システム開発をする際、ITに関する技術的な知識だけでなく、開発したシステムを運用してビジネスを実現するための知識が必要となります。
ITとビジネスの両面に精通した専門家がITコーディネータであり、DX推進をはじめITを活用したビジネスが主流となった現在、活躍の場が広がっています。
本記事では、ITコーディネータがシステム開発においてどのような役割を担っているか詳しく解説します。
ITコーディネータとは?
ITコーディネータは企業がITを活用したビジネスを進める際に、経営視点でIT戦略の立案から実行までを支援する専門家です。
2001年に経済産業省(当時は通商産業省)の推進により創設された特定非営利活動法人「ITコーディネータ協会(https://www.itc.or.jp/)」に認定された資格保有者を指します。
ITは現在のビジネス環境において不可欠ですが、ITとビジネスの両方の分野に精通した人材は希少であり、将来性のある資格です。特に、DX推進が求められる企業において、ITとビジネスの両面から自社にとってベストな経営戦略を描くことは経営を左右する大きな課題です。
ITコーディネータの役割は、今後の企業経営の中枢を担う人材として注目が集まっています。
ITコーディネータの業務内容とシステム開発での役割
ITコーディネータは次のような業務に携わることが多いです。
ITを活用した経営戦略策定
ITコーディネータの勤務先企業または顧客となるクライアント企業の経営戦略策定を支援する業務です。
まず、経営者の描く将来像や中長期の経営目標を把握するとともに、現状の業務プロセスを理解します。その上で、目標と現状のギャップを読み取り、ITを用いて支援できる内容を検討し、具体的な経営戦略に落とし込みます。
このとき、ITはあくまで戦略を実行するためのツールであることを踏まえ、経営視点でいかに目標を達成できるかを考えます。
ITコーディネータは自身の知見に基づいて経営課題をITで解決する方法を導き出した上で、その方法を実現する手順の策定を求められます。また、クライアント企業の業界特有のドメイン知識も身に付けている場合、業界内の競合企業に先んじてIT化を進めることが可能です。
業界の新たなスタンダードを構築することにより、他の企業と圧倒的な差別化に成功したビジネスを実現できるでしょう。
IT導入の推進
経営戦略が策定できたら、実際にその戦略を実現するためのIT導入を進めていきます。
IT導入におけるITコーディネータの役割は、経営者層に対してITの知識を伝達したり運用アドバイスをするだけではありません。経営者層とともに目指すべきITシステムの構想を描き、システム開発プロジェクトの推進を主導する立場でもあるのです。
また、経営戦略の中身によっては、ITを用いた業務改善にとどまらず、ビジネスモデル刷新や新規事業の企画といった経営の要所に携わることもあります。
ITと経営両面のエキスパートの立場から、企業にとって最も有効な施策を考案し、関係者を巻き込んで戦略実行を推進することが求められます。
IT導入後のサポート
経営戦略を実現できる段階までIT化を進められたら、導入したシステムのメンテナンスやサポート対応も必要になります。
ITコーディネータの支援を受けてIT化を実現できた企業でも、ITの専門家が十分に揃っていないケースがあります。このような場合、ITコーディネータが社内のIT人材の教育役を担うこともあります。
自社内に情報システム部門を有する大企業の場合は、ITシステムの運用経験のある人材がいます。一方、多くの中小企業ではITシステムの構築や管理ができる人材は少ない状況です。
企業が自律的にIT化を進め、より大きな経営目標を達成できるように伴走することも、ITコーディネータに求められる役割の一つです。
企業のITに関する強みと弱みを理解し、経営視点で最適なIT運用環境の構築を支援する必要があります。
ITコーディネータに求められる専門性
ITコーディネータには、次のような幅広い領域の知識が求められます。
ビジネス領域の専門性
ビジネス面に関しては経営戦略・マーケティング・ファイナンスなど企業の経営活動全般に関する知識が必要です。
リーダーシップや人材マネジメント、法務などの分野で経営者が持つべき考え方を身につけていると幅広い視野から課題解決に貢献できます。
MBA(経営学修士)で求められるような広範な知識は必要ではありませんが、実際に経営上の意思決定を行うような多様な経験があることが望ましいです。
IT領域の専門性
ITに関してはIT資源・ITシステム設計・システム開発マネジメントなど、ITシステム導入や活用に関する知識が求められます。ITの専門家として、設計されたシステムを実装する際に必要となるIT資源の調達知識やプログラミングの知識と経験が重要です。
更に、IT戦略やITシステムの構想を立案できるようなマクロ視点の知識と経験も、ビジネスとの関わりが大きく重視される領域です。
システム開発プロジェクトにおいて、プロジェクトマネージャやチームリーダーの経験があると更なる強みになります。
その他の専門性
ITコーディネータには、ビジネスとITの専門知識に加えて、高度なコミュニケーション能力も求められます。IT導入においては、経営者層と実際のビジネス現場で業務を行う各部門の責任者との橋渡し役になる必要があり、各部門のIT化に対する障壁を取り除く必要があるためです。
また、IT活用が必須となった現代の企業においては、ITコーディネータが独立して個人で仕事を請け負うだけでなく、所属する社内でも活躍の場があります。IT知識やスキルに乏しい経営企画部門と、経営視点が弱い情報システム部門の接点となる人材が求められているからです。
将来的には、ITを活用できる経営コンサルタントとして経営のより深い領域での支援を行うキャリアパスも考えられます。
ITコーディネータになるには
経済産業省が推進する「ITコーディネータ資格」を取得するためには試験と研修の両方の条件を満たさなければなりません。
具体的には、年に3回実施される座学試験(ITC試験)への合格および6日間の集合研修とe-learningを組み合わせたケース研修を修了する必要があります。
さらに毎年の資格更新が必要となっており、継続的な学習や実務経験を積む一方で、フォローアップ研修を3年間で3講座受講しなければなりません。
資格を取得して満足せず、意欲的に最新の知見を学び続けることが必要です。さらに、業務経験を積み重ねて独自の強みを身に付けることも求められます。
企業のビジネスとITの両方に関心があり、日々情報収集をするなど継続的な学習に意欲のある方には挑戦しがいのある資格です。
まとめ
ITコーディネータは、ITエンジニアだけではフォローが難しい経営的な領域にも貢献できる専門家です。
本記事の内容を参考にして、自社にとってITコーディネータがどのように活躍できるか、自分自身がITコーディネータの役割を担えそうか、ぜひ確認してみてください。
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