この世界中で注目を集めるノーコード市場に誰もが知る世界的企業であるGoogleが参入したことをご存知でしょうか?
近年、プログラミング不要で誰でもシステム開発ができるノーコードが大きな注目を集めています。
2020年1月にGoogleはアメリカのノーコードアプリ開発を手がけるスタートアップ企業である「AppSheet」社を買収し、本格的にノーコード市場に参入したのです。
Googleが運営するAppSheetは豊富な機能を提供しており、Googleが提供する各種サービスとの連携はもちろん、機械学習機能までプログラミングなしで実現できる高機能なノーコードツールです。
しかし、AppSheetを活用するために必要なドキュメントや教育コンテンツは全て英語で作成されています。
高機能なツールであるため使いこなすことができれば、業務改革を実現するアプリを開発することができますが、日本人が使いこなすために必要な情報がまだまだ少ないのが現状です。
そこで、この記事では、ノーコードツール・ローコードツールを用いたシステム開発サービスを運営し、数多くのノーコードシステム開発を成功させてきた弊社が、AppSheetの使い方と特徴を画像を使ってわかりやすく解説していきます。
AppSheetとは?
ノーコードツールの活用前にはツールが持つ特徴を理解して、活用用途に適したツールであるかを判断する必要があります。
ここではGoogleが開発・運営するAppSheetのツール特徴を解説していきます。
- Googleが開発・運営するノーコードツール
- Googleの各種サービスと連携可能
- 機械学習機能も実装可能
Googleが開発・運営するノーコードツール
AppSheetはGoogleが2020年1月より開発・運営をしているノーコードツールです。
冒頭で説明したようにGoogleはAppSheetをゼロから開発したのではなく、スタートアップである「AppSheet」社から買収して、手に入れたノーコードツールなのです。
Googleが独自開発したノーコードツール「App Maker」を2018年から提供していましたが、わずか2年で自社開発したApp Makerを終了し、自社ノーコードツールをAppSheetに完全移行した経緯があります。
開発資金を投じて自社開発したサービスを停止し、外部のスタートアップ企業を買収してまでノーコード市場に参入したGoogleの本気度の高さが伺えます。
また、GoogleはAppSheetに加えて、プロジェクト管理を目的とした新たなノーコードツール「Tables」を発表しており、ノーコード市場への投資を加速させています。
Googleの各種サービスと連携可能
AppSheetはGmail、Googleドライブ、スプレッドシートなどの「Google Workspace」(旧:G Suite)内の各種サービスと連携することが可能です。
AppSheetはGoogleが運営をする各種サービスと密接な関係を持っており、簡単にデータ連携やツール同士を活用した自動化の仕組みを構築することが可能です。
ノーコードツールの中にはGoogleスプレッドシートをデータソースとして活用するツールが多く存在しますが、スプレッドシート以外のGoogleドライブやGmailなどとの連携を基本機能で提供しているツールは存在しません。
他のノーコードツールでGoogleWorkspaceの各種サービスと連携する場合はサービス間の連携を構築する「Zapier」などの連携ツールを間に挟む必要があり、開発に手間がかかります。
以下がAppSheetを活用した連携例です。
- Gmail:所定日時にデータレポートを担当者に自動送信する
- Googleカレンダー:アプリで作成した予定をGoogleカレンダーに自動作成
- Googleドライブ:アプリに保存した画像やファイルをドライブに自動保存
日本企業のほとんどがGoogleWorkspaceのサービスを活用しているため、これらのツールと連携可能であるAppSheetは企業における業務効率化アプリ開発に最適なノーコードツールなのです。
機械学習機能も実装可能
AppSheetを活用すれば、Googleがクラウド上で提供しているアルゴリズムやデータモデルなどの機械学習の仕組みを簡単にアプリに組み込むことが可能です。
2020年10月現在、AppSheet以外のノーコードツールで機械学習の機能を提供するツールは存在しません。
通常、機械学習をアプリに組み込む場合は難解なコーディングを行い、システムがデータから学習を実行し、その結果からデータの分類や予測を行う仕組みを構築する必要があります。
しかし、AppSheetでは機械学習を行うための仕組みをノーコードで実現・提供しており、ユーザーはいくつかの設定をマウス操作で行うだけでアプリに機械学習を実装することが可能です。
現在、AppSheetではベータ版の機械学習機能が公開されていますが、活用用途としてはOCR(光学文字認識)によるデータ入力の業務効率化になります。
機械学習機能が搭載されたアプリで名刺や帳票を読み取ることで、記載されている文字情報をアプリが自動で認識し、データで取り込むことが可能です。
AppSheetの使い方
ここまで、AppSheetのノーコードツールとしての特徴を解説してきました。
Googleが運営するノーコードツールであることからセキュリティーや今後の開発体制もさることながら、豊富な機能とデータ連携先によって、ユーザーがアイディアを形にする際に必要となる要素の全てを網羅したツールであると言えます。
ここでは実際のAppSheetの使い方を解説していきます。
- 開発環境構築
- データベース設定
- 画面開発
開発環境構築
AppSheetで環境構築する場合は大きく分けて3つの方法が存在します。
ここではゼロからアプリを開発する場合の方法とサンプルアプリを活用して開発する場合の2つの方法を紹介していきます。
まず、開発環境を構築する場合はAppSheetの管理画面にログインし、Quick Startの「Make a new app」をクリックします。
「Make a new app」をクリックすると、モーダル画面が表示されます。
モーダル画面には以下の3つのボタンが表示されます。
- Start with your own data
- Start with an idea
- Start with a sample app
「Start with your own data」はユーザーが所有するスプレッドシートからアプリを構築する場合に活用し、「Start with a sample app」はAppSheetが提供しているサンプルアプリをコピーする場合に活用します。
今回はユーザー自身が所有するスプレッドシート活用するので、「Start with your own data」を選択します。
アプリの開発方法を選択すると、アプリの詳細画面設定に遷移します。
アプリ詳細画面ではアプリの名称とアプリカテゴリーを入力します。
AppSheetの仕様上、現在は英語でのアプリ名しか登録できない点にご注意ください。
カテゴリーに関しては25種類のカテゴリーの中から開発するアプリのカテゴリーを選択しますが、このカテゴリーの選択は開発するアプリに影響することはないので、用途に最も近しいカテゴリーを選び、もし近しい用途がなければOtherを選択すれば問題ありません。
アプリ名称とカテゴリーの選択後は「Choose your data」をクリックすると、アプリデータソースの選択になります。
アプリデータソース選択画面ではユーザーのGoogle Driveに保存されているスプレッドシートが一覧表示されているので、アプリ開発に活用したいデータソースの選択が必要になります。
データソースの選択が完了すると、「Select」ボタンがクリック可能となり、クリックすると、Appsheetが自動で開発環境を構築してくれます。
データベース設定
開発環境の構築が完了すると、次の工程はデータソースとなったスプレッドシートの各カラムのデータ型の設定です。
AppSheetは選択したデータソースの各カラムの情報から適切なデータ型を選択してくれますが、完璧に設定してくれるわけではないので、ユーザー自身がアプリ上の入力方法に合わせて、設定を変更する必要があります。
データベースのカラムを変更するには、開発環境からデータカラム設定画面に移動する必要があります。
まず、開発環境の左側に配置されている開発メニューから「Data」を選択します。
Dataではアプリに携わるデータベースの各種設定が可能になるので、アプリ開発の中でデータに関する設定を行う際に活用します。
Dataをクリックすると、データベース設定画面に遷移しますので、画面上部に配置された設定メニューより「Columns」を選択します。
Columnsでは文字通りデータベースのカラム設定を行います。
左側に表示されている「NAME」欄はデータベースのカラム名が反映されており、NAMEの右側に表示されているのがデータ型です。
デフォルトではAppSheetが自動判定したデータ型が表示されていますが、意図したデータ型でない場合は自由に変更可能です。
なお、AppSheetは35種類の豊富なデータ型が用意されており、全て選択肢形式で簡単に設定できるので、データベースの仕組みがわからない方でも簡単に設定できるのが嬉しい点です。
画面開発
AppSheetの操作画面は予めツール側で用意された11個の画面タイプからアプリに最適な画面を選択するだけで実装が完了します。
AppSheetは他のノーコードツールのように画面パーツを1つずつ選択して、画面を作り込む手間はありません。
まず、開発環境の左側に配置されている開発メニューから「UX」を選択します。
UXをクリックすると、UX設定画面に遷移しますので、「Primary Views」より変更したいデータソース画面をクリックします。
表示された画面詳細設定画面の「View tipe」部分に表示されている11個のアイコンが設定できる画面の種類で変更したいアイコンをクリックすることで右側のプレビュー画面に変更結果が反映されます。
他のツールのようにオリジナリティある画面を作ることはできませんが、選択するだけで画面が自動で完成する手軽さは魅力的です。
業務系のアプリを開発する場合は画面のオリジナリティーよりもシンプルな使いやすさ(UX)を求められるので、AppSheetは業務系アプリの開発に適していると言えます。
【まとめ】AppSheetを使えば社内のスプレッドシート業務を簡単にシステム化できる
この記事ではGoogleが提供するノーコードツール「AppSheet」の使い方と特徴を画像を使って解説してきました。
AppSheetは豊富なデータ連携機能の他にワークフローや機械学習など他のツールとは一線を画す高機能なノーコードツールとなっています。
高機能なツールと聞くと「使いこなすのが大変」「設定が難しい」と及び腰になる方が多いかと思いますが、AppSheetは高機能ながらもユーザーにとって使いやすいUXを提供しているのです。
ノーコードツールを利用する多くの方が悩むであろう英語ドキュメントの問題に関しても、AppSheetは公式パートナーによって日本人向けの開発コミュニティが用意されており、ユーザーのサポートまで徹底されています。
ノーコードツールを運営する企業の多くがベンチャー企業である中、世界を代表するGoogleが開発・運営を手掛けるAppSheetは今後、ノーコードツール市場で大きな注目を集めることでしょう。