AI技術の進化を牽引するAnthropic社は、2025年2月25日、同社最新のAIモデル「Claude 3.7 Sonnet」と、開発者向けコーディングツール「Claude Code」を発表しました。
Claude 3.7 Sonnetは、瞬時の応答と深い思考を自在に切り替えられる、業界初の「ハイブリッド推論モデル」です。このモデルの最大の特徴は、通常の生成モデルとリーズニングモデル(思考モデル)を切り替えて使用することが可能。
さらに、同時発表されたClaude Codeは、AIが自律的にコーディング作業を支援する革新的なツールであり、開発者の生産性を大幅に高めることが期待されます。本記事では、Claude 3.7 SonnetとClaude Codeの詳細、その性能、そしてビジネスへのインパクトについて、余すところなく解説します。
Claude 3.7 Sonnetの概要

Claude 3.7 Sonnetは、Anthropic社が開発した最新のAIモデルであり、その最大の特徴は、業界初となる「ハイブリッド推論モデル」である点です。
ハイブリッド推論モデルとは?
Claude 3.7 Sonnetは、以下の2つの思考モードを、ユーザーが状況に応じて自由に切り替えることができます。
- 標準モード: 従来のAIモデルと同様に、高速な応答を実現します。メールの返信、データ集計、情報検索など、スピードが求められる日常業務に最適です。このモードは、前モデルであるClaude 3.5 Sonnetの性能をさらに向上させたものとなっています。
- 拡張思考モード: より深く、複雑な思考を必要とするタスクに特化したモードです。戦略立案、市場分析、新規事業の企画、複雑な問題解決など、高度な推論能力が求められる場面で真価を発揮します。このモードでは、AIは回答を生成する前に自己反省を行い、思考プロセスを可視化するため、ユーザーはAIの思考過程を理解し、より納得感のある結論を得ることができます。
API利用で広がる可能性
Claude 3.7 Sonnetは、API(Application Programming Interface)を介して利用することで、その機能を最大限に活用できます。特筆すべきは、ユーザーがAIの「思考予算」をトークン数で設定できる点です。これにより、例えば、以下のような柔軟な使い分けが可能になります。
- 緊急度の高いタスク: 思考トークン数を少なく設定し、迅速な回答を得る。
- 重要度の高いタスク: 十分な思考トークン数を割り当て、深く考察された回答を得る。
- コストを抑えたい場合: 思考トークン数を制限し、費用対効果を最大化する。
このように、Claude 3.7 Sonnetは、ビジネスの状況に応じて、AIの思考の「深さ」と「速さ」、そして「コスト」を最適化できる、極めて柔軟性の高いツールです。
利用可能なプラットフォームと価格
Claude 3.7 Sonnetは、以下のプラットフォームで利用可能です。
- Claude.ai: 無料プランを含む、すべてのプランで利用可能(拡張思考モードは有料プランのみ)。
- Anthropic API: 開発者向けのAPI。
- Amazon Bedrock: AWSのマネージドサービス。
- Vertex AI: Google CloudのAIプラットフォーム。
API利用時の価格は、前モデルのClaude 3.5 Sonnetから据え置きで、入力トークン100万あたり3ドル、出力トークン100万あたり15ドル(思考トークンを含む)となっています。
Claude 3.7 Sonnetの性能
Claude 3.7 Sonnetは、さまざまな能力を評価するテスト(ベンチマーク)で、その実力を証明。他のAIモデルを凌駕する、目覚ましい成果を上げています。
コーディング能力:プログラマーも驚く、高い精度
ソフトウェア開発の能力を測るテスト(SWE-bench Verified)では、Claude 3.7 Sonnetは、他のAIモデルを大きく引き離し、トップの成績を記録。複雑なコードも正確に理解し、修正できる、高い能力を示しました。
プログラミングの知識がなくても、Claude 3.7 Sonnetに指示を出すだけで、高品質なコードを生成できる時代が来たと言えるでしょう。

ためしに「勤怠管理システムを作って」と投げてみました。モックアップ作成が5分くらいでできるのは驚愕。こんなデザインでどうですか?とそのまま提案してもイケるのでは…というくらいの完成度でした。


複雑な課題も論理的に分析

AIエージェントの性能を評価するテスト(TAU-bench)でも、Claude 3.7 Sonnetは、その実力を発揮。小売や航空会社など、実際のビジネスシーンを想定した課題で、他のAIモデルを上回る成果を上げました。
これは、Claude 3.7 Sonnetが、単なる情報処理だけでなく、複雑な状況を分析し、最適な解決策を導き出す能力を持っていることを示しています。
数学・科学分野でさらに進化
じっくり考える「拡張思考モード」を使うと、Claude 3.7 Sonnetは、さらにパワーアップ。数学や科学といった分野で、その能力を最大限に発揮します。難しい計算問題や、専門知識が必要な課題も、Claude 3.7 Sonnetなら、的確に答えを導き出せるでしょう。
ポケモンも攻略!?

Claude 3.7 Sonnetは、なんと、人気ゲーム「ポケットモンスター」をプレイし、攻略することにも成功。これは、AIが画面を見て状況を理解し、自分で考えて行動できることを示す、興味深い事例です。Claude 3.7 Sonnetの、高い学習能力と応用力が、ゲームという身近な題材で証明されたと言えます。
具体的には、最大でクチバシティに到着し、ジムリーダーのマチス(Surge)を倒すまで進めることに成功したとのことです。
Claude Codeでできること:開発作業を大幅に効率化

Claude Code とは Teminal 上で使うことのできる Agentic なコーディングツール。ディレクトリ配下の構造とファイルを理解し、自然言語を用いてコードを書くことをサポート。
- コードの検索・読み取り: 必要なコードを、AIが自動で見つけ出し、内容を解説。
- ファイルの編集: コードの修正や、新しい機能の追加も、AIにおまかせ。
- テストの作成・実行: バグ(プログラムの誤り)がないか、AIが自動でチェック。
- GitHubとの連携: コードの管理や共有も、スムーズに行えます。
- コマンドラインツールの使用: 開発に必要なツールも、AIが使いこなします。
開発現場での活用事例:時間短縮、生産性向上
Anthropic社の開発チームでは、Claude Codeを実際に活用。
・テスト駆動開発
・複雑な問題のデバッグ
・大規模なリファクタリング
などでその効果を発揮しているとのこと。通常45分以上かかる作業を、たった1回の操作で完了させるなど、開発時間と手間を大幅に削減、生産性を向上させています。
今後の進化に期待:より使いやすく、高機能に

Claude Codeは、まだ開発途上のツールですが、Anthropic社は、今後も継続的に改良を加えていく予定。
- ツール呼び出しの信頼性向上
- 長時間実行コマンドのサポート
- アプリ内レンダリングの改善
などが計画されており、より使いやすく、高機能なツールへと進化していくことが期待されます。
Claude.aiのGitHub連携:コード管理がさらに便利に
Anthropic社のチャットAI、Claude.aiが、GitHubとの連携を開始。これにより、開発者は、自分のコードリポジトリを参照しながら、Claude.aiと対話できるようになりました。
GitHub連携で何が変わる?
これまでも、Claude.aiは、Googleドライブと連携できましたが、GitHubとの連携により、以下のようなメリットが生まれます。
- コードに関する質問がスムーズに: 自分のコードについて、Claude.aiに直接質問できるようになりました。
- コードの解説もAIにおまかせ: 複雑なコードも、Claude.aiがわかりやすく解説。
- バグの発見もサポート: コードの問題点を、Claude.aiが見つける手助けをしてくれます。
無料プランでも利用可能
GitHub連携は、Claude.aiの無料プランを含む、すべてのプランで利用可能。GitHubアカウントを持っていれば、誰でも手軽に試せるのも魅力です。
開発者以外にもメリット
GitHub連携は、プログラマーだけでなく、コード資産を持つ企業にとっても、大きなメリットがあります。
- 技術ドキュメントの自動生成: コードから、仕様書や解説書を自動的に作成。
- 社内ナレッジの共有: コードに関する質問に、AIが自動で回答。
- 属人化の解消: 特定の担当者しか理解できなかったコードを、誰もが理解できるように。
GitHub連携は、コードを、より身近で、活用しやすいものに変える、画期的な機能と言えるでしょう。
まとめ
Anthropic社の新AI「Claude 3.7 Sonnet」と「Claude Code」は、ビジネスの現場に革新をもたらす可能性を秘めています。高速応答と深い思考を両立するSonnet、開発を強力に支援するCode。
これらの登場は、AIが人間の能力を拡張し、生産性向上や新たな価値創造に貢献する未来を予感させます。進化を続けるAI技術から、今後も目が離せません。Claude.aiのGithub連携も開発をより効率的に進める上で、有用な機能となるでしょう。