「Microsoft365を契約している場合、追加費用なしでPower Appsが使える」というのは何となく知っているかもしれませんが、付属のPower Appsにはいくつか制限があるんです。
全くアプリが作れないとかそういうことではありませんが、細かな部分で勝手が違うので知っておくべきだとは思います。本記事ではそんなライセンス付属のPower Appsでできないことを解説。開発する前に一度確認してみてください。
Microsoft 365 付属のPower Appsには制限がある
Microsoft 365 の一部プランには、Power Apps の基本機能が無料で含まれています。しかし、無料プランにはいくつかの制限があるので注意。
1. アクセス制御の制限
Power Apps の無料プランでは、データへのアクセス制御が、アプリ単位もしくはテーブル単位でしか行えません。 つまり、特定のユーザーにのみ特定のデータ行や列を見せたい、といったきめ細かいアクセス制御は難しいです。
例えば、経費精算アプリを作成した場合、承認者は全ての申請データを見られる一方で、一般社員は自分の申請データしか見られないようにしたい、といった要件は、無料プランでは実現が困難です。 これは、セキュリティの観点から大きな問題となりえます。
2. データベース関連の制限
Microsoft 365 の無料プランでは、エンタープライズレベルのデータベースである Dataverse を利用できません。 代わりに、SharePoint リストやExcel をデータソースとして利用することになりますが、以下のような制限があります。
- データ容量の制限: SharePoint リストやExcelファイルには、保存できるデータ量に制限があります。大量のデータを扱うアプリでは、すぐに容量不足に陥る可能性があります。
- データ連携の制限: SharePoint リストやExcelファイルは、他のシステムとの連携機能が限定的です。複雑なデータ連携が必要なアプリでは、機能が不足する可能性があります。
- データモデリングの制限: SharePoint リストは、リレーショナルデータベースのような複雑なデータ構造を表現できません。そのため、複雑なデータモデルが必要なアプリには適していません。
3. コネクタ関連の制限
Microsoft 365 の無料プランでは、多くのプレミアムコネクタが利用できません。プレミアムコネクタは、Salesforce、SAP、Oracleなど、様々な外部システムと連携するためのコネクタです。これらのコネクタを利用できない場合、Power Appsと外部システムを連携した高度な機能の実装が困難になります。
例えば、経費精算システムを構築する場合、freeeなどの会計システムと連携して、データの自動連携を実現したい場合、無料プランでは対応できない可能性があります。
これらの制限事項を理解した上で、Power Appsを導入・活用することが重要です。次でもう少し深堀します。
アクセス制御の制限
Microsoft 365 付属の Power Apps の無料プランでは、データへのアクセス制御がアプリ単位もしくはテーブル単位でしか行えません。これは、特定のユーザーにのみ、特定のデータ行や列を見せたいといった、きめ細かいアクセス制御が難しいということ。
具体例:経費精算アプリ
経費精算アプリを例に考えてみましょう。
多くの企業では、経費精算アプリにおいて、以下の様なアクセス制御が必要となるでしょう。
- 承認者: 全ての申請データを参照・編集できる。
- 経理担当者: 全ての申請データを参照できるが、編集はできない。
- 一般社員: 自分の申請データのみを参照・編集できる。
- 管理者: 全てのデータを参照・編集できる。
Microsoft 365 の無料プランでは、アプリ全体へのアクセス権限しか設定できないため、上記のような詳細なアクセス制御を実現できません。 結果として、以下のことが起こるかも。
- 情報漏洩リスクの増加: 承認者以外のユーザーが、本来アクセスしてはいけない情報を見てしまう可能性があります。
- 不正操作のリスクの増加: 権限のないユーザーが、データの編集・削除を行ってしまう可能性があります。
- コンプライアンス違反: 個人情報保護法などの法令に違反する可能性があります。
対策:Power Apps PremiumプランやDataverseの活用
これらのリスクを軽減するために、Power Apps PremiumプランやDataverseの導入を検討しましょう。
- Power Apps Premiumプラン: より高度なセキュリティ機能が利用可能になります。行レベル・列レベルでのアクセス制御も実現できます。
- Dataverse: エンタープライズレベルのデータベースであるDataverseを使用することで、高度なセキュリティ機能と柔軟なアクセス制御を実現できます。Dataverseでは、行レベル・列レベルでのセキュリティ設定に加え、フィールドレベルセキュリティ(特定の列へのアクセスを制限)なども設定可能です。
データベース関連の制限
Microsoft 365 の無料プランで Power Apps を利用する場合、エンタープライズレベルのデータベースである Dataverse を使用できません。
これは、Power Apps の機能を最大限に活用する上で大きな制約に。
1. データ容量の制限
Dataverse を利用できない場合、データの保存先は SharePoint リストや Excel ファイルなどに限定されます。
- SharePoint リスト: リストの項目数には上限があり、大量データの保存には適していません。リストビューのスロットリングが発生し、パフォーマンスに悪影響を与える可能性もあります。
- Excel ファイル: ファイルサイズが大きくなると、アプリの読み込み速度が遅くなったり、操作が不安定になったりします。大規模なデータ管理には明らかに不向きです。
大量のデータを扱うアプリを開発する際には、Dataverse のようなスケーラブルなデータベースが不可欠。無料プランでは、データ容量の制限によって、アプリの機能が制限されたり、パフォーマンスが低下したりする可能性があります。
2. データ連携の制限
Dataverse は、Power Automate や Power BI などの他の Power Platform サービスとシームレスに連携可能。しかし、無料プランでは Dataverse を使用できないため、これらのサービスとの連携が制限されます。
これにより、
- ワークフローの構築が限定的: 複雑なワークフローを構築することが難しくなります。
- 高度なデータ分析が困難: Dataverse と Power BI を連携させることで実現できる高度なデータ分析が難しくなります。
- 外部システムとの連携が限定的: Dataverse を介した外部システムとの連携が制限されます。
といったことが起きます。
3. データモデリングの制限
Dataverse は、リレーショナルデータベースとして、テーブル間の関連付け(リレーションシップ)を柔軟に定義できます。これにより、複雑なデータ構造を容易に管理できるように。しかし、SharePoint リストや Excel ファイルでは、複雑なデータモデルを表現することが困難です。
そのため、以下の点に注意しましょう。
- データの整合性が保ちにくい: 複数のリストやシートにデータを分散して管理する必要があるため、データの整合性を保つのが難しくなります。
- データの参照が複雑: 複数のリストやシートを参照する必要があるため、データの参照が複雑になり、開発工数が増加します。
代替策:SharePoint リストや Dataverse for Teams
Dataverse を利用できない場合の代替策として、SharePoint リストや Dataverse for Teams が考えられますが、それぞれにメリット・デメリットがあります。
- SharePoint リスト: 操作が容易ですが、データ容量や機能に制限があります。
- Dataverse for Teams: Dataverse の機能を限定的に利用できますが、Teams 環境での利用に制限があります。
Dataverse は、Power Apps を最大限に活用するための強力な基盤です。大規模なデータ管理や高度な機能が必要なアプリを開発する場合は、Dataverse の導入を検討しましょう。
コネクタ関連の制限:プレミアムコネクタが使えない! – 外部システムとの連携が制限される…
Microsoft 365 の無料プランでは、多くの プレミアムコネクタ が利用できません。
プレミアムコネクタは、Salesforce、SAP、Oracle、各種会計システムなど、様々な外部システムと Power Apps を連携するための重要な機能です。この制限により、外部システムとのデータ連携が必要なアプリ開発において、大きな制約が生じます。
プレミアムコネクタが利用できないことによる問題点
プレミアムコネクタを利用できない場合、以下の様な問題が発生する可能性があります。
- 外部システムとのデータ連携が困難: Power Apps で作成したアプリと、既存の基幹システムや業務システムを連携することが難しくなります。 既存システムのデータを取り込んだり、Power Apps から既存システムを操作したりするような高度な機能を実装することができません。
- 業務プロセスの自動化が限定的: Power Automate と連携して、業務プロセスを自動化したい場合、プレミアムコネクタが利用できないことで、自動化できる範囲が狭まります。例えば、会計システムと連携した自動経費精算アプリを作成する場合、プレミアムコネクタが必要となるでしょう。
- アプリの機能が制限される: 外部システムとの連携機能が制限されることで、アプリの機能が限定的になり、ユーザーにとって使い勝手の悪いアプリとなる可能性があります。
- 開発工数の増加: プレミアムコネクタの代替策として、カスタムコネクタを作成する必要が生じる場合があります。カスタムコネクタの作成には、高度なプログラミングスキルと時間が必要となるため、開発工数が増加します。
Microsoft 365 の無料プランでは、標準コネクタのみが利用可能です。標準コネクタは、SharePoint、Excel、OneDriveなど、Microsoft のサービスとの連携に特化しています。
多くの業務システムは、Microsoft のサービス以外で構築されている場合が多いため、標準コネクタだけでは、十分な連携ができないケースがほとんどです。
まとめ
Power Apps を最大限に活用し、業務効率化やデジタル化を成功させるためには、自身のニーズと無料プランの機能制限を正確に把握し、適切なプランを選択することが重要です。 必要に応じて、Power Apps の有料プランへの移行や、代替策の検討も視野に入れましょう。
ファンリピートでは、お客様のニーズに最適な Power Apps の導入・活用を支援するサービスを提供しています。ライセンス選定からアプリ開発、運用保守まで、経験豊富なエンジニアがサポートいたします。Power Apps の導入でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。