昨今、システム開発の分野でよく耳にするようになったオフショア開発。
外注を検討している開発会社がオフショア開発を採用していたり、自社でオフショア開発を検討しているなど、一般の企業においても様々な場面でオフショア開発に触れる機会があると思います。
そこでこの記事では、「オフショア開発とは」、「メリット・デメリット」、「オフショア開発のリスク」という基本事項について、初めての方にもわかりやすく解説します。
オフショア開発とは?
オフショア(offshore)とは「沖合の」や「海外で」という意味を持つ英単語です。
システム開発の分野で使われるオフショア開発とは、開発業務の一部を海外の子会社や関連会社などに委託して開発することを指し、中国・ベトナム・インド・フィリピンなどが委託先の国の代表例です。
- オフショアリング
会社・業務などを海外に移転すること
(英語では「オフショア(offshore)」自体に同じ意味がありますが、日本では経済用語の「オフショアリング」が使用されています) - アウトソーシング(outsourcing)
社内業務の一部を外部委託すること - オンショア開発
オンショア(onshore)とは自国を意味し、オンショア開発とは全ての業務を自社で行うこと - ニアショア開発
国内の地方都市の企業に業務を委託すること
オフショア開発のメリット
業務の一部を海外へ委託するオフショア開発には、下記のメリットがあります。
- コスト削減
- IT人材の確保
コスト削減
開発費用のうち、占める割合の大きい人件費を物価の安い海外の人材を用いることにより、コストの削減が可能になります。
IT人材の確保
日本国内では不足気味のIT人材ですが、海外の企業に委託することにより海外のIT人材を確保できます。
オフショア開発のデメリット
一方、オフショア開発のデメリットには下記が挙げられます。
- 言葉の壁
- 文化・考え方の違い
- 時差
言葉の壁
オフショア開発では、非ネイティブ同士が英語で会話することになります。
ビジネスレベルの英語力が必要になりますし、時には同じワードを使っていても、言葉そのもののニュアンスや受け取り方に齟齬が生じることもあります。
文化・考え方の違い
コミュニケーションは、言語のみならずその国の文化や考え方を理解しなければうまくいかないものです。常識も、育ってきた環境や培ってきた経験によって変わる曖昧な概念だと言えるでしょう。
例えば日本では、事前に細かく決めていなくても必要なことには対応したり、全てを伝えなくても意図を汲み取ったりすることが一般的に行われています。
一方の海外では、要望は全て明確に伝える必要があり、約束していないことは例えプロジェクト達成のために必要であっても業務範囲外と見做され、対応してもらえないことが一般的です。
また、日本のビジネスシーンでの「できない」が「不可能」という意味であることに対し、海外のそれは「大変」「対応するには残業が必要」など、イエス・ノーの基準が違うこともあります。
同様に、日本において「大丈夫」と言う言葉は、厳しい目で見て大丈夫だと判断した時に使われますが、海外ではその基準が甘く、希望的観測に基づいて「大丈夫」が使われることもあります。
その他にも、日本と海外では転職に対する捉え方が違って離職率が高く、プロジェクト遂行中でも人の入れ替えが頻繁にあったり、残業時間に対する考え方も様々で、一切残業には応じないというケースもあり得ます。
時差
海外の委託先とオンライン会議を行う時や、問題発生などの緊急時に、時差はデメリットになり得ます。
例えばインドと日本では時差が3時間半あります。仮に、日本で始業時間の9時に不具合が発覚しても、インドのオフィスの始業時間が9時であれば丸々3時間半待たないといけません。
また、お互いの業務時間内で予定を合わせて会議を行う場合、日本時間の12時半以降にしか会議を設定できないことになり、なかなか時間が合わせられない、と言うことも起こります。
オフショア開発のリスクとは?
開発業務の一部を海外へ委託するオフショア開発ですが、それにより生じるリスクを対策と共に解説します。
政治情勢や為替変動に影響される
業務の一部を海外に委託するということは、委託先の国の情勢に影響を受けるリスクがあります。
クーデターや大規模デモなどにより仕事が滞ることも考えられますし、戦争や強い反日運動などによってプロジェクトの遂行そのものが困難になる可能性もゼロではありません。このリスクを軽減するためには、情勢が安定している国で委託先を選ぶ必要があります。
また、日本円で決算している日本企業にとっては、為替の変動に影響を受けることが想定されますので、そのリスクを加味した予算の確保が必要になります。
言葉や文化の違いによるトラブル
人がシステム開発を行う以上、円滑なコミュニケーションや相手との良好な関係性の構築が重要になります。
特にオフショア開発では、言葉や文化の異なるバックグランドを持つ委託先と一緒に、物理的距離のある状況でプロジェクトを遂行することになります。
この際、言葉や文化の違いによる行き違いが重なると、委託先との関係性が悪くなって仕事の質が低下したり、予算超過や納期遅延が発生するなどのトラブルに発展してしまうリスクも考えられます。
このようなトラブルを回避するには、日頃からコミュニケーションを取ってお互いの考え方の違いを理解し合い、必要であれば現地に赴き、直接顔を合わせて関係性を構築するなどの対応も必要になるでしょう。また、日本と現地の開発会社を繋ぐ窓口役となるブリッジSEが重要な役割を担うことになります。
ビジネスレベルの英語力と高いコミュニケーション能力があり、日本のビジネスマインドを理解しているキーパーソンをブリッジSEに任命することが望ましいでしょう。
なお、委託先に守って欲しい内容・遂行して欲しい要望に関しては、契約書や仕様書に明確に盛り込んでおくことと、何らかの変更が生じた場合には、変更点・コストインパクト・納期への影響を仕様変更書等で都度確認しておくことが、後々のトラブル回避に役立つでしょう。
クオリティの低さ
日本のIT人材不足を補うために海外へ委託したはずが、相手先のスキルにばらつきがあり、低品質のものが納品されるというリスクも考えられます。
このようなリスクを回避するには、下記の対応が必要になります。
- 委託先を選ぶ時は相手の言葉を鵜呑みにせずにこれまでの実績を確認する
- プロジェクト遂行の前に仕様書をしっかりと作り込んで打ち合わせをする
- プロジェクト遂行中には委託先に任せきりにせず自分の目で進捗を確認する
【まとめ】オフショア開発ではリスクを回避してコストを削減しよう
オフショア開発の最大のメリットは開発費用を削減できることです。そのメリットを最大限に発揮させるためにも、想定されるリスクを回避できるよう準備しておくことが重要です。
外注を検討している開発会社がオフショア開発を採用している場合には、契約前に下記を確認しておきましょう。
- 外注を検討している開発会社のオフショア開発の実績
- プロジェクト遂行時の流れ(自社との窓口は誰か、自社が直接海外とやり取りする必要があるのかなど)
また、システム開発の外注先選びでお困りの方は、弊社までお気軽にご相談ください。当社がこれまで支援してきた開発事例の共有、企画・コンサルティング、要件定義や実際の開発支援まで包括的にサポートさせていただくことが可能です。
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