コロナによるリモートワークの広がりもあり、日本でペーパーレス化の必要性は、特に叫ばれています。徐々に進んではいますが、国内企業の完全なペーパーレス化まではたどり着けていません。
紙を用いている企業の方は「自社のアナログ作業に焦りを感じる」「早くペーパーレスに移行したいがやり方が分からない」と感じることもあるでしょう。
そこで今回は、日本でペーパーレス化が進まない理由や、、ペーパーレス化を実現するために必要なことを紹介します。
国内のペーパーレス化の現状
はじめに日本国内のペーパーレス化の推進状況を紹介します。
ペーパーロジック株式会社は毎年、東京に本社がある企業の経営者・役員を対象にペーパーレス化の現状について調査をしています。2023年度のペーパーレス化の推進について、以下の結果が分かりました。
上記の結果から、ペーパーレス化について、以下の状況がわかります。
- ペーパーレス化に取り組めていない企業は約45%
- 積極的に取り組んだ企業のうち約40%は2024年度に予算を配分していない
- 取り組まなかった企業のうち80%以上は2024年度もペーパーレス化を推進しない
- 全体の約50%はペーパーレスに課題感を持っている
- 課題感の1位は「紙による無駄なコスト」、2位は「業務効率の悪さ」
このような結果を踏まえると、2023年度は45%以上の企業は取り組んでおらず、そのうち80%以上は2024年度も取り組まないとしています。
課題感はありつつも取り組めない企業も多いといえますが、課題すら持てていない企業もまだまだ多いことが分かります。
出典:ペーパーロジック株式会社「【リサーチ】ペーパーレス化に伴う2024年度予算に関する調査 / 出典元」
日本でペーパーレス化が進まない理由とは
日本でペーパーレス化がなかなか進まない理由について3点紹介します。
紙文化が根付いている
まだまだ紙文化を払拭できていない点はあります。後述しますが、紙にも利点があります。デジタルと違い、システムエラーなどの影響がなく視認性も高いです。この利点を重視している部分もあります。
また古くから経営している企業の場合、原本を紙で管理している企業が多いことでしょう。データ化するのは手間がかかりますので、対応が遅れている側面もあります。
またシステムを理解していない場合、文書をPCで作成することをペーパーレスと勘違いしてしまうこともあります。この場合、最終的には紙で出力してしまい、紙文化から抜け出せません。
また日本に古くからある、ハンコ文化を払拭できないケースもあります。
上層部や経営陣の理解が足りない
「ペーパーレス化」は全社的に進める必要があります。
ペーパーレス化に関する、よくある失敗としては経営層・上層部が、現場の部下に任せきりで舵取りをしないことです。現場としては紙ベースでの仕事に不満がないため、デジタル化のメリットを理解できず、ペーパーレス化が進まないといったケースがあります。
そのため、上層部や経営陣が積極的にペーパーレス化のメリットを説明し、推進するようにしましょう。
デジタル技術への不安
紙からデジタルに移行すると、業務フローや社内規定が大きく変わります。そのため作業に慣れているメンバーとしては不安が付きまといます。特に社歴が長いスタッフはデジタル化に反対することもあります。
ただしペーパーレス化は長期的な視点でみるとメリットのほうが大きいです。そのため、会社全体としてデジタル化のメリットを丁寧に説明して説得する必要があります。
また、移行直後はミスが起きがちですので、スタッフをケアしつつ完全なペーパーレス化を目指しましょう。
\ ランニングコスト0で脱Excel/
ペーパーレス化を進める上で知っておきたい「電子帳簿保存法」
日本では国を挙げてペーパーレス化に取り組んでいます。そのための法律の一つが「電子帳簿保存法」です。
電子帳簿保存法を簡単に説明すると「税務関係帳簿・書類を電子データで保存することを認めた法律」です。これまでは紙での保存が必須でしたが、電子データでも可能となりました。
以下の3つの区分に分かれており、それぞれに法を満たす要件が定められています。事前に確認をしておきましょう。
- 電子帳簿等保存:電子的に作成した帳簿・書類をデータのまま保存
- スキャナ保存:紙で受領・作成した書類を画像データで保存
- 電子取引:電子的に授受した取引情報をデータで保存
参考:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」「電子帳簿保存法が改正されました」
ペーパーレス国家「エストニア」の例
日本も徐々に国がペーパーレス化を推し進めている状況ですが、世界を見るとまだまだ後進国と言えます。
先進国として有名なのがエストニアです。エストニアは早い段階で国民にICチップ付きIDカードを振り分けました。日本のマイナンバーカードは、エストニアの施策をお手本としたものです。
またこの施策のために、エストニアは厳重なセキュリティ環境を整備しました。その結果、エストニアの国民は安心してデジタル上ですべての行政サービスを受けられることになり、96%以上の国民がWeb上で所得税を申告しています。
エストニアの成功例から学べるのは、「まずペーパーレス化に伴う環境整備をし、リスクをなくすことが望ましい」という点です。リスク・インシデントを予測したうえで社員が安心して使える環境を整備しましょう。
出典:CNET Japan|エストニアは本当に「電子国家」なのか–現地に移住した日本の若者がみた実情
ペーパーレス化をするメリット
ペーパーレス化には以下の5点のメリットがあります。
- 生産性の向上につながる
- 経費削減
- 紛失・誤廃棄・盗難リスクがなくなる
- 時と場所を選ばず書類にアクセスできる
- 震災・火災などの災害対策
デメリットが先行し、なかなか紙文化から抜け出せない方は、参考にしてみてください。
生産性の向上につながる
ペーパーレス化によって、業務の生産性が高まります。
例えば紙ベースの場合、社内稟議を通す際にもいちいち上長にハンコ・サインを求める必要があります。上長が出張、休暇などで不在の場合、プロジェクトが止まってしまいます。
一方でデジタル化すれば、上長がどこにいてもPCや社用スマホなどで承認ができ、生産性が向上します。
またデジタル化することでデータが蓄積されます。このデータをもとに改善のPDCAを回すことで、既存業務の効率化、生産性向上につなげられます。
経費削減
紙ベースの業務をなくすことで以下の備品が必要なくなります。
- 複合機・印刷機
- インク
- 紙
- ペン
- 保管する棚
- 紙をまとめるファイル
- 収入印紙
一般的なオフィス向け複合機で印刷すると、白黒で平均1枚約3円かかります。長期的にみると大幅なコストカットにつなげられます。
紛失・誤廃棄・盗難リスクがなくなる
紙ベースだと、紛失・廃棄・盗難のリスクがあります。デジタル化することで紛失や廃棄などのリスクはなくなります。誤って削除しても簡単に復元できるため安心です。
盗難に関してはデジタル上でパスワードやアクセス権限を付与できるため、セキュリティが強いです。紙の場合は、金庫に保存するなどでしかセキュリティを強化できません。
検索性が向上する
デジタル化することで検索性が向上するのは大きなメリットです。紙の場合、棚に保管している膨大な資料群から見つけ出す必要があります。これでは非効率です。
一方でデジタル化すればWeb上で検索するだけですぐに見つけ出せます。業務効率化につながります。
震災・火災などの災害対策
紙で保管していると、自然災害が起きた際に紛失したり、燃えてしまったりするリスクがあります。デジタル化することでPCが壊れてしまってもクラウド上で保管されるため、なくなることがありません。
\ ランニングコスト0で脱Excel/
ペーパーレス化をするデメリット
一方でペーパーレス化には以下のデメリットがあります。
- 導入にコストがかかる
- 紙と比べて視認性が劣ることがある
- システムの影響を受ける
これらのデメリットへの対策を講じ、ペーパーレス化の障壁をなくしていきましょう
デジタルツールの導入にコストがかかる
デジタル化の初期費用はコストがかかります。例えばデジタルツールを開発する場合、以下の費用が必要です。
- クラウドサーバー代
- ハードウェアの購入費(PC、タブレット、スマートフォンなど)
- 開発エンジニア人件費、もしくは外部委託費
- 社内スタッフへの教育の人件費
- 既存の紙データの移行に伴う費用
特に膨大な紙のデータがある場合は、かなりの時間とコストがかかってしまいます。ただし、こうした初期費用は長期的に見ると、損益分岐します。
そのため、まずは初期費用と、ペーパーレス化によって削減できるコストを洗い出したうえでPL(損益計算書)を作り、経営陣を説得しましょう。
紙と比べて視認性が劣ることがある
端末にもよりますが、文字が小さくて見にくいことがあります。特にZOOMの画面共有など、複数の社員が同時に資料を確認する場合は、大きなディスプレイが必要になることもあります。
場合によっては、紙のほうが利点がありますので、紙とデジタルのハイブリッドで運用を進めるといいでしょう。
システムの影響を受ける
デジタル化した場合、インフラやツールのエラー、バグなどによる影響を受けることがあります。例えば外部のSaaS製品を導入した場合、ベンダーのエラーが起きると復旧までツールを使えなくなることがあります。
このため、デジタル移行をする場合にはリスクヘッジを用意しておきましょう。「予備のツールを契約する」や「一時的に紙に戻す」などが必要です。
\ ランニングコスト0で脱Excel/
ペーパーレス化を実現するために必要なこと
実際にペーパーレス化を推進するために、事前にすべきことを紹介します。
社内環境を整備
まずはデジタル環境を整備しておきます。既に市場ではあらゆる業務においてデジタルツールがたくさんリリースされていますので導入しましょう。以下は一例です。
- ドキュメント管理ツール
- 請求管理ツール
- 契約管理ツール
- 採用管理ツール
- 顧客管理ツール
- タスク管理ツール
- プロジェクト管理ツール
- 会計ソフト
- 稟議承認ツール
既存のツールを導入することでパッケージングされた機能を使うことができます。またサーバー代などはベンダーが負担することが多いため、ある程度コストの予測を立てやすいです。
自社でデジタルシステムを開発する
既存のツールを導入する場合、以下のようなデメリットがあります。
- カスタマイズ性が乏しい
- 継続的にライセンス費用がかかる
- データのセキュリティに関して外部漏洩のリスクがある
こうしたデメリットを払拭したい場合は、自社でデジタルツールを開発することが望ましいです。
ただし「自社にエンジニアがいない」または「開発リソースを確保できない」といった場合は、外部委託での開発も考えましょう。
弊社・ファンリピートではお客様のご要望に応じて、さまざまな業務効率化ツールを開発・提供できます。AIを用いた開発により、最短1カ月で納品することも可能です。詳しい内容は以下の資料をご覧ください。
社内スタッフが嬉しいポイントを説明しておく
紙からデジタルに移行することで、社員のハレーションを引き起こす可能性があります。社員が納得してペーパーレス化に賛成できるよう、事前に「スタッフが嬉しいポイント」に的を絞って説明するようにしましょう。
例えば経営層が以下の点を訴求することが望ましいです。
- 業務時間を減らせる
- オフィススペースを確保できる
- 情報にアクセスしやすくなる
- 書類紛失のリスクが軽減される
- (場合に応じて)リモートで働けるようになる
研修などで社員のITスキルをアップ
実際に運用を始める際には社員が問題なくツールを使える状況にしておく必要があります。
自社で研修をすることもありますが、基本的にはツールのベンダー・外部委託の開発会社の担当者が説明してくれます。
また移行直後はミスが起きがちです。本格的に運用をはじめたあとも、継続的にフォローアップしましょう。
取引先・関係先との調整
自社がデジタル移行することで、ステークホルダー全体にも影響が出ることがあります。例えば以下です。
- 外部パートナー:毎月の請求書を紙ではなくツール上でやり取りする。
- 顧客:契約書や請求書についてデジタル化する
- 外部弁護士・労務士:デジタル化に伴う調整が必要になる
突然、業務フローを変えてしまうと外部のステークホルダーに迷惑がかかりハレーションが起きてしまいます。必ず事前に共有をしておき、必要に応じて研修を行うなどの準備をしておきましょう。
まとめ
今回は日本でペーパーレス化が進まない理由について紹介しました。
変化に対応できない背景にはさまざまなデメリットや障壁があります。一つずつ分解したうえで対策を講じることでペーパーレス化に近づけますので、現状に焦りや不満を感じる方はこの記事を参考に実践してみてください。
また弊社・ファンリピートでは業務自動化ツールの開発代行をしています。紙やExcelといったアナログな手段で進めている業務を自動化し、生産性向上に貢献します。
気になる方は以下のリンクから詳細をご覧ください。
\ ランニングコスト0で脱Excel/