 直感的で容易 | データモデリングの知識が必要な場合がある |
Power Appsとの連携 | 容易 | 容易、高度なデータ活用が可能 |
- シンプルなデータ管理、ファイル共有が中心: SharePoint
- 複雑なデータ構造、高度なセキュリティ、大規模データ処理が必要: Dataverse
このように、SharePointとDataverseはそれぞれ異なる特徴を持っています。
小規模なチームで、シンプルなデータ管理を行う場合はSharePointでも十分ですが、より大規模で複雑な情報管理、セキュアな情報共有、高度なデータ分析、そして将来的な拡張性を求めるのであれば、Dataverseの導入をおすすめします。
Dataverseの機能について
1. データモデル設計
Dataverseでは、リレーショナルデータベースと同様にテーブルを設計し、データの構造を自由に設計できます。 Excelのような表形式とは異なり、きめ細かくデータ構造を定義できるため柔軟な使い方が可能です。
- テーブル: データを格納する単位。顧客情報、商品情報、発注情報など、業務に必要なテーブルを自由に作成できます。
- 列: テーブル内の項目。データ型(テキスト、数値、日付、通貨、選択肢など)を指定できます。
- 行: テーブル内のレコード。各列にデータを入力してレコードを作成します。
- リレーションシップ: 複数のテーブルを関連付ける機能。1対多、多対1、多対多といった関係を定義できます。例えば、顧客情報テーブルと注文情報テーブルを関連付けることで、顧客ごとの注文履歴を簡単に取得できます。
- 参照整合性: データの整合性を保つための機能。例えば、顧客IDを他のテーブルで参照する場合、その顧客IDが存在するかどうかを自動的にチェックします。
- カスケード削除: 親レコードを削除する際に、関連する子レコードも自動的に削除する機能。データの整合性を維持するために非常に有効です。
2. データのインポート/エクスポート
Dataverseでは、様々な形式のデータ(CSV、Excelなど)をインポート/エクスポートできます。既存システムからのデータ移行もスムーズに行えます。Power Automateと連携することで、データ移行プロセスを自動化することも可能です。
3. Power Platformとの連携
Dataverseは、Power Apps、Power Automate、Power BIなど、Power Platformの各種サービスとシームレスに連携します。
これにより、アプリ開発、業務自動化、データ分析などを一元的に行うことが可能です。例えば、「Dataverseに保存されたデータをPower Appsでアプリ化し、Power Automateで業務プロセスを自動化し、Power BIでデータ分析を行う…」といった連携が可能です。
4. ビジネスルールとワークフロー
Dataverseでは、ビジネスルールを設定することで、データ入力時の検証や自動計算などを実現できます。
例えば、「顧客名」の入力必須設定や、「金額」フィールドの値が常に正の数値であることを検証するルールを設定できます。また、Power Automateと連携することで、承認プロセスなどのワークフローを構築できます。これにより、業務プロセスを自動化し、効率化を図ることが可能です。
5. セキュリティロール
Dataverseでは、セキュリティロールを使用して、ユーザーやグループごとのアクセス権限を細かく設定できます。テーブル、列、行レベルで権限を設定できるため、データへの不正アクセスを防止し、セキュアなデータ管理を実現できます。 例えば、特定のユーザーグループのみに特定の列へのアクセス権限を付与する、といった設定が可能です。
これらの機能を効果的に活用することで、Dataverseはエンタープライズレベルのデータ管理基盤として、あなたのビジネスを強力にサポートします。 次のセクションでは、Dataverseを活用することで得られるメリットについて詳しく見ていきましょう。
Dataverseのメリット
1. 拡張性
Dataverseは、クラウドベースのサービスであるため、データ量やユーザー数の増加に合わせて柔軟に拡張できます。
初期段階では小規模な環境から始め、ビジネスの成長に合わせて段階的にリソースを増強していくことが可能です。 従来のオンプレミス型のデータベースシステムのように、事前に大規模なサーバーを用意しておく必要がないため、初期投資を抑えられます。
また、予期せぬデータ量の増加にも柔軟に対応できるため、突然データ量が増えてパンクしそう…ということはありません。
2. パフォーマンス
Dataverseは、高度なインデックス機能やパーティショニング機能などを備えており、大規模なデータセットでも高速なデータ検索や処理が可能。 複雑なクエリを実行する場合でも、パフォーマンスの低下を最小限に抑えることができます。
これにより、データ量が増加しても、パフォーマンス低下を心配することなくシステムを安定的に運用できます。
3. 高度なデータモデリング
Dataverseは、リレーショナルデータベースと同様に、テーブル間の関係性を明確に定義できます。1対多、多対1、多対多といった複雑なリレーションシップにも対応できるため、複雑なデータ構造を持つビジネスにも対応できます。
これにより、データの整合性を保ち、データの重複や矛盾を最小限に抑えることができます。
4. 参照整合性とカスケード削除
Dataverseでは、参照整合性とカスケード削除といったデータ整合性を維持するための機能が標準で備わっています。
参照整合性により、データ入力時のエラーを防止し、間違うリスクが減るでしょう。カスケード削除により、親レコードの削除に伴い関連する子レコードも自動的に削除されるため、データの矛盾を防ぎ、データ管理を簡素化します。
Dataverseのデメリット
Dataverseは、強力な機能を備えたデータ管理ツールですが、有償のサービスなので、導入・運用にはコストがかかります。
1. 導入コスト
Dataverseの導入には、初期費用と準備期間が必要です。
- 初期費用: Dataverseのライセンス費用、そしてDataverseにデータを移行するための作業費用(データ移行ツール、データクレンジング、データ変換など)が発生します。 データ量やシステムの複雑さによって、初期費用は大きく変動します。
- 準備期間: Dataverseへのデータ移行、アプリ開発、ユーザーへのトレーニングなど、導入準備には時間を要します。 既存システムとの連携が必要な場合は、さらに準備期間が長くなる可能性があります。 既存システムとのデータ連携方法を検討し、移行計画を綿密に立てる必要があります。
2. 運用コスト
Dataverseの運用には、継続的な運用コストが発生します。
- ライセンス費用: ユーザー数やデータ容量に応じて、Dataverseのライセンス費用が発生します。ユーザー数が多い場合や、大量のデータを扱う場合は、ライセンス費用が高額になる可能性があります。 利用状況に合わせて適切なライセンスプランを選択する必要があります。
- 保守費用: システムの保守・運用、そして予期せぬトラブルへの対応には、継続的な保守費用が必要となります。 専門知識を持つ人材の確保、または外部委託による保守サービスの利用などを検討する必要があります。
- ストレージ費用: Dataverseで使用するストレージ容量に応じて費用が発生します。大規模なデータ管理を行う場合は、ストレージ費用が高額になる可能性があります。データ量やファイルサイズを考慮したストレージプランを選択する必要があります。
3. 学習コスト
Dataverseを効果的に活用するには、データモデリングやデータベース設計に関するある程度の専門知識が必要です。 そのため、社内研修の実施や、外部コンサルタントの活用などを検討する必要があります。
まとめ
この記事では、それぞれの機能、メリット、デメリットを解説しました。
SharePointリストは、ファイル共有やシンプルなデータ管理に最適ですが、複雑なデータモデルや大規模データ、高度なセキュリティにはDataverseが適しています。Dataverseは、スケーラビリティ、セキュリティ、高度なデータモデリングにおいてSharePointリストを上回りますが、導入・運用コストは高くなる可能性があります。
どちらを選択するかは、ニーズ、データの規模、複雑さ、セキュリティ要件、そして将来的な拡張性を考慮する必要があるでしょう。
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