「データ分析に大きなリソースを割いている」
「データ分析を自動化したいが、方法がわからない」
と考えている方もいるのではないでしょうか。
データは企業の重要な資産といえますが、活用するには高度な分析が必要になる場合もあります。「データ分析」と聞くと専門知識が必要な難しい業務と感じられますが、生成AIを活用すればデータを自動で分析できます。
本記事では、生成AIでデータを分析するメリットや注意点、おすすめのツールを解説します。実例も交えながらデータ分析の手法を解説しますので、ご自身の業務に活かせる方法がないかを考えながら読み進めてみてください。
データ分析を加速させる”生成AI”とは?
生成AIとは、学習データをもとに、創造的な新しいコンテンツを生成するAIです。テキストや画像、音声などのコンテンツを新たに作り出すことができます。
生成AIの性能は飛躍的に向上しており、品質が要求されるビジネスの場面でも活用が進んでいます。これまで人手をかけて行っていた業務を生成AIが代替すれば、省力化や効率化が実現するでしょう。
生成AIを活用したデータ分析の重要性
近年、インターネットやIoT機器の普及により、データが簡単に集められるようになっています。また、機械学習や深層学習を利用した生成AI技術が飛躍的な進歩を遂げており、膨大なデータを解析できるようにもなりました。
このように、現代の技術では、膨大なデータを収集して高度に解析することが可能です。これまで不可能だった予測や分析が可能になり、さまざまな場面で役立てられるようになったため、データ分析の重要性が高まっています。
生成AIの特徴
生成AIは、新たなコンテンツを生成できるという特徴を持っています。これは、異常検知やOCR(光学文字認識)をするAIとは異なる性質です。
AIは大きく「生成AI」と「認識AI」に分けられますが、異常検知やOCRは特定の対象物を「認識」するAIです。一方で、生成AIは画像やテキストなどの新たなコンテンツを「生成」します。
このように、クリエイティブな創作活動ができるAIが「生成AI」と呼ばれています。
生成AIでデータ分析をするメリット
生成AIでデータ分析をするメリットは、以下の4つが実現するためです。
- 非構造化データの処理
- 効率的なデータ分析
- コストの削減
- データクリーニングの自動化
- 分析結果の視覚化
- 新しいアイデアの発見
それぞれの理由や具体的な活用例を解説します。
非構造化データの処理
生成AIを活用すれば、これまで処理が難しかった非構造化データの処理ができるようになります。そもそも非構造化データとは、規則性のないデータのことで、テキストや音声、動画などが挙げられます。対して構造化データには、ExcelやCSVなどが挙げられます。
これまでAIがデータを分析するには、形式化された構造化データが必要でした。しかし、生成AIは非構造化データの内容を認識できるため、テキストや画像、音声ファイルなども処理できるようになりました。
効率的なデータ分析
生成AIは非構造化データを構造化データに変換できるため、データの前処理をする手間が省けます。Excelへの打ち込みやデータを整理する手間が省けるため、高速なデータ分析が実現します。
また、分析以外にも生成AIを活用することで、さらなる効率化が可能です。例えば、紙で実施したアンケート調査をOCR(光学文字認識)を利用して結果を読み取り、生成AIで分析すれば、人が行う作業を大幅に削減できます。
このように、活用次第ではデータの前処理から分析までを効率化し、自動化や省力化を推進することが可能です。
コストの削減
生成AIを活用すれば、データ分析において自動化できる工程があります。生成AIを活用して自動化の工程を増やせば、人が行う業務が減るため人件費の削減につながります。
ただし、データ分析において自動化を推進するには、生成AIにかかるコストが必要です。導入する際には、削減できるコストが初期費用とランニングコストを上回るかどうかを確かめ、損失を被らないように注意しましょう。
データクリーニングの自動化
生成AIを活用すれば、欠陥を持つデータを削除する「データクリーニング」が自動化できます。これにより、欠損値の補完や異常値の検出、データの重複排除などを瞬時に実行できます。
精度の高いデータ分析をするには、データクリーニングが非常に重要です。分析するデータ群の中に欠陥のあるデータが含まれていると、正確な分析ができなくなります。
しかし、膨大なデータから人手で欠陥を見つけるのは、現実的に困難です。生成AIを活用すれば、データクリーニングを迅速に実行できるため、データの量が大きくても欠陥を修正できます。
結果的に、生成AIでデータクリーニングをすることで、データの品質を高め、正しい分析結果を得られやすくなります。
分析結果の視覚化
生成AIは、分析結果をグラフやチャートなどの認識しやすい形式にまとめ、出力することが可能です。分析結果を視覚化することができるため、結果を直感的に認識できるようになります。
結果をまとめる作業が削減できるため、省力化にも役立てることができるでしょう。
新しいアイデアの発見
生成AIは、学習内容から新たな案を生み出すことが可能です。そのため、新しいアイデアや発見などを得ることができます。
これまで多くの業務に活用されてきた認識AIは、画像やテキスト内にある特定の対象物を認識するAIです。すでにあるモノを認識する用途で用いられるため、新たに何かを生み出すクリエイティブな活動はしませんでした。
しかし、生成AIは新たに画像やテキストなどを作り出すことができます。よって、分析に活用すれば、新たなトレンドやパターンを見つけることが可能です。
生成AIでデータ分析をするデメリット
生成AIでデータ分析をすることで多くのメリットを得られますが、利用するデメリットもいくつかあります。
- 結果の一貫性
- 誤差やエラーのリスク
- プライバシーとセキュリティ
それぞれの理由や対策案を解説します。
結果の一貫性
生成AIは統計に基づいて結果を出力するため、内容によっては一貫性のない結果を出力する場合があります。出力された結果が全く正しくないこともあるため、注意が必要です。
経営に関わる重要なデータ分析や、顧客に提出する分析レポートなどは、念のために人が確認した方がよいでしょう。また、生成AIは誤った情報を出力する可能性があることを考慮して、業務に活用する範囲を決めておくと安全です。
誤差やエラーのリスク
生成AIは、予測しない理由で誤差やエラーを起こす可能性があります。そのため、出力結果を検証せずに分析すると、正しい結果が得られないことがあります。
特に、GPTやGeminiなどの大規模言語モデルは計算が苦手です。1桁✕1桁などの単純な計算は正しく処理できますが、4桁✕4桁などの計算は間違えることが多くあります。
データ分析の際には数値を扱う場合が多いですが、結果を全てうのみにせず、ファクトチェックを怠らないようにしましょう。
プライバシーとセキュリティ
生成AIを利用する際には、プライバシーとセキュリティの面で問題が発生する場合があります。特にインターネットに接続して利用するクラウド型の生成AIを利用する場合には、機密情報の流出やプライバシーの侵害に注意しましょう。
例えば、企業内部の機密情報を分析にかけたとき、何らかの方法でデータが盗まれる可能性があります。
予測できない原因でプライバシーやセキュリティに問題が発生することもあるため、原因を完全に排除することは不可能です。そのため、機密情報の入力に関するルールを作るなどの対策を講じるようにしましょう。
生成AIでデータ分析を行うためのステップバイステップガイド
生成AIのデータ分析は、一般的に以下の手順で実施されます。
- データ収集
- データ準備
- 生成AIモデルの選定
- 分析の実行
- 結果の解釈
データ収集
まず、分析に必要なデータを収集します。Webスクレイピングや、IoT機器の導入によりデータを収集します。
データが十分に集められない場合には、政府や自治体が提供するオープンデータを活用するのも一つの手です。データ量を確保して分析精度を高めるためにも、自社に適したオープンデータがないかを確かめてみてください。
データ準備
データの収集が完了すれば、データを分析できる形式に整えます。この際、分析に利用できないデータが多数出ることも考えられます。データ準備によってデータ量が足りなくなれば、再度データを収集しましょう。
また、データ全体に偏りが出ていないかを確認することも重要です。データが恣意的に収集されていた場合、その影響を受けた結果が出力される可能性が高くなります。データが全体として適切かどうかを判断し、バイアスがかかっていれば修正しましょう。
生成AIモデルの選定
分析データが完成し次第、目的に応じた分析能力を持つ生成AIモデルを選定します。分析の手法や目的に応じて選定すべき生成AIモデルは異なります。性質や性能を比較し、最も適した生成AIモデルを選択しましょう。
分析の実行
データと生成AIモデルが確定すれば、実際に分析を行います。
結果の解釈
出力結果を業務に活かすためには、結果を解釈する必要があります。出力結果から導き出される最善策は、必ずしもビジネスにおいて正解とは限りません。今ある人的リソースや資金を踏まえ、合理的な判断を下しましょう。
データ分析に役立つおすすめの生成AIツール
生成AIにもさまざまな用途があるため、全ての生成AIをデータ分析に活用できるわけではありません。ここでは、データ分析に役立つおすすめの生成AIツールを3つ紹介します。
- DataRobot
- H2O.ai
- Alteryx
- RapidMiner
- ChatGPT
- Copilot
- Gemini
DataRobot
DataRobotは、生成AIを用いたデータ分析や数値予測ができる機械学習プラットフォームです。直感的に理解しやすいGUI操作が可能であり、機械学習や生成AIなどの専門知識がない方でも業務に活用できます。
生成AIを活用したさまざまなツールが利用できるため、データ分析以外の用途でも活用が可能です。操作はドラッグアンドドロップで完了するため、高度なプログラミングスキルがなくても、目的に応じた生成AIモデルを構築できます。
H2O.ai
H2Oは、予測を得意とする機械学習プラットフォームです。教師あり学習を用いた売上予測や需要予測などの用途に向いています。具体的には、疾患リスクの解析による来院者数の予測や、顧客離反のリスク分析などが可能です。
H2Oは、金融・製薬・通信・小売などの幅広い業界で活用されています。生成AIモデルの構築に専門知識は不要であり、Webブラウザからの操作が可能なため、比較的簡単に生成AIによるデータ分析が実施できます。
Alteryx
Alteryxは、データの準備や統合、分析から共有までを一気通貫で実施できるデータ分析ツールです。他のツールとの連携性も高いため、DataRobotのような機械学習プラットフォームで用いるデータの準備にも利用できます。
また、コードを入力せずにデータ分析をできるため、利用者が専門的な技術を身に着ける必要はありません。1ユーザーからでも利用できるため、コストを抑えてデータ分析ツールを導入したい場合にも適しています。
RapidMiner
RapidMinerは、機械学習や深層学習などを用いた高度な解析が可能なデータ分析ツールです。ドラッグアンドドロップで操作でき、データ分析ツールを簡単に内製できます。
また、データ連携機能や可視化機能が充実しているため、分析結果の正確な解釈が可能です。10,000行のデータまでであれば無料で利用できるので、導入を検討している方は無料の範囲内で使用感を確かめてみるのもよいでしょう。
ChatGPT
ChatGPTは、OpenAI社が提供する大規模言語モデル(LLM)です。質問への回答や文章執筆などの基本的な言語モデルの機能に加えて、画像や音声といったテキスト以外のコンテンツを分析する機能も持っています。
ChatGPTは言語モデルですが、数値を用いたデータの分析も可能です。例えば、Excelのデータを添付して分析の範囲や観点などを入力すると、指示通りに分析を行います。
”Data Analysis”を用いたデータ分析例
ChatGPTのさまざまな機能が利用できるGTPsでは「Data Analysis」が利用できます。Data Analysisでは名前の通りデータ分析が可能であり、データと条件を指定して質問すると短時間で結果が得られます。
実際に、GPTsでData Analysisを選択して、以下のデータをData Analysisで解析してみます。
ここでは、データを要約するよう指示します。
その結果、データの特徴や意味を分析して、自然言語で説明してくれました。要約を求めるだけで、平均給与や標準偏差といったデータや、具体例まで提示してくれます。
GPTsについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
GPTsとは?便利すぎるChatGPT新機能の使い方、注意点を紹介
Copilot
Copilotとは、Microsoft社が提供する生成AIツールです。主に、WordやExcelなどといったMicrosoft社の製品内を、生成AIの機能で効率化や自動化をサポートします。
Wordでは言語生成モデル、PowerPointでは画像生成モデルが用いられるなど、さまざまな種類のAIが活用されています。Microsoftの製品を多用している企業に向いている生成AIツールです。
Copilotについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
Microsoft 365 Copilot とは?何ができるかや料金、使い方を紹介
Gemini
Geminiとは、グーグル社が提供する生成AIツールです。Copilotと同じくテキストや動画、音声などさまざまなコンテンツに対応した生成AIツールであり、用途は多岐にわたります。
数値以外にもさまざまなコンテンツの解析に対応しているため、画像や音声などの非構造化データの分析にも活用できます。
Geminiについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
Geminiとは?Google開発のAIモデルの使い方、特徴、Ultraの性能などを紹介
生成AIによるデータ分析が役立つ場面
生成AIによるデータ分析は、具体的に以下のような場面で活用できます。
- 見積書の作成
- 採用活動
具体的な活用方法やメリットを解説します。
見積書の作成
見積もりの算出は、サービスの価格を決める重要な業務です。しかし、企業によっては見積もりの技術が確立されていないことや、見積もりに時間がかかるという問題があります。
そこで多くの取引を機械学習させた生成AIが見積もり案を作ることで、短時間かつ専門的な知見なしで見積もりを算出できます。一方、初めから適切な見積もりが出せるとは限らないため、担当者による確認が必要です。
活用次第では、大まかな見積もりを素早く提示できるようになったり、請求の見落としを防いだりできます。
採用活動
採用活動は、企業で実際に働く人材を選定する重要な業務です。採用活動では、データでは判断しきれない要素も見る必要があるため、完全に自動化することは難しいですが、生成AIを活用することで効率化することができます。
例えば、企業の選考・評価基準や採用実績などのデータを学習した生成AIが、求職者が提出したエントリーシートの内容を確認すれば、志望度や辞退可能性などを算出できます。
特に、応募者が多数いる企業には、業務の省力化が見込めます。求職者の氏名をインターネット上のビッグデータで自動検索することもできるため、選考の高度化にもつなげられます。
まとめ|データ分析には生成AIを活用しよう
生成AIでデータを分析することで、効率化や省力化などさまざまなメリットを得られます。しかし、利用方法によってはミスリードや企業秘密の漏洩などのリスクもあるため、利用者が細心の注意を払う必要があります。
今後も、技術進歩によりさらに多くのAIが業務に活用されていくと考えられます。競合他社に後れをとらないよう、自社に活用できるAIの活用方法を考えてみてはいかがでしょうか。