昨今、日本企業全体にとってDX(デジタルトランスフォーメーション)が求められています。
DXとは、単に業務のデジタル化を行うことではなく、企業全体がデータや最新技術を取り入れ、商材やビジネスモデル、組織文化、風土なども改革することを指す言葉です。
ここ数年、DXの必要性が叫ばれていますが、日本ではまだまだ成功できていません。「なぜ失敗してしまうのか」「どうDXを進めたら成功するのか」などの疑問を持つ方も多いでしょう。
そこで今回は、企業がDXに失敗してしまう原因について解説します。なお、弊社ファンリピートでは業務改善のためのシステム開発を行っています。以下より資料請求が可能です。
DXが失敗に終わってしまう企業の特徴は?
日本においてDXの必要性が説かれ始めたのは2018年ごろからです。
しかし経済産業省が2022年7月にリリースしたDXレポート2.2によると、「DXによる顧客向けの価値創造ができている企業」は7.5%、「ビジネスプロセスのDX」で成果が出ている企業は6.5%に留まっています。
参考:経済産業省|DXレポート2.2
90%以上の企業がDXに失敗している、もしくは取り組めていないといえます。ではなぜ失敗してしまうのでしょうか。はじめに、DXが失敗に終わってしまう企業の特徴を解説します。
現場の意見を聞きすぎてしまう
DXによって影響が出るのは現場です。現場に否定派がおり、多くの反対意見に押されてDXが進まないケースは多々あります。
例えば業務プロセスをデジタル化する場合、これまでのプロセスにデジタルツールを導入し、蓄積されるデータを踏まえて、適宜、業務プロセスを効率化する必要があります。
場合によっては、現場の業務プロセスを短いスパンで変更しなければいけません。長期的にみると、最適化・効率化が進みますが、既存の業務フローに慣れているメンバーから反対される可能性があります。
現場の声を優先し過ぎるのではなく長期的視点でのメリットを説明しながら、DXを推進する必要があります。
経営層・上層部の理解不足
経営層・上層部が「DX」の本質を理解できない結果、中途半端なデジタル化で終わってしまうケースもよくあります。
DXの目的は業務のデジタル化ではありません。企業、組織全体がデジタル化し、蓄積されるデータをもとに企業活動を推進するよう改革することです。
そのため企業文化・風土の改革は必須になります。つまり経営層、上層部が率先してDXを理解し、企業全体に広めることが必要です。
システムを導入して満足して終わり
DXの理解が足りていない場合、既存のアナログな業務フローをシステムに置き換えただけで終了してしまいます。この状態だとDXは達成できません。
例えば社員の勤怠管理について、タイムカードをアプリケーションに変えることはDXではなくデジタル化に過ぎません。アプリに蓄積される勤怠データをもとに改善策を講じる必要がありますし、こうしたデータベースでの改革を企業全体に広げることがDXです。
DXの最終ゴールを見誤らないようにしましょう。
DX化を進められる人材が不足している
DX化を進めるためには、専門的な人材が必要です。例えば以下のような人材が必要になります。
- 組織デザイナー
- データエンジニア
- データサイエンティスト
- システムインテグレーター
- ビジネスアナリスト
- プロジェクトマネージャー
これらの人材が社内におらず、DXに着手できないパターンも多々あります。この場合、外部委託や採用でリソースを拡充する必要がありますので、DXの主担当者がリーダーシップをもって判断しましょう。
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そもそも何をもってDX成功なのか
DXに似た言葉に「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」があります。
項目 | 詳細 |
デジタイゼーション | アナログベースの業務をデジタル化すること。情報のデジタル化の実現 |
デジタライゼーション | デジタル化により業務プロセスを効率化、自動化すること。業務単体の効率性向上の実現 |
DX(デジタルトランスフォーメーション) | デジタル基盤が構築されることで、企業文化、ビジネスモデル全体が根本的にデータベースに変革されること |
例えば、ECサイト最大手のAmazonは、サービス開始当初は単なるオンライン書店でした。オフラインの書店をオンラインに変えただけではデジタイゼーション止まりです。
しかし現在ではAWSというインフラ基盤を有しており、膨大なデータをベースとして顧客にパーソナライズされた企業活動を行っています。このように、Amazonはデジタル基盤を構築したことで、ビジネスモデルを根本的に変革することに成功しました。
このように、デジタルを活用してビジネスモデル全体に変革をもたらすことで、はじめて「DXに成功した状態」といえます。
DXに関しては以下の記事でも詳しく紹介しています。こちらもご覧ください。
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DXの進め方を解説
ここまで、DXの重要性や目的を解説しましたが、DX推進を失敗しないためにどうように進めれば良いのでしょうか。ここからはDXの進め方を6つのステップに分けて解説します。
その1 各部署を巻き込んだチーム組成をする
まずはDX推進のためにチームを組成しましょう。この際、一つの部署だけで行うのは危険です。例えば経営企画部だけで行うと、他部署や現場からの反発を受けやすくなります。
必ず、社内の各部署からプロジェクトメンバーを募りましょう。DXの影響を受ける現場のメンバーも積極的に巻き込む必要があります。
その2 現状の調査
チーム組成後に企業の現状について調査をします。社内各部署の業務フローを分解したうえで、アナログな業務を洗い出していきます。
また、デジタル化されている業務でも「きちんとデータを収集しているか」「データをもとに改善が行われているか」をチェックしましょう。
この際にAs-Is(現状)を漏れなくまとめておきます。
その3 DXの推進目的を明確にする
DXを推進する目的を決めておきます。一気に企業全体のDXを進めることも考えられますが、プロジェクトが大規模になりすぎると頓挫してしまうリスクがあります。
例えば「マーケティング部」「コーポレート部」で区切るなど、短期的な目的を作りつつ進めると無理なくプロジェクトを推進できます。
ただし細分化しすぎると、データが他のシステムと連携が取れないといった、「データのサイロ化」が起きがちです。最終的に統合データを格納する場所を想定したうえで進めることを意識しましょう。
その4 DX戦略のロードマップを作成
目的を達成するためのロードマップを作成しましょう。WBS(作業分解図)のような形式でスケジュールとタスク、担当者を割り振ることで建設的に進められます。
戦略として重要なのは「文化の醸成」です。ツールの導入や活用をゴールとせず、社員の意識改革や企業のミッションの見直しから進めましょう。
その5 予算に応じたITシステム・ベンダーの選定
ロードマップに従ってデジタル導入を進めます。そのために適したITシステムの導入・開発をしましょう。既存のツールの導入はもちろん、自社開発も手段の一つです。
また自社に開発リソースがない場合は、外部委託で開発することもあります。弊社・ファンリピートではDXに貢献できる社内業務改善システムを開発・納品できます。気になる方は以下のリンクからお問い合わせください。
その6 施策の実行とPDCAサイクルを回す
ツール導入後、デジタル化した業務を進めていきます。データ駆動型の組織に変革できるかを観察しつつ、業務に滞りが出るようであれば改善をして行きましょう。
社内メンバーが問題なく業務を遂行できるレベルまでPDCAサイクルを繰り返します。また顧客の購買活動に支障が出ないようにしましょう。
業界別のDX推進ポイント
業界別にどのような点に注意してDXを推進すべきかを紹介します。こちらでは製造、サービス、医療、流通、金融といったDXが進みにくい業界に特化してポイントを紹介します。
製造業界
製造業界でポイントになるのは「スマートファクトリーの実現」です。スマートファクトリーとは、IoTセンサーやAI技術を活用して、工場内の機器やプロセスをリアルタイムでモニタリング・制御するものとなっています。
こうしたハードウェアを導入することで、ダウンタイムを最小限に抑え、生産性が向上します。
サービス業界
サービス業界では「顧客体験」をパーソナライズ化することが求められます。
顧客データを分析し、個々のニーズに応じたマーケティング活動をしましょう。おすすめ商品を表示する「レコメンド機能」やカスタマーサポートの自動化などが例に挙がります。
医療業界
医療業界では、院内業務の効率化の観点で「データ駆動型の医院」を作る必要があります。問診票や予約情報、カルテなどをデジタル化し、患者データを一カ所にまとめましょう。これによりスタッフ、患者ともにメリットを創出できます。
またリモートツールを使った遠隔治療、ウェアラブルデバイスを用いた健康管理などもDXに欠かせません。
流通業界
流通業界では「サプライチェーンの最適化」が重要です。ブロックチェーンやクラウドを活用してサプライチェーン全体の稼働率、コストを見える化します。
するとサプライチェーンのなかでの無駄が分かり、的確に改善に取り組めます。このように、サプライチェーン全体をデータ化したうえでPDCAサイクルを回していきましょう。
金融業界
金融業界では「デジタルバンキングの推進」が重要な項目です。金融サービスとIT技術を組み合わせたFintech(フィンテック)などを活用して、顧客情報をデジタル化できます。これにより顧客の利便性が向上し、DXを実現できます。
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DXに失敗した企業事例
こうした進め方を理解していても、なかなかDXは上手くいきません。具体的に失敗した原因がわかるよう、こちらでは失敗事例を紹介します。
各社がなぜDXに失敗したのかを理解したうえで、同じ轍を踏まないよう注意しましょう。
ゼネラル・エレクトリック
世界最大の総合電機メーカー、ゼネラル・エレクトリックはDXに失敗しました。
2011年、当時のCEOだったジェフ・イメルトはゼネラル・エレクトリックのDXに乗り出します。当時、ゼネラル・エレクトリックはハードウェア製品の販売を行う企業でした。つまりフロー型の収益モデルだったのです。
しかしこれに危機感を抱いたイメルトはストック型のビジネスモデルに変革するため、産業機器をインターネットと繋げ、ビッグデータを収集・分析するプラットフォーム「Predix」をリリースしました。
あらゆる産業の工場向けのソフトウェア事業であり、ゼネラル・エレクトリックは各工場にソフトウェアを導入してもらうことで、保守運用型のモデルで継続的な収益を挙げようと思ったのです。
40億ドルを投資した大プロジェクトでしたが、大失敗に終わります。失敗した理由と、得られる学びは主に以下です。
失敗理由 | ビジネスモデルの変化にセールス担当がついていけなかった外部人材がDXを主導し軋轢が生まれた顧客課題にフィットしていなかった |
詳細 | これまでの売り切りのビジネスしか知らなかった営業担当者は、ソフトウェアを販売し解約を抑える方法が分からなかった外部から採用したDX人材は社内のパイプがなく、元の社員から「突然Predixを導入する侵略者」のように見られてしまった顧客はデータ収集の必要性が分からず導入するメリットを理解できなかった |
学び | ビジネスモデルの変化に対応して長期的に社員教育などをする。社内にキーマンとなる人材を設けて広げてもらうプロダクトアウトではなく、マーケットインを意識して顧客の声を生かす |
DXには顧客が絡んでくるため、評価を落とさないよう、上記の3点を意識して進める必要があります。
参考:ONE CAPITAL「GEの事例に学ぶ「失敗しないDX戦略」とは -6年間で40億ドル投資したその末路-」
三越伊勢丹
百貨店最大手の三越伊勢丹はまだ「DX」という言葉がない時代から、積極的にデジタル施策を講じていました。しかし一過性の取り組みになってしまい、思うような成果が出なかったといいます。
例えば「AIを用いて商品をレコメンドする」「アプリで百貨店内のナビゲーションを行う」「スマホだけで百貨店に集客する」などの施策を行いましたが、なかなか上手くいかなかったといいます。
なかでもアメリカの「FANCY」というソーシャルコマースへの出店は大きな失敗例でした。FANCYはセレブがキュレーターとして商品を紹介し、見ている人が購入するWebサービスでした。
三越伊勢丹はFANCYに出店するも、なかなか購買にたどり着かず、費用対効果としてコストに見合わなかったといいます。
こうしたDX施策が一過性に終わった理由と、得られる学びは以下の通りです。
失敗要因 | 本格導入に耐えられるか検討していなかったマクロな視点が抜けていた |
詳細 | Web施策を実施する前に本格的に導入した際に耐えられるかどうかをテストしておらず、一過性に留まらざるを得なかった。長期的に実践しないと効果が出ないデジタル施策について早期に効果を判断し、辞めてしまった |
学び | まずは導入するツールやサービス、施策についてテストとして試験導入し、本格的に社内展開できるかを判断する短期的ではなく、長期的に運用することを判断する。このためにもテストと検証が必須となる |
DXはこれまでの企業活動が大きく変わります。そのため変化が伴う際には、まずテストを行い、ちゃんと運用できるのかを判断するようにしましょう。
参考:日経ビジネス「三越伊勢丹マーケDX失敗の教訓 課題解決型に“2つの落とし穴”」
Ford社
米国の自動車メーカーFord社は、2014年にCEOのマーク・フィールズ氏の指導の下で、輸送サービス市場への進出を目指し、「パーソナルモビリティ」を中心とした事業変革計画を打ち立てました。この戦略の一環として、2016年にシリコンバレーにFord Smart Mobility社を設立し、デジタル自動車の開発を目指しました。
しかし、この新しいデジタル事業は、従来の自動車製造部門とは完全に分離して運営され、他の部門とのコミュニケーションが不足していました。その結果、Ford Smart Mobility社はサービスの品質問題に直面し、2017年には3億ドルの損失を計上しました。この失敗により、Ford社の株価は約40%下落し、フィールズ氏は同年に辞任を余儀なくされました
この事業の失敗の理由と、得られる学びを整理すると以下になります。
失敗要因 | 組織が分断していたコミュニケーションが不足していた品質の悪化市場と顧客ニーズのミスマッチ |
詳細 | デジタル部門を従来の自動車製造部門と完全に切り離して運営した。これにより他の部門と連携できず統合できなかった部門間でのコミュニケーションが薄く、新しいデジタル事業の目標や進捗状況が他部門に共有されなかった。 これにより全社的なサポートがなかったFord Smart Mobility事業を他の部門から分離して運営し、既存の製品ラインと整合せず、顧客体験に悪影響を与えたFord社の「パーソナルモビリティ」戦略は、市場や顧客のニーズからかけ離れていた |
学び | 全社的な統合を図り、デジタル戦略が既存のビジネスとシームレスに連携する。事前に全社的なDXのビジョンを共有する全社的な戦略の共有と進捗報告を行い、全ての部門が協力できる環境を整備する品質管理のプロセスを従来の部門と連携させること。 加えて、全社的な基準を適用することで、新しい取り組みが既存のブランド価値を保つ市場や顧客のニーズを深く理解し、それに応じた戦略を立てることが重要。これにより顧客満足度を高め、DXの成功につながる |
参考:日本貿易振興機構(JETRO)「アメリカにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の現状」
Procter&Gamble(P&G)社
米国の日用品消費財メーカーのProcter&Gamble(P&G)社は世界最大の日用品メーカーです。
P&Gは、2011年にCEOのロバート・マクドナルド氏の下で「地球上で最もデジタルな企業」になると宣言しました。同社のすべての事業部門にテクノロジー(特にデータ解析)を適用し、消費者向け商品・サービスを改善することを目指した形です。
しかし、この戦略は「具体的な達成目標」が欠けていました。P&Gは既に業界リーダーとしての地位を確立していたため、競合との差別化が不十分だったといえます。
当時は世界経済危機後の不況下だったこともあり、逆に一部で競争力が低下する結果となりました。これが原因で、マクドナルド氏は2013年に辞任を余儀なくされました。
P&G社の失敗理由と、得られる学びをまとめると、以下になります。
失敗要因 | 目標設定が漠然としていた既存の業界リーダーとしての立場不況下での大規模投資実質的な戦略的焦点の欠如 |
詳細 | DXの目標が漠然としており、具体的な達成目標が欠けていたため、効果的な戦略実行が困難だった。P&Gは既に業界リーダーとしての地位を確立していたため、差別化戦略が不十分で、DXによる競争力強化が難しかった。 世界経済危機後の不況下で、同社の収益が安定していなかったにもかかわらず大胆なDXを強行した具体性にかけたプロジェクトであり、明確なゴールが設定されていなかった |
学び | DXの成功には、具体的で測定可能な目標を設定することが大事。目標に応じた計画を立てることが重要になる。DXを通じて新たな差別化ポイントを見つけ、競争優位性をさらに強化する戦略が必要である。経済環境や市場状況に応じて、DXへの投資を慎重に管理する。 無理をするのではなく、ROIを意識した投資計画を立てるDXを成功させるためには、全社的な戦略の中で、ゴールやターゲットなどを明確にする必要がある。 |
参考:日本貿易振興機構(JETRO)「アメリカにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の現状」
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DXでよくある質問
弊社・ファンリピートではDXを考えているお客様からのシステム開発のご依頼も承っています。そのなかで「よくいただく質問」をまとめました。
DXは一度やれば終わりなの?
DXは継続的に行うものです。データが蓄積されるにつれて、柔軟に変化が求められます。例えば商材をDX化する場合、顧客行動データが変わるにつれてマーケティング活動を変えなければいけません。
また技術や市場、顧客のニーズが進化し続ける中で、企業もその変化に適応し、持続的に組織全体を変革し続ける必要があります。
社員の反発を押し切ってでもDXを進めるべき?
社員の反発を無視してDXを進めることは避けるべきです。DXは組織全体の変革を伴うため、全ての従業員の理解と協力が不可欠です。現場の反発を押し切ってしまうと、デジタル活用は進みません。
反発がある場合、その理由を丁寧に聞き取り、コミュニケーションを通じて懸念を解消しましょう。また、DX推進チームに各部署のメンバーを招待して、プレイヤーに広めてもらうことも有効です。
DXってIT部門に任せればいいんでしょう?
DXをIT部門に任せるだけでは不十分です。DXは企業全体の戦略であり、IT部門だけでなく、経営層、ビジネス部門など、全従業員が一体となって取り組む必要があります。
ITはDXの中核となる組織ではあります。しかしDXを成功に導くためにはビジネスプロセスや企業文化、組織構造の変革が不可欠です。経営層のリーダーシップと全社的な協力体制を構築しましょう。
まとめ
今回は企業がDXに失敗してしまう理由について解説しました。DXは単なるデジタル化ではありません。デジタルツールの導入に留まらず、組織・企業文化全体の変革が求められますので、ビジネス理解も重要です。
弊社・ファンリピートではDXに貢献するためのシステム開発を代行いたします。「エンジニア人材が不足している」「リソースがない」などでお困りの方はお気軽にご相談ください。
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