AppSheet、PowerAppsともに業務アプリやシステムをサクッと開発できる素晴らしいツールです。
AppSheetであればGoogle Workspace、PowerAppsだとMicrosoft 365を導入していれば使えますが、そもそもどちらの方が優秀な開発ツールなの?という疑問が生まれます。
本記事では両者の特徴や使い勝手などを解説します。導入を検討中の方はぜひご覧ください。
AppSheetとは
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AppSheetは、Google Workspace(旧G Suite)のユーザーであれば、プログラミングの専門知識がなくても、業務に必要なアプリを自分で作れる、ローコード・ノーコード開発ツールです。
スプレッドシート内のデータから10秒くらいで大まかなアプリ画面を作成してくれますし、機能を追加したり細かな調整だって簡単にできます。
初めてアプリを作る人でもほんの少し使い方を学ぶだけで作成できるので、非エンジニアでも業務アプリが作成可能。
PowerAppsとは
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PowerAppsは、ローコードでアプリ開発を実現するプラットフォームです。ローコードとは、わずかなコーディングだけでシステムの設計・構築をする手法を指します。
PowerAppsでは、基本的にドラッグ&ドロップ操作で設計や開発ができるため、プログラミングの経験や専門知識がない方でも、手軽に業務に役立つアプリを作ることが可能です。
開発したアプリはWebブラウザだけでなく、モバイルデバイスでも利用できます。これにより、ビジネスニーズに合わせてカスタマイズが可能です。
その他、PowerAppsは次のような特徴があります。
- 様々なデータソースへの接続
- データベースを使用したデータの一元管理
- Office 365、Power BI、Power AutomateなどMicrosoft製品群との統合
- エンタープライズレベルの強固なセキュリティ体制
- 複雑なビジネスプロセスに対応する高い拡張性
また、PowerAppsには主に2種類の設計方法があり、それぞれ異なる特徴があります。
設計方法 | 概要 |
キャンバスアプリ | プログラミング言語を使用せずに、キャンバスに必要な要素を配置してアプリを構築する方法 |
モデル駆動型アプリ | Microsoft Dataverseに存在するデータをもとに、アプリデザイナーツールでコンポーネントを追加し、アプリを構築する方法 |
Appsheet・PowerAppsそれぞれの特徴
比較項目 | AppSheet | PowerApps |
データ連携 | Google Workspace (スプレッドシート等) に強み | Microsoft 365 + 多種多様なデータソースに対応 |
開発の容易さ | スプレッドシート感覚で直感的、初心者向け | 多機能で本格的、学習コストやや高め |
テンプレート | 豊富 (目的別) | 充実 (業務プロセス別) |
カスタマイズ性 | シンプルで実用的、ノーコード中心 | 高度なカスタマイズ可能、ローコードにも対応 |
料金プラン | ユーザー課金型、無料プランあり | アプリ/ユーザー課金型、エンタープライズ向けプランも充実 |
ターゲットユーザー | Google Workspaceユーザー、中小企業、現場部門 | Microsoft 365ユーザー、エンタープライズ、IT部門 |
インターフェース | 直感的でシンプル | 多機能で本格的 |
おすすめポイント | 手軽さ、スピード、Google連携 | 高度な機能、カスタマイズ性、Microsoft連携 |
データ連携
AppSheet:Google Workspaceとの連携が得意
- Googleスプレッドシート、Google Workspace (ドキュメント、カレンダー、ドライブなど) との連携が非常にスムーズです。
- 日常的にGoogle Workspaceを使い慣れているチームであれば、データ連携で困ることはまずない でしょう。
PowerApps:Microsoft 365連携が得意
- SharePointリスト、Excel Online、Dataverseなど、Microsoft 365のデータソースとの連携は当然得意です。
- さらに、SQL Server、Salesforce、Dynamics 365、クラウドストレージ、Web APIなど、非常に幅広いデータソース に接続できます。
ポイント:普段、どんなデータソースを利用しているか
- Google Workspace中心なら → AppSheet
- Microsoft 365中心、または多様なデータソースと連携したいなら → PowerApps
開発の容易さ・使いやすさ
AppSheet:スプシから簡単にアプリが作れる
- 「スプレッドシートが扱えればアプリが作れる」 と言われるほど、直感的で分かりやすいインターフェースです。
- ドラッグ&ドロップ操作や簡単な数式入力で、初心者でも迷わずアプリ開発 を進められます。
PowerApps:高機能ゆえに学習コストはやや高め
- AppSheetに比べると、開発画面は多機能で、最初は少し複雑に感じるかもしれません。
- しかし、Power Platform の一部として、他のツール(Power Automate, Power BIなど)との連携機能も豊富で、本格的な業務システム を作り込むことが可能です。
ポイント:どんなアプリを作りたいか
- ノーコード開発初心者、まずは簡単なアプリから試したい → AppSheet
- ITスキルに自信あり、複雑な業務アプリや本格的なシステム開発に挑戦したい → PowerApps
テンプレート・サンプルアプリ
AppSheet:
- 「在庫管理」「顧客管理」「イベント管理」 など、様々な用途に合わせたテンプレートが豊富に用意されています。
- テンプレートをベースに、自社の業務に合わせてカスタマイズ することで、開発時間を大幅に短縮できます。
PowerApps:
- こちらも、「資産管理」「ヘルプデスク」「タスク管理」 など、業務効率化に役立つテンプレートが充実しています。
- 業種・業界別のテンプレート も用意されており、より自社のニーズに合ったアプリを見つけやすいでしょう。
ポイント:どんな種類のアプリを開発したいか
- 作りたいアプリのイメージが明確、すぐに使えそうなテンプレートを探したい → AppSheet
- 業務プロセス全体を効率化したい、テンプレートを参考にしながらカスタマイズしたい → PowerApps
カスタマイズ性・拡張性
AppSheet:
- ノーコードに特化しており、シンプルで実用的なアプリをスピーディーに開発 するのに向いています。
- 高度なカスタマイズはやや苦手ですが、基本的な業務アプリであれば十分 な機能を備えています。
PowerApps:
- ローコード開発にも対応しており、より自由度の高いカスタマイズ が可能です。
- 複雑な業務ロジック を組み込んだり、独自のUI/UX を実現したり、外部システムとの連携 を強化したりと、拡張性が高いのが魅力です。
ポイント:アプリにどこまでのカスタマイズ性・拡張性を求めるか
- シンプルな業務アプリで十分、スピード重視 → AppSheet
- 複雑な業務ロジックを実装したい、デザインにもこだわりたい、将来的な拡張も視野に入れたい → PowerApps
料金プラン:無料プラン or 有料プラン?
AppSheet:
- 無料プラン があり、少人数での利用や、まずは試してみたい という場合に最適です。
- 有料プランはユーザー課金 で、使った分だけ費用がかかるため、中小規模の企業 や 部門単位での導入 に向いています。
PowerApps:
- 無料プランはありません。
- 有料プランはアプリ課金 と ユーザー課金 の2種類があり、アプリの利用頻度やユーザー数 によって最適なプランを選べます。
- エンタープライズ向けのプラン も充実しており、大規模な組織 での利用にも適しています。
ポイント:予算は? 利用ユーザー数は? アプリの数は?
- まずは無料で試したい、少人数で利用したい、費用を抑えたい → AppSheet
- 本格的な業務利用を想定している、ユーザー数が多い、複数のアプリを開発したい → PowerApps
インターフェース比較:画面で見る違い
百聞は一見に如かず。実際にAppSheetとPowerAppsの開発画面とアプリ画面を見て、インターフェースの違いを比較してみましょう。
AppSheet:直感的で分かりやすい操作画面
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AppSheetはノーコードであれこれ操作してアプリを作成します。使いたい素材をドラッグアンドドロップして組み立てるのでコードを書く場面はほぼありません。
- ドラッグ&ドロップ中心の操作: UI要素(ボタン、テキストボックス、画像など)は、ドラッグ&ドロップで配置できます。直感的な操作で画面デザインを作成できます。
- ビジュアルな数式エディタ: 複雑な処理を記述する数式エディタも、関数がカテゴリごとに整理されており、パラメータも選択式になっているなど、プログラミング経験がない人でも比較的容易 に扱えるように工夫されています。
- プレビュー画面との連携: 開発画面とプレビュー画面が連動しており、変更を加えるとリアルタイムにプレビュー画面に反映されます。試行錯誤しながら開発を進めやすい のが特徴です。
PowerApps:多機能で本格的な「開発環境」
PowerApppsはローコード開発に分類されるツールで、多少コードを書く場面は出てきますがその分、AppSheetより自由度の高い開発が可能です。
- リボンメニューと豊富なオプション: 画面上部にはリボンメニューが配置され、様々な機能やオプションが用意されています。細かく設定を調整できる反面、最初はどこに何があるか戸惑うかもしれません。
- キャンバスアプリとモデル駆動型アプリ: PowerAppsには、自由なレイアウトで画面を作成できる「キャンバスアプリ」と、データモデルに基づいて自動的に画面が生成される「モデル駆動型アプリ」の2種類があります。作りたいアプリの種類によって開発スタイルが異なります。
- 関数や数式の記述: 複雑な処理やカスタマイズを行うには、Power Fxという数式言語を記述する必要があります。AppSheetよりもプログラミング的な知識が求められる 場面が多くなります。
- Power Platformとの連携: Power AutomateやPower BIなど、Power Platformの他のツールとの連携機能が豊富です。高度な業務システムを構築 するための機能が充実しています。
どちらが良い?という疑問に対しての弊社の提案
過去に、株式会社ファンリピート(以下、弊社)からは、株式会社A様向けに2つのシステム構成案をご提案しています。
Google Workspace版、PowerPlatform版のシステム構成案です。検討の材料になると嬉しいです。
Power Platform版のシステム構成案
- 概要: Shopify Plus(B2B向けテーマ「Trade」)とPower Platformを組み合わせたシステム構成です。
- システム構成図:
graph LR
A[卸先・直営店舗・ユーザ] -- B2B注文 --> B[Shopify Plus/B2Bサイト・Tr
B -- 在庫・受注情報送信 --> C[Shopify Flow & Webhooks]
C -- データ同期 --> D[Cloud SQL/マスターデータ]
D -- データソース --> E[AppSheet/在庫管理アプリ]
E -- データ更新 --> D
D-- 在庫更新 --> B
E-- レポート出力 --> F[Looker Stusio/分析・可視化]
- 特徴:
- Power Platformのデータ連携機能(Power Automate)を活用し、Shopify Plusと社内システム(Cloud SQL)を連携させます。
- 在庫管理や受注管理などの業務アプリをPower Appsで構築します。
- データ分析基盤としてLooker Studioを活用します。
Google Workspace版のシステム構成案
- 概要: Shopify PlusとGoogle Workspace、Google Cloud Platformを組み合わせたシステム構成です。
- システム構成: Power Platform版と基本的な構成は同じですが、業務アプリ基盤とデータ基盤にGoogle WorkspaceとGoogle Cloud Platformを利用します。
機能概要
- B2Bサイト (Shopify Plus): 卸先・直営店舗向けのB2B ECサイトです。
- 商品カタログ表示、価格表示、見積依頼機能、アカウント管理機能などを搭載。
- 管理アプリ (AppSheet or Power Apps): 社内向けの管理業務を行うためのアプリです。
- 顧客管理機能、受注管理機能、売上集計機能などを搭載。
- 自動化フロー (Power Automate or GCF(GAS)): システム間のデータ連携や自動処理を行う仕組みです。
- 在庫データ自動連携、受注データ自動連携、アラート通知などを設定。
- 分析・レポート (Power BI or Looker Studio): データ分析やレポート作成を行うためのツールです。
- 売上分析ダッシュボード、顧客分析レポート、在庫分析レポートなどを提供。
機能 | Power Platform版 | Google Workspace版 |
フロントエンド | Shopify Plus (B2Bテーマ「Trade」活用) | Shopify Plus (B2Bテーマ「Trade」活用) |
データ基盤 | Dataverse (リレーショナルデータベース) | Cloud SQL (スケーラブルな関係データベース) |
業務アプリ | Power Apps (モデル駆動型アプリ) | AppSheet (在庫管理、受発注管理アプリなど) |
自動化 | Power Automate | Shopify Flow + Cloud Functions(+Google App Script) |
分析・レポート | Power BI | Looker Studio |
システム開発手法比較
項目 | Google Workspace + Google Cloud Platform | Power Platform | 備考 |
初期費用 | 低~中コスト | 低~中コスト | |
月額費用 | 1ユーザーあたり月800円~ | 1ユーザーあたり月4,234円~ | ライセンス費用が異なる |
開発工数 | やや多め | 標準的 | Google Workspace版はやや開発工数がかかる可能性 |
カスタマイズ性 | 低い | 高い | Power Platformの方が柔軟なカスタマイズが可能 |
学習コスト | 低い | 高い | AppSheetの方が直感的な操作が可能 |
コスト比較 (概算)
※ ライセンスが必要なユーザーを30人と仮定した場合の概算費用です。
項目 | 月間ランニングコスト | 年間ランニングコスト |
Google Workspace版 | ||
Google Workspace Business Starter | 24,000円 | 288,000円 |
サーバー、DB費用等 | 30,000円 | 360,000円 |
合計 (Google Workspace版) | 54,000円 | 648,000円 |
Power Platform版 | ||
Microsoft 365 Apps for business | 37,080円 | 444,960円 |
Power Apps Premium | 89,940円 | 1,079,280円 |
合計 (Power Platform版) | 127,020円 | 1,524,240円 |
どちらのプラットフォームが最適かは、株式会社A様の具体的な要件や、IT人材の状況、予算などによって異なります。
- コストを重視する場合: Google Workspace版 が初期費用・運用費用ともに抑えられます。
- カスタマイズ性・高度な機能: Power Platform版 はより柔軟なカスタマイズや高度な業務プロセスに対応できます。
- 内製化を重視する場合: AppSheet (Google Workspace版) は直感的な操作性で、現場部門での内製化が比較的容易です。
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結局、どちらを選ぶべき?
AppSheetとPowerApps、それぞれの特徴と強みを見てきましたが、結局のところ、どちらを選べば良いのでしょうか?
結論から言うと、「どちらが優れている」 というわけではありません。 目的、状況、そして優先順位 によって、最適なツールは異なります。
AppSheetがおすすめな人
- Google Workspace を日常的に利用している
- Google スプレッドシート、Google ドライブ、Google カレンダーなど、Google Workspace の各種サービスとの連携を最大限に活かしたい。
- データソースが Google Workspace に集約されている。
- 現場部門が主体となって、手軽にアプリ開発を始めたい
- IT部門のサポートなしに、現場の担当者が主体的にアプリ開発を進めたい。
- スプレッドシート感覚 で、誰でも簡単にアプリを作れるツールを探している。
- まずは簡単なアプリから試してみたい、スピーディーにアプリをリリースしたい
- 「まずは小さく始めて、効果を見てから本格導入を検討したい」 というスモールスタートを考えている。
- とにかく早くアプリをリリースしたい、スピード重視で開発を進めたい。
- アプリ開発の費用をできるだけ抑えたい
- 無料プラン を活用して、まずは無料で試してみたい。
- 有料プランもユーザー課金 で、使った分だけ費用がかかるため、予算を抑えたい中小規模の企業 や部門に最適。
- プログラミング経験がない、または少ない
- ノーコードで直感的に操作できるツールを探している。
- ITスキルに自信がない が、業務効率化のためにアプリを活用したい。
PowerAppsがおすすめな人
- Microsoft 365 を中心に業務を行っている
- SharePoint、Excel、Teamsなど、Microsoft 365 のサービスとの連携を重視したい。
- データソースが Microsoft 365 環境に多く存在する。
- 本格的な業務システムを構築したい、既存システムとの連携を強化したい
- 業務プロセスのデジタル化を推進し、基幹システムに近い本格的な業務アプリ を作りたい。
- 既存の社内システムや外部サービスとの連携を強化したい。
- 高度なカスタマイズ性や拡張性を求める
- 複雑な業務ロジックを組み込みたい、独自のUI/UXを実現したいなど、自由度の高いカスタマイズ を実現したい。
- 将来的な機能拡張やシステム連携を見据えている。
- エンタープライズレベルの機能・セキュリティ・ガバナンスを求める
- 大規模組織での利用を想定しており、高度なセキュリティ機能やガバナンス体制 が必要。
- Power Platform 全体としての機能群を活用したい。
- ローコード開発にも挑戦したい
- ノーコードだけでなく、必要に応じてローコード開発も取り入れたい。
- Power Fxなどのプログラミング的な要素も活用して、より高度なアプリ開発に挑戦したい。
まとめ
AppSheetとPowerAppsは、どちらも強力なノーコードアプリ開発ツールですが、得意分野が異なります。 AppSheet はGoogle Workspace連携に強く、手軽さとスピードが魅力。現場主導でのアプリ開発や、まず試してみたい場合に最適です。一方、PowerApps はMicrosoft 365連携に加え、高度なカスタマイズ性と拡張性が強み。本格的な業務システム構築や、エンタープライズレベルの利用に向いています。
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