システム開発は上司部下の関係が固定された日常の業務とは異なり、複数のメンバーがそれぞれ異なる組織から参加してゴールを目指して活動します。
このとき、メンバーがどんな業務を担当し、担当した業務に関して誰の指示やチェックを受けるのか厳密に決めておかないと、作業の重複や責任範囲の誤解が生じます。
体制図はプロジェクトを進めるメンバーの役割分担や指揮命令系統を視覚的にわかりやすく示したドキュメントです。プロジェクト進行中の進捗の遅れやチェック漏れを避けるために用います。
本記事では、システム開発のマネジメントを円滑に進めるために大切な体制図について、その目的と重要性や作成の流れやポイントについて詳しく説明します。
体制図とは?
体制図とは、ステークホルダーの役割と指揮命令系統を関係者に明示するために作成するドキュメントです。具体的には、プロジェクトに参加するチームの責任者およびメンバーをピラミッドのような階層構造で記したものです。
階層の最上位にはプロジェクト全体の統括者としてプロジェクトオーナーが記載されます。その下層には責任者であるプロジェクトマネージャを配置し、その下層にプロジェクト推進に必要なチームがぶら下がる形で記載します。
一般的には、プロジェクト計画を立てるタイミングでプロジェクトマネージャが作成します。プロジェクトのキックオフ・ミーティングの際にステークホルダーに対して内容を説明します。
このとき、体制図が果たす役割と、プロジェクト実行中のメンテナンス方法も説明します。関係者全員に体制図の重要性を認識してもらい、運用が形骸化しないように気をつけましょう。
参考:https://www.ipa.go.jp/sec/softwareengineering/tool/ep/ep1.html
体制図の重要性
システム開発に見られるような複数チームで実行されるプロジェクトの場合、体制図を用いてチームの業務担当や責任範囲をはっきりさせることが重要です。
対象となる課題の責任範囲が曖昧になることを避けられ、誰も手をつけないタスクが残るといったトラブルの種が発生しづらくなります。体制図はただ単に関係者を列挙したドキュメントではなく、プロジェクトの円滑な推進をサポートするためのツールと言えます。
また、担当者が小さなトラブルの対処を後回しにしたことが後になって問題として表面化し、プロジェクトが炎上するケースもあります。
体制図を作成して発生した課題に対応する責任範囲を明示しておくことは、メンバーがすぐにトラブルに対応できる環境を整えるという観点で非常に重要です。
体制図の作成ステップ
体制図を作成する手順は以下のステップで進めます。
プロジェクトの目的を決める
最初にプロジェクト全体の目的を決めると共に、その目的を達成するために必須となるプロセスの評価指数としてKPIを決めます。
KPIはゴールを達成する中間指標として計測可能な目標数値を設定し、プロジェクトの進捗度合いの評価に用います。
業務範囲を決める
プロジェクトのKPIとして設定した数値目標を達成するために必要な業務範囲を決めます。
プロジェクトによって業務範囲は異なりますが、システム開発を例とすると対象システムの設計・実装・テスト・品質管理・運用などが含まれます。
チームの役割を決める
目標を達成するために必要なチーム構成を決めます。
システム開発の場合に必要なチームは、バックエンド開発・フロントエンド開発・UX/UI担当などであり、それぞれのチームの業務範囲も決めておきます。
参加メンバーを決める
各チームに所属するメンバーの業務範囲と指揮命令系統を決めます。
プロジェクトには多くの不確定要素があるため、メンバーは業務の専門知識だけでなく、目的達成に向けて関係者と協力して作業を進める協調性や自主性が求められます。チームの構成メンバーのスキルや経験が不十分でないか事前に検討し、選定します。
上記のステップを進めることにより、体制図を構成する要素は決まります。最後に、これらの要素を階層図に落とし込んで体制図を完成させます。
体制図を作成する上で気をつけるポイント
体制図を作成する際は以下のポイントを意識しましょう。
メンバーの役割を明確にする
メンバーが自分の担当する業務範囲を理解できるように、業務内容を具体的に記述しておく必要があります。
例えば運用や管理といった業務がある場合、見る人によって解釈が異なる可能性があるため、目的と作業内容がわかるように記述します。
プロジェクトの規模が大きく参加する関係者が多い場合は、体制図とは別の資料としてチームとメンバーの業務範囲を表形式で整理しておくのもおすすめです。
曖昧な記述を避けて簡潔に書く
体制図はステークホルダー全員が目にする資料ですので、記載されている内容は誰が見ても誤解がないように配慮する必要があります。特にプロジェクトの規模が大きくなるとチームの数が増えるため、役割分担の把握が難しくなる傾向にあります。
できるだけ最低限の情報に絞った体制図を作成し、関係者が全体像を理解しやすくなる工夫をしましょう。
指揮命令系統を一本化する
連絡や報告の系統が混乱するのを避けるため、指揮命令系統が枝分かれしないように注意する必要があります。
例えば、あるチームに対して複数のチームやリーダーから指示が下されるような状況になると、現場のメンバーが作業の優先順位をつけられなくなってしまいます。
指揮命令系統は体制図で一本にまとめておき、誰の指示を受ければよいか誤解が生じないようにしましょう。
状況変化に応じて修正する
プロジェクト開始時に体制図を作成した場合、プロジェクトの進行に応じて適切にメンテナンスしておくことが重要です。プロジェクトを進めるうちに、新たな目的と業務範囲が設定されたチームが追加されたりメンバーが入れ替わるケースもあります。
体制図を定期的にアップデートして最新の状況がわかるように配慮します。
体制図に示された状況と現場の実態が異なると、責任の所在が曖昧になりマネジメントに悪影響が生じかねません。体制図は定期的に見直して実態と乖離がないことを確認しておきましょう。
まとめ
システム開発において、参加するメンバーの業務範囲を定義してプロジェクトを円滑に運営するために体制図は重要なドキュメントです。
システム開発の効率低下を防ぐためにも、本記事の内容を参考にして体制図の作成に取り組んでみてください。
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