「Amazonの生成AIの始め方は?」「Amazon Qで何ができる?」
Amazonは「Amazon Q」というAIサービスを提供しています。非常に多くの機能が搭載されている反面、具体的に何ができるかわからないという方もいるのではないでしょうか。
本記事では、Amazon Qで利用できる5つの製品を取り上げ、機能や料金体系などを解説します。最後までお読みいただければ、自身の業界で利用すべきAmazon Qの製品がわかり、費用感も掴めるでしょう。
また、Amazon Qは無料利用枠が用意されています。実際の始め方も手順に沿って解説しますので、活用できそうな製品があれば一度試してみてください。
Amazonの生成AI「Amazon Q」とは?
Amazon Qは、Amazonが提供するフルマネージド型のAIサービスです。さまざまな用途に対応していますが、アシスタントとしての機能が充実しています。データ活用やコーディング、サプライチェーン管理など、幅広い用途の機能が利用できます。
Amazon Qはプライベート環境でカスタマイズできるため、学習データは基盤モデルのトレーニングに利用されません。そのため、他のサービスに比べると、機密性の高い情報を安全に取り扱うことができます。
Amazonの生成AI「Amazon Q」の製品と料金
Amazon Qは、5つの製品によって構成されています。
- Amazon Q Business
- Amazon Q Developer
- Amazon QuickSight
- Amazon Connect
- AWS Supply Chain
それぞれの概要や機能、料金を解説します。
Amazon Q Business
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Amazon Q Businessは、企業内の知見やデータを出力できるAIアシスタントサービスです。
Amazon Q Businessを利用することで、検索や問題解決にかかる時間を大幅に削減できます。具体的には、以下のような業務をサポートします。
- 会話形式の質問による問題解決
- 出力結果の情報源の参照
- 社内データの検索
- コンテンツの作成
また、Amazon Q Businessでは、Amazon Q Appsが利用できます。Amazon Q Appsとは、会話するだけでAIを活用したアプリを開発できるサービスです。これを利用すれば、プログラミングの知識がない社員でも、状況に合わせたアプリ開発ができるようになります。
・Amazon Qの料金
プラン | 月額料金 | できること・機能 |
Amazon Q Business Lite | 3ドル | 会話形式の質問データへの接続 |
Amazon Q Business Pro | 20ドル | Amazon Q Business Liteの機能Amazon Q Appsの利用Amazon Q in QuickSightでのインサイト取得 |
Amazon Q Developer
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Amazon Q Developerは、開発者向けの機能が搭載されたAIアシスタントです。
Amazon Q Developerを利用することで、効率的なコーディングや開発が可能になります。具体的には、以下のような業務が可能です。
- コーディングのアシスト
- 前回までの会話を考慮した出力
- コード改善とアドバイス
- コード補完
例えば、コーディングの際にアシストやコード補完を活用すれば、作業量を最低限に抑えられます。
また、AIは完成したコードの改善やデバッグにも活用可能です。特に、人の手でバグを見つけるのは非常に多くの時間がかかりますが、AIを活用すれば短時間で見つけられる可能性が高まります。
・Amazon Q Developerの料金
プラン | 月額料金(ユーザー当たり) | できること・機能 |
Amazon Q Developer Pro | 19ドル | 開発環境でのチャット・コードのデバッグ・テストの追加月4,000行までのコード改善月500件までのセキュリティ脆弱性スキャン |
Amazon Q Developerには以下の無料利用枠があります。利用を検討している方は、範囲内で使用感を確かめてみるのもよいでしょう。
- 開発環境でのチャット・コードのデバッグ・テストの追加(月50回)
- コード改善(月1,000行)
- セキュリティ脆弱性スキャン(月50件)
Amazon QuickSight
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Amazon QuickSightは、データの活用をサポートするAIアシスタントです。
Amazon QuickSightはあらゆるBI(※)用途に対応しているため、全社共通のツールとして利用できます。ツールが一つになれば、学習コストの低減やコストの最適化が図れます。
※BI(ビジネスインテリジェンス):企業内外のあらゆるデータを分析し、経営の意思決定に活用する取り組み・管理手法
具体的には、以下のような業務が可能です。
- ダッシュボード作成
- データ抽出
- ビジュアルのカスタマイズ
- データの解釈
- データの一元管理
このように、社内データの一元管理や見える化を一つのツールで実現できます。
・Amazon QuickSightの料金
プラン | 月額料金(ユーザー当たり) | できること・機能 |
作成者 | 24ドル | 質問ダッシュボード・レポート作成データへのアクセス |
著者プロ | 50ドル | 作成者プランの機能ダッシュボード構築生成データストーリーの構築・共有 |
リーダー | 3ドル | 質問データストーリーの利用 |
リーダープロ | 20ドル | エグゼクティブダッシュボードの表示生成データストーリーの構築・共有 |
Amazon Connect
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Amazon Connectは、顧客の問題解決を助けるAIアシスタントです。コンタクトセンターを構築でき、顧客対応の品質向上や省力化に役立てられます。
Amazon Connectでは、ドラッグ&ドロップでシステムを構築できるため、プログラミングの知識がない人でも比較的容易にコンタクトセンターを開設できます。
また、対応した内容は、履歴がデータとして残るうえ、レポート機能による分析が可能です。コンタクトセンターをイチから構築するには、音声認識やテキスト変換、音声合成などの技術が必要ですが、Amazon Connectを利用すればこれらの構築スキルが不要です。
・Amazon Connectの料金(音声とビデオ)
1分当たりの料金 | |
音声通話(受発信) | 0.018ドル |
音声通話によるアウトバウンドキャンペーン | 0.025ドル |
アプリケーション内音声通話・ウェブ音声通話 | 0.01ドル |
ビデオ通話 | 0.015ドル |
Amazon Connectには、デプロイ後12ヵ月間に限り、月90分の無料利用枠があります。利用を検討している方は、範囲内で使用感を確かめてみるのもよいでしょう。
AWS Supply Chain
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AWS Supply Chainは、ERP(エンタープライズリソースプランニング)やサプライチェーン管理(SCM)システムと連携して、サプライチェーンを管理するAIアシスタントです。
- データレイク(データのリポジトリ・格納場所)
- インサイト生成
- サプライチェーンリスクの発見
- 需要予測
AWS Supply Chainでは、AI予測による在庫最適化が可能です。これにより、在庫切れによる機会損失や、在庫過剰によるムダな管理コストの発生を防げます。
また、2024年7月現在は公開されていませんが、サプライチェーンに関する情報を対話するように質問できるようになります。
これにより、「サプライチェーンで何が起こっているのか」「なぜ起こっているのか」「どのような行動を取るべきか」などの疑問に対して、蓄積データに基づいた回答を得られます。
・AWS Supply Chainの料金
利用量 | 料金 | |
データレイク | 最初の10GB/時間 | 0.28ドル |
10GB/月 | 0.25ドル | |
サプライチェーンインサイト | 最初の100,000製品/月 | 0.40ドル |
次の900,000製品 | 0.13ドル |
Amazonの生成AI「Amazon Q」の始め方
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ここでは、Amazon Qの利用方法を解説します。
ステップ1.VS Codeのインストール
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まず、Visual Studioの「Amazon Q」にアクセスし、「Visual Studio Codeをダウンロードする」を選択します。
ダウンロードページに遷移したら、Mac・Windowsのどちらかを選択し、ダウンロードします。ここでは、Windowsの例を解説します。
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使用許諾契約書を読み、「同意する」を選び「次へ」を選択します。
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次の画面でインストール先の指定ができるので、希望のファイルを選択します。
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プログラムのショートカットを作成する場所を指定します。

次の画面で内容に間違いがなければ、「インストール」を選択します。

インストールが完了すれば、以下の画面が表示されるので「完了」を選択します。

インストールが完了すれば、指定したファイルからVisual Studio Codeを起動します。
正常に動作すればインストールは完了です。ここでは、言語を日本語にする方法も解説します。
まず、画面左側にある拡張機能のアイコンを選択します。

次に、赤枠の検索欄に「japan」と入力すると、上部にMicrosoftが提供する「Japanese Language Pack for Visual Studio Code」が候補として表示されます。
地球儀アイコンの右にある「Install」からインストールし、再起動すると言語が日本語となります。

ステップ2.Amazon Qのインストール
Visual Studio Codeがダウンロードできたら、Amazon Qをインストールします。
まず、Visual Studio Codeを開き、検索欄に「Amazon」と入力します。上部に「Amazon Q」が候補として表示されたら、「インストール」を選択します。

サインインの方法を選び「Continue」を選択します。

以下の確認画面が表示されたら「開く」を選択します。

すると、AWS Builder IDの作成を求められます。メールアドレスを入力し、アカウントを作成しましょう。

次に、アクセス許可を求められるので「Allow access」を選択します。

以下の画面が表示されれば、認証は完了です。

ステップ3.基本的な操作方法
Amazon Qでは、ショートカットが利用できます。基本的な操作とコマンドは以下の通りです。
コマンド | |
Amazon Qを手動で開始する(提案を開始する) | Mac:Option + CWindows:Alt + C |
次の提案を見る | → |
前の提案に戻る | ← |
提案を受け入れる | tab |
例えば、以下は「print」と入力して、「Alt + C」によりAmazon Qのコード提案を受けた画面です。printで表示する対象が入力されていないため、「Hello,world!」と出力する提案を受けました。

「tab」キーを押下して提案を受け入れると、以下のようにコードが出力されます。

このように、難易度の高いプログラミングだけでなく、基本的な補助もできるので、プログラミングを学び始めたばかりの方でも活用できます。
Amazonの生成AI「Amazon Q」の登場で予測される将来展望
Amazon Qをはじめとする生成AIの登場により、以下のようなことが起きると予測されます。
オートメーションの普及
Amazon Qを利用すれば、コーディングやアプリ開発、カスタマーサポートなどさまざまな業務の自動化が可能です。これはAmazonだけでなく、MicrosoftやMeta、Googleなどの企業も、自動化を推進するAIサービスを提供しています。
今後、世界のAI市場規模は急激に成長すると考えられていることから、Amazon Qのような自動化を推進するAIサービスの普及は進むと考えられます。
新たなビジネスモデルの創出
Amazon Qのような生成AIは、単に業務効率化や省力化を図るだけでなく、活用が進めば新たなビジネスモデルの創出が可能です。
例えば、生成AIを活用すれば、以下のように新たなビジネスモデルを創出できます。
- カスタマーサポートのAI化
- AIによるツール開発
- AI利活用のコンサルティング
このように、AIの活用が進むと自社の業務改善にとどまらず、顧客体験やサービスの改善や、新たなサービス・製品の提供につながる可能性があります。
市場の変革
生成AIの普及により、市場が大きく変わる可能性があります。例えば、ビジネスモデルの変革により大幅なコストカットを実現すれば、商品の価格が大幅に下がり、業界の常識が覆るかもしれません。
実際にIT業界では、AIを活用することで、従来の3分の1程度のコストでシステムを開発することができるようになっています。
そのほか、技術革新による市場の変革が起きることも考えられます。今後、企業の競争力を維持・向上していくためには、AI活用の推進が必須になるかもしれません。
まとめ|Amazon Qは幅広いビジネス用途に利用できる
Amazonの生成AI「Amazon Q」では、データ分析やコーディング支援、サプライチェーン最適化など、さまざまなビジネス用途に利用できます。料金システムもわかりやすいため、導入にかかるコストも計算しやすいのではないでしょうか。
今後、AIの高度化に伴い、AIを活用している企業とそうでない企業の効率は開いていくと考えられます。企業の競争力を維持・向上するためにも、自社でのAI活用方法を見直してみてはいかがでしょうか。