システム開発を外注することは、企業が限られたリソースや専門知識を補い、迅速に高品質なシステムを構築するための有効な手段です。
しかし、一方で全ての開発プロセスを外部に丸投げすることには大きなリスクが伴います。発注側のリテラシーが不足している場合や、管理体制が不十分な場合、プロジェクトの品質や進行が適切に管理できず、最終的に期待外れの結果を招くことがあります。
本記事では、システム開発を外注する際のリスクや失敗しないためのコツを解説するとともに、外注のメリットについても考察します。
外注を検討している企業が、どのようにしてプロジェクトを成功に導けるかについて、具体的な手順も含めて紹介します。
システム開発を丸投げ外注する危険性とは?
システム開発を外部の業者に丸ごと委託することは、リソース不足を補う有効な手段です。
しかし、丸投げすることで発注側がプロジェクトの詳細や進行状況を十分に把握できなくなり、最終的に期待した結果が得られないこともあります。ここでは、システム開発を丸投げ外注するリスクについて解説します。
発注元のITリテラシーが不足していると、納品物を適切に評価できない
外部にシステム開発を委託する際、発注元のITリテラシーが不足していると、納品されたシステムが本当に必要な機能を持ち、品質が十分に保たれているかを正確に評価することができません。
結果として、不完全なシステムが納品されるリスクが高まり、最終的に多くの手戻りや追加コストが発生する可能性があります。
技術的な専門知識を外注先に依存しすぎると、自社にノウハウが溜まらず、納品物を適切に見極める力が欠けてしまい、システムが実際に稼働し始めてから大きな問題が発覚することもあるため注意が必要です。
品質管理が難しくなる
システム開発を進める際は、品質管理や進捗状況の把握が欠かせません。しかし、外注先にすべてを任せてしまうと、進捗遅れや品質に問題があった際に適切に管理できなくなるリスクがあります。
特に外部の開発チームとコミュニケーションが不十分な場合、問題が発生しても早期に発見できず、納期直前になって大きな不具合が発覚するケースも珍しくありません。
進行中の問題や進捗状況を定期的にチェックし、開発チームとのコミュニケーションを密に行う体制を整えることが必要です。
ベンダー依存に陥る可能性がある
外注を依頼する際に注意しなければならないのが、特定のベンダーに依存してしまうリスクです。システムの開発や保守をすべて一社に任せきりにすると、技術的な知識や運用ノウハウが外部のベンダーに集中してしまい、他のベンダーに乗り換える際に大きなコストがかかる場合があります。
短期的にはプロジェクト管理を簡素化し、迅速な対応が期待できるメリットもありますが、長期的には企業の自主性を奪い、コストの増加や技術的な進化への対応が遅れるデメリットが発生します。
システム開発を外注するメリットとは?
システム開発を外注することには、さまざまなメリットがあります。ここでは、システム開発を外注することの主なメリットを5つご紹介します。
リソースの確保がしやすい
外注の最大のメリットの一つは、必要なリソースを迅速かつ容易に確保できる点です。自社内で専門的なエンジニアや開発者を揃えるには、時間もコストもかかる上、技術者の採用競争も激しい現状があります。
しかし、外注を活用することで、ベテランの技術者や開発チームをすぐに利用でき、開発プロジェクトを迅速にスタートすることが可能です。
また、SIerなどの開発会社は一般的に豊富なリソースを持っているため、あらゆる開発ニーズに柔軟に対応できます。
開発コストを抑えられる可能性がある
システム開発を外注することで、内製よりもコストを抑えられる可能性があります。自社でエンジニアを雇用し、必要な開発環境を整えるには、人件費や育成に費用がかかります。
一方、外注を利用すれば、すでに整備された開発環境と専門知識を借りることができ、開発期間や運用費の抑制が期待できます。
また、プロジェクトごとの契約によって、必要な時にだけ開発リソースを利用できるため、固定費を変動費化し、コスト効率を向上させることが可能です。
開発リスクを減らせる
外注によるシステム開発は、プロジェクト全体のリスクを低減する効果があります。開発に必要な設備投資やインフラ整備は外注先が担当するため、発注側の負担軽減も可能です。
さらに、外注先は過去の実績や専門知識にもとづいた最適な開発手法を持っているため、品質管理やスケジュール管理が効率的に行われ、トラブルや失敗のリスクを最小限に抑えられます。
特に、不確実性の高い新技術や複雑なシステムに関しては、経験豊富な外注先に任せることで、開発過程での不測の事態に対応しやすくなり、プロジェクト成功の可能性が高まるでしょう。
最新技術の導入や専門性の高い開発ができる
外注することで、最新技術の導入や専門性の高い開発ができることも大きなメリットです。特に、SIerなどの外部のエンジニアは特定の分野に特化していたり、最新技術の知識やスキルを持っていたりします。
専門性の高いエンジニアを利用することで、社内では実現が難しい高度な開発や最新技術の導入を可能にし、競争力のあるシステムを構築することができます。
アフターサポートがある
システム開発を外注する場合、開発が完了した後のアフターサポートも大きなメリットの一つです。
システム導入後は運用保守が必要であり、定期的なメンテナンスやトラブル対応が求められますが、これらも外注先に任せることで、社内の負担が軽減されます。
特に、システムの障害やバグが発生した場合、迅速に対応してもらえるサポート体制があることは、企業にとって大きな安心材料といえるでしょう。
契約時にアフターサポートの内容を明確にしておくことで、導入後も長期的に安定した運用が可能となり、外注のメリットを最大限に活かすことが可能です。
外注と内製の違いとは?
外注と内製には、それぞれメリットとデメリットがあります。以下の表を参考に、自社の状況にあわせて使い分けましょう。
外注 | 内製 | |
スキル・ノウハウ | 蓄積しにくいが、最新の技術でシステム開発を依頼できる場合がある | 蓄積しやすいが、人材の採用・育成、設備投資、最新技術のキャッチアップが必要 |
コスト | 単発で済むが、依頼内容によっては追加費用が発生する可能性がある | リソース維持に継続的なコストがかかるが、外注よりも安くなる場合が多い |
効率性 | 要求が明確でないと、認識の齟齬やトラブルが発生しやすく、期間が長くなる | 密なコミュニケーションが可能で、プロジェクトを円滑に進めやすい |
セキュリティ | 自社の機密情報を開示する必要があり、知的財産権の管理が重要 | 機密情報が外部に漏洩するリスクが少なく、自社内での管理しやすい |
システム開発の外注で失敗しないためには?
システム開発を外注する上で成功の鍵を握るのは、開発プロセスの各工程で発注者と外注先間でしっかりとしたコミュニケーションと合意形成を行うことです。
ここでは、システム開発の外注で失敗しないために押さえておくべき重要なポイントを紹介します。
開発会社とのコミュニケーションを充実させる
外注先の開発会社との円滑なコミュニケーションは、プロジェクト成功の大きな要因となります。開発が進む中で、進捗状況や問題点を頻繁に共有し、双方がプロジェクトの現状をしっかりと把握していることが重要です。
これにより、問題が発生した際にも迅速な意思決定が可能となり、開発の遅延や品質の低下を未然に防ぐことができます。
特にプロジェクトの初期段階では、期待する成果や進行の指針を明確に伝え、定期的なミーティングや報告体制を確立することが求められます。
ゴールを明確に定義する
システム開発を外注する際には、最終的なゴールを具体的かつ明確に定義しておくことが欠かせません。
また、達成すべきビジネス目標は何かをしっかりと定めないと、プロジェクトが途中で迷走したり、想定とは異なる結果に終わったりする可能性があります。
具体的なゴールを設定することで、開発会社はその方向性に従って開発を進めることができ、発注者も進捗を正しく評価しやすくなります。
また、目標が定まっていないと、不要な機能の追加や無駄な開発が発生し、コストや期間が膨らむリスクが高まるため注意しましょう。
要件定義を綿密に行う
要件定義の不備は、システム開発の外注において最も多い失敗要因の一つです。
要件があいまいだと、開発が進行する中でしばしば仕様変更が必要になり、その結果、納品されたシステムが当初の期待とは異なるケースも少なくありません。
また、開発途中での仕様変更は、開発期間の延長やコストの増加を招くことが多いため、要件定義は重要な役割を担います。
システムの機能や目的、必要な仕様を明確にし、詳細な要件定義書を作成することで、発注者と外注先の認識のズレを防ぎ、プロジェクトを計画通りに進めることができます。
保守・運用の取り決めを作る
システム開発が完了した後も、運用中に発生するトラブルやアップデートへの対応が求められます。
そのため、開発段階から保守や運用に関する取り決めをしっかり行い、開発会社と保守契約を結んでおくことが重要です。
保守契約があることで、万が一システムの不具合やトラブルが発生した場合でも、迅速な対応を期待できます。
さらに、保守契約を明確にすることで、運用時のサポート範囲や責任の所在をはっきりさせ、トラブル発生時の認識相違を防ぐことができます。
開発会社を選定する際、相見積もりをとる
開発会社を選定する際には、必ず複数の会社から相見積もりを取ることをおすすめします。同じ条件で複数の会社に見積もりを依頼することで、各社の価格設定や提供するサービスの違いを比較しやすくなり、コストパフォーマンスの良い選択ができます。
さらに、見積もり依頼時の対応の速さや丁寧さも大切な判断基準です。複数の会社から見積もりを取得し、それぞれ比較検討することで、適切なパートナーを見つけ、開発プロジェクトを成功に導くことができます。
システム開発を外注する際にやること
システム開発を外注する場合、成功するためには事前にしっかりとした準備を行い、開発プロセスの各段階で適切な判断と行動を取ることが不可欠です。
ここでは、外注プロジェクトを円滑に進め、成功させるために必要なステップを詳しく解説します。
1. 自社の課題を洗い出す
システム開発を外注するにあたって、まず最初に行うべきことは、自社が抱える課題を明確にすることです。
具体的にどの部分でシステムが必要なのか、どのような問題を解決したいのかを洗い出すことで、開発すべきシステムの概要が見えてきます。
課題を曖昧にしてしまうと、開発の方向性が不明瞭になり、外注先に正確な依頼ができなくなる恐れがあります。
例えば、業務の効率化やコスト削減、顧客満足度の向上といった課題を明確にすることで、システム開発に必要な要素が具体化され、開発の方向性を正確に定めることができます。
2. システム開発の目的と終着点を決める
次に、システム開発の目的とその最終的なゴールを決定します。何を実現したくて、そのためにどんなシステムが必要なのかを明確にすることで、開発プロセス全体の指針が定まり、外注先と共通の認識を持つことができます。
目的が曖昧であると、プロジェクトの進行中に仕様変更や追加要求が発生し、開発の遅延やコストの増加を招くリスクがあります。
最終的なゴールを決めることで、外注先はその目標に向けて計画を立てやすくなり、プロジェクトの方向性がブレずに進行することが可能です。
3. 予算とスケジュールを設定する
システム開発の成功には、適切な予算とスケジュール設定が欠かせません。予算が足りなければ、必要な機能を盛り込むことができず、プロジェクトが失敗する可能性があるためです。
また、開発スケジュールがタイトすぎると、スピードを優先するあまり、品質が損なわれる可能性もあります。
したがって、予算とスケジュールは現実的で無理のない範囲で設定しましょう。特に開発中は予期せぬトラブルが発生する可能性もあるため、あらかじめ余裕を持たせることが推奨されます。
4. 要件定義 を行う
システム開発において最も重要なステップの一つが、要件定義です。システムがどのような機能を持ち、どのような業務フローに対応すべきかを詳細に定めることで、外注先は具体的な開発計画を立てやすくなります。
要件定義が曖昧だと、後々になって仕様変更が生じたり、期待外れのシステムが出来上がるケースも少なくありません。
そのため、要件定義の段階で関係者全員の意見を反映し、細部にまで気を配った計画を立てることが重要です。
5. 外注先の選定する
外注先の選定は、プロジェクトの成否を大きく左右します。開発経験や実績が豊富な企業を選ぶことで、安心してプロジェクトを任せることができます。
選定時には、必ず複数社から見積もりを取得し、それぞれの提案内容や費用、対応の速さや丁寧さを比較することが大切です。
また、過去のプロジェクト事例や評判も参考にし、信頼できるパートナーを見つけることが重要です。
外注先の技術力や対応力だけでなく、コミュニケーションの取りやすさやサポート体制も選定基準に加えると、プロジェクトが円滑に進行しやすくなるでしょう。
6. 契約内容を明確にする
外注先との契約内容をしっかりと明確にしておくことは、後々のトラブルを防ぐために非常に重要です。契約には、納期や成果物の品質基準、費用の内訳、支払い条件などを詳細に記載し、双方が同意した上で進めることが求められます。
また、契約書には保守や運用の取り決めも含めておくことで、システム導入後のトラブル発生を抑制できます。
契約内容を読み込まなかったり、理解を曖昧なままにしておくと、後々になって誤解やトラブルが生じるケースもあるため、慎重に確認することが大切です。
7. プロジェクト体制を整える
外注先と契約締結後は、プロジェクト体制を整えキックオフミーティングを行います。
発注者側も、プロジェクトを管理する責任者や、開発会社との連携を担当する窓口担当者を配置し、外注先とのコミュニケーションが円滑に進むように配慮することが重要です。
特に、進捗管理や問題発生時の対応など、プロジェクト全体の指揮を取る体制を整えておくことで、開発の品質やスケジュールが確保されやすくなります。
また、チーム内での情報共有や意思決定の迅速化を図り、外注先との連携を強化することが、プロジェクトの成功に繋がります。
まとめ
システム開発を外注することは、リソースや専門知識を補い、効率的にプロジェクトを進めるための有効な手段です。
ただし、丸投げすると品質管理や進捗が難しくなるリスクがあるため、発注側も適切な管理体制を整えることが必要です。
外注で成功するためには、開発のゴールや要件を明確にし、外注先とのコミュニケーションを密に取ることが重要です。
また、複数社の相見積もりを行い、保守・運用の契約も事前に取り決めておくことで、リスクを減らし、スムーズな開発が期待できます。