近年、「システム開発の内製化」が企業の注目を集めています。これまで外部ベンダーに依頼していたシステム開発を、自社内で完結させる取り組みです。
従来の外部委託では、開発スピードや柔軟性の低下、システムのブラックボックス化などが課題となっていました。内製化によって、開発スピードが高まるとともに、ナレッジが蓄積されるのが魅力です。
ただし、システム開発の内製化のためには「開発スキル」が求められます。社内にスキルがなく、内製化のハードルとなっている企業も多いことでしょう。
そこで活躍するのが「ローコード開発」です。
この記事では「ローコードを用いてシステム開発を内製化するステップ」について紹介します。「ローコードってなに?」「どうやって社内に導入すべき?」などの疑問を感じている方は、記事を参考にして導入、内製化を推進してみてください。
ローコード開発とは
ローコード開発とは、ソースコードの記述を最小限に抑えてシステムやアプリケーションを開発する方法です。
基本的にはローコード開発ツールの画面上で作業します。これらのツールには、事前に用意された多くの機能があり、これらをドラッグ&ドロップで組み合わせて開発を進められます。
加えて、状況に応じて「コードを書き加える」「外部ツールと連携する」といった作業も可能なので、利用者ごとにカスタマイズできます。
ローコード開発については、以下の記事で詳しく紹介していますので、参考にしてみてください。
システム開発の内製化とは
「システム開発の内製化」とは、企業内のチームのみでシステムを構築することを指します。
従来、システム開発はシステムインテグレーターをはじめとした外部ベンダーに委託するのが一般的でした。これは、企画段階から要件定義、開発、さらには保守と運用までを外部ベンダーに依頼し、定期的な会議を通して自社で進捗を確認する、という方法です。
しかし、最近では企業自身がエンジニアチームを編成し、社内のスタッフだけで開発することが増えています。内製化の主な目的は「急速に変化するビジネス環境に迅速に対応すること」です。
コロナ禍もあり、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉が流行りました。日常生活でのデジタルツールの使用が増え、企業もデータを収集しながら迅速にPDCAサイクルを実行することが求められています。
従来の外部委託方式では、開発・運用・改善のスピードが遅れてしまい、市場の変化に対応できなくなることがあります。
その点、内製化により、自社の知識を活かしながら、運用中に柔軟に機能改善ができます。これによりシステム開発の内製化が各企業で求められるようになりました。
ローコードでシステム開発を内製化すべき理由
システム開発の内製化が進むなか、ローコード開発が求められています。その背景を紹介します。
開発コストの削減
ローコード開発ツールを用いてシステム開発をする場合、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)と呼ばれるUI上で操作することになります。プログラミングに慣れていない方でも直感的に使えるのがメリットです。
ソースコードの記述を最小限に抑えられるため、専門的なプログラマーでなくても構築・実装できます。そのため、企業にとっては人件費を下げられます。
また社内にスキルフルなエンジニアがいない場合でも、採用・教育するコストを下げられるため、各企業が積極的に導入しています。
またインフラ環境の運用・保守はサービス提供者が担います。自社でインフラのメンテナンスをする必要がないため、コストを削減できます。
開発スピードの向上
先述したように、ローコード開発の場合、システム開発の環境構築を自社でおこなう必要がありません。またソースコードの記述も最小限で済むため、開発スピードが高まります。
そのため、プログラミング言語に慣れていない非エンジニアでも開発が可能です。結果として、採用・教育など人材整備にかかる時間や工数も削減できます。
柔軟なシステム開発が可能
ローコード開発ツールは基本的な機能がパッケージングされています。一方で「追加でコーディングする」「外部ツールと連携する」といったカスタマイズも可能です。
そのため「企業が開発したい機能」に合わせてセミカスタマイズしながら開発できます。ニーズをベースとして柔軟にシステム開発ができるため、導入が進んでいます。
開発ノウハウの蓄積
内製化は「ナレッジを自社に貯める」という目的のもと進行されることが多いといえます。
従来の開発手法の場合は、フルでプログラミングをする必要があり「エンジニアだけが理解できる資産」となりがちでした。
一方でローコード開発はGUIを用いるので、非エンジニアでも仕組みを理解しやすいです。「開発のノウハウを社内に貯める」という点でも秀でています。
ローコードでシステム開発を内製化する際の注意点
実際にローコードでシステム開発をする際には注意点もあります。事前に理解したうえで進めましょう。
システム開発の基礎知識が求められる
先述したように、ローコード開発は、基本的なプログラミングやシステム開発の知識が少なくても取り組めるよう設計されています。
一方でシステム開発はプログラミングだけではありません。開発の上流では以下のようなステップが必要です。
- 課題調査
- 課題の特定
- 改善案のリストアップ
- 要件定義
- 必要な人材・コストの定義
- 開発オペレーションの定義
- P/ Lの作成
- スケジューリング・WBS作成 など
こうした開発に関する基礎知識が必要となりますので、あらかじめ人材のスキルセットを確認しておきましょう。
開発人材の採用・育成が必要
事前にローコードの知識を持っておく必要があります。直感的に扱えるGUIがベースとなっていますが、品質の高いシステムを構築するためには、ツールの扱い方を覚えることが必要です。
また複雑な機能を開発する場合、追加でプログラミングをする必要があります。こうした場合は非エンジニアでは対応できません。そのため新たにエンジニアを採用したり、既存のメンバーを育成したりする必要があります。
ルール・レギュレーションを整備しておく
ローコード開発は実装・編集のハードルが低いため、社内の知らないところで業務アプリが開発・編集される可能性があります。こうした変化をドキュメンテーションしていないと、属人化してしまいます。
すると結果的に社内にノウハウが蓄積されず、内製化メリットが薄れてしまうので注意が必要です。事前に必ずルール、レギュレーションをドキュメント化しておきましょう。
ローコードを用いたシステム開発の内製化の進め方
ここではシステムの内製化を進めるためのステップを紹介します。
(外部委託している場合)自社で運用できるまでナレッジを共有してもらう
既に外部委託していて、内製化に切り替える場合は、現状委託先が握っている情報を共有してもらう必要があります。
とはいえ、いきなりすべてを内製化することは難易度が高いです。以下のように段階的に受け渡しを進めていきましょう。
- システム仕様書の共有
- 運用に必要なスキルセットの洗い出し
- 社内人材の育成・採用
- 必要に応じて運用・改善の研修
開発機能の要件定義
いちから開発を進める場合は、まず社内で機能の要件を定める必要があります。そのためには、「課題」と「課題を改善するための機能」を定義します。
社内向け、社外向け問わず、仮想ユーザーのニーズを吸収し、改善するための機能を定めましょう。
また開発のためのリソース、予算、スケジュールなどを確保していきます。このあたりは社内稟議が必要になる部分ですので、説得力のある資料を作成しながらステークホルダーに説明をしていきましょう。
こうした前準備が完了したら、最終的に「要件」を定義します。要件は、今後開発を進めるなかで指針となるものです。曖昧な書き方ではなく、具体的かつ明快に記しておきましょう。
内部・外部向けの設計書の作成
要件定義書をもとに基本設計や詳細設計を定めていきます。ローコードの場合は、基本的な設計書は提供ベンダー側で定められているので、新たに作成する必要はありません。
ただし、実際は既存のパッケージだけでなく、追加のカスタマイズが必要になるケースが多いです。そのため、追加機能や連携したい外部ツールを含めて、設計書を作成する必要があります。
構築
基本的にはGUIを用いて構築をします。追加機能によってカスタマイズする場合は、その都度プログラミングをします。
この時に構築するエンジニアだけでなく、プロダクトマネジャーを立てておきましょう。構築に関するスケジュール・工数の観察、また変更がある場合の最終意思決定を下すポジションです。
プロダクトマネジャーを設定しておくことでプロジェクトの進捗がスムーズになります。
リリース前の検証
構築が完了した場合、リリース前に必ず検証をおこないます。「機能が想定通り動作するか」「想定ユーザーのニーズを満たせるか」をテストしましょう。
一般的なテストには以下の種類があります。
名称 | 詳細 |
単体テスト | モジュール単体の動作に関するテスト |
結合テスト | 複数のモジュールの組み合わせに関するテスト |
総合テスト | システム全体の動作に関するテスト |
運用テスト | 想定ユーザーに使ってもらうテスト |
ただしローコード開発ツールの場合、単体テストと結合テストは提供ベンダー側の機能として備わっているため、開発者がおこなう必要はありません。
総合テスト・運用テストでは「きちんと動作するか」はもちろんのこと「この機能がユーザーの悩みを解決できるか」「使い勝手はどうか」といった点も確認しましょう。
リリース・改善
各種テストを突破したら、いよいよリリースとなります。リリースした後は「まったくメンテナンスせずにスムーズに運用できる」という場面は少ないです。何らかのバグが発生したり、ユーザーから改善要望が出てきます。
この際に「どう改善要望をキャッチアップするか」「どう改善案の優先度を決めるか」「誰が改善を担当するか」を定めておきましょう。決めておくことで、慌てることなくキャッチアップと改善ができます。
おすすめローコード開発ツール
おすすめのローコード開発ツールは以下です。
ツール名 | 提供元の企業 |
PowerApps | Microsoft社 |
Salesforce Lightning Platform | Salesforce社 |
Kintone | サイボウズ株式会社 |
intra-mart | 株式会社NTTデータ・イントラマート |
楽々Framework3 | 住友電工情報システム株式会社 |
WebPerformer Cloud | キヤノンITソリューションズ株式会社 |
Appsuite | 株式会社ネオジャパン |
OutSystems | OutSystems社 |
SPIRAL | 株式会社パイプドビッツ |
HCL Domino | HCLテクノロジーズ社 |
Magic xpa Application Platform | マジックソフトウェア・ジャパン株式会社 |
GeneXus | GeneXus S.A.社 |
ツールごとに特性があります。自社で開発したい機能に合わせて、取り入れながら開発を進めましょう。
各ツールの性能や価格など、詳細な内容については以下の記事で紹介しています。参考にしてみてください。
まとめ
今回はローコードを用いたシステム開発の内製化について紹介しました。内製化は昨今求められていますが、専門的なプログラミングスキルなどが障壁になるケースは多いです。そんななか、ローコードを活用することで、外部委託依存から脱却しやすくなります。
もし「どのローコード開発ツールが適しているか分からない」といった悩みをお持ちの情報システム部などの方は、ぜひファンリピートにご相談ください。
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