顧客管理の方法は企業によってさまざまですが、Excelやスプレッドシートを用いた自作の管理を利用しているという方もいるのではないでしょうか。
はじめのうちは問題なく運用できていたものの、徐々に煩雑化してしまい、自社に合った顧客管理表の自作方法や最適なCRM(顧客管理システム)の導入について模索されている方も多いでしょう。
この記事では、顧客管理システムを自作する方法やメリット・デメリット、自作における課題などについてご紹介します。
顧客管理システムを作成する方法は?
顧客管理システムを作成するための方法は何パターンか存在します。この章では、代表的なパターンについてご紹介していきます。
紙媒体
紙媒体での顧客管理システムは、特にデジタルデバイスに馴染みがない企業や、データ量が少ない場合に有効です。
紙に顧客情報を手書きで記録することで、簡単に始められるというメリットがあります。また、物理的に保存するため、デジタルデータの喪失リスクがありません。
しかし、データが増えるにつれ、管理が煩雑になる点や、情報の検索や分析が難しい点がデメリットとなります。
Excel
Excelは、Microsoftが提供する表計算ツールで、多くの企業で広く利用されており、顧客管理システムの構築にも適しています。
既存のテンプレートを利用することで、手軽に始めることが可能であり、カスタマイズの自由度も高いです。
また、初期費用がかからないためコスト面でも優れています。しかし、データ量が増えると管理が煩雑になりやすく、人為的なミスが発生するリスクもあります。
スプレッドシート
スプレッドシートは、Googleが提供する表計算ツールで、Excelと似た機能を持ちつつ、クラウド上での利用が可能というメリットがあります。複数人での同時編集が容易であり、リアルタイムでの更新もできます。
また、データの共有やアクセス権の管理も簡単であり、コラボレーション性に優れています。
しかし、Excelと同様にデータ量が増えると管理が難しくなり、分析機能が限定的である点がデメリットです。
ノーコードツール
ノーコードツールは、プログラミングの知識がなくても、簡単に顧客管理システムを構築できるため、導入が容易です。
直感的な操作でカスタマイズが可能であり、必要な機能をすぐに追加できます。特に小規模企業やスタートアップにとってはコストパフォーマンスが高くおすすめです。
しかし、複雑なカスタマイズや高度な機能を実装するには限界があるため、大規模な企業には向かない場合があります。
Saas上のツール
Saas上の顧客管理ツールは、多機能かつスケーラビリティ(拡張性)が高く、さまざまな企業のニーズに対応できます。
クラウド上でデータが管理されているため、アクセスが容易であり、最新のセキュリティ対策が施されています。
また、定期的なアップデートやサポートも提供されるため、安心して利用できます。ただし、導入コストがかかる点や、カスタマイズの自由度が限られる場合があります。
Excelやスプレッドシートで顧客管理システムを自作するメリット
Excelやスプレッドシートで顧客管理システムを自作することでさまざまなメリットが得られます。ここでは、3つのメリットをご紹介します。
手軽に始められる
Excelやスプレッドシートは、ほとんどの企業が既に導入しているツールであり、特別なソフトウェアを購入する必要がありません。そのため、すぐに始められる手軽さがあります。
また、基本的な操作が分かれば、誰でも簡単に顧客管理システムを作成できます。初めて顧客管理システムを作るという場合には、Excelやスプレッドシートからはじめるとよいでしょう。
初期費用がかからない
Excelやスプレッドシートは、既に多くの企業で使用されているため、新たに費用をかけることなく導入できます。初期費用がかからないため、小規模な企業や予算が限られている場合でも、手軽に顧客管理システムを構築できます。
特に、新たにツールを導入する際は、初期費用が発生することが多いため、初期費用が必要ないExcelやスプレッドシートの活用は大いにメリットがあります。
自由度が高い
Excelやスプレッドシートは、カスタマイズの自由度が非常に高いツールです。企業のニーズに合わせて、項目やフォーマットを自由に変更でき、必要な機能を追加することも容易です。
また、使い慣れているツールであることから、いちから機能について把握する必要がないため、実現したいことを早期に実現しやすいといったメリットもあります。
Excelやスプレッドシートで顧客管理システムを自作するデメリット
Excelやスプレッドシートでの顧客管理におけるメリットを紹介しましたが、一方で、いくつかの観点でデメリットも存在します。
ここでは、4つのデメリットを解説します。
データ量が増えると管理が煩雑になる
Excelやスプレッドシートは、データ量が少ないうちは便利ですが、データが増えると管理が煩雑になります。大量のデータを手動で入力・更新するのは時間がかかり、ミスも増えやすくなります。
データ量が多くなる前に、古いデータについてはバックアップを取って管理表から除いておくなどの工夫は必要でしょう。
人為的なミスが発生しやすい
手動でのデータ入力が中心となるため、人為的なミスが発生しやすいというデメリットがあります。特に、重要な顧客情報の誤入力や削除などが発生すると、ビジネスに重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、スプレッドシートの場合には複数人での同時編集も可能であるため、どのような経緯でミスを発生したかが把握しにくいといった問題もあります。
そのため、削除や修正をしてはいけない範囲は、可能な限りデータを保護しておくとよいでしょう。
複数人での同時編集が困難
Excelは、一つのファイルを複数人で同時に編集するのが難しいため、情報の更新や共有に時間がかかります。一方、スプレッドシートは同時編集が可能ですが、大量のデータや複雑な処理には不向きです。
Excelかスプレッドシートどちらを利用するかは、それぞれの特徴に合わせて選択を行うとよいでしょう。
分析機能が限定的
Excelやスプレッドシートには基本的な分析機能がありますが、専門的な分析や高度なデータ処理には限界があります。特に、データの可視化や高度な統計分析を必要とする場合、専門的なツールや知識が求められます。
最近では、簡単にデータを分析して可視化してくれるツールも登場していますので、高度な分析やデータの可視化を重視したい場合はExcelやスプレッドシート以外のツールも検討しましょう。
Excelやスプレッドシートで顧客管理システムを作成する方法
実際にExcelやスプレッドシートで顧客管理システムを作成する手順や方法をご紹介します。
画像も合わせてご紹介しますので、ぜひご確認の上一度取り組んでみてください。
その1 管理する項目を決める
まず、管理する顧客情報の項目を決めます。基本的な顧客管理の情報として、企業名や担当者氏名、部署、電話番号、メールアドレス、受注内容、金額、支払い予定日、ステータスなど必要な情報をリストアップして設定しましょう。
その2 情報を入力
決めた項目に基づいて、顧客情報を入力します。この際、入力ミスを防ぐためにデータの形式や範囲を設定し、テンプレートを作成しておくと便利です。
また、項目は列に入力し、各項目のデータは行に入力しましょう。横にした場合、後々フィルタやソート機能を十分に利用できません。
その3 テーブル機能などを使い可視化しやすくする
Excelやスプレッドシートのテーブル機能を活用して、データを整理し、可視化しやすくします。
- 対象範囲を選択して「表示形式」>「交互の背景色」を選択します。
2. サイドバーが表示されますので、気に入ったスタイルを選択します。
3. 背景色がつき、表全体の視認性が高まります。
その4 機能を追加する
必要に応じて、フィルタやプルダウンの機能を利用することで利便性が高まります。
フィルタを表示したい場合には、範囲を指定した後で右クリックし、「フィルタを作成」を押します。
フィルタを作成すると、1行目に三角形のマークが表示されます。
三角形のマークをクリックするとフィルタの設定を確認できますので、絞り込みたい項目を選ぶことで表示内容を絞り込むことが可能です。
プルダウンの方法についてみていきます。対象を選択した後に右クリックして「プルダウン」を選択しましょう。
プルダウンの項目を指定すると、選択した範囲においてプルダウンから選ぶことができるようになります。
顧客管理システム自作の課題
利便性が高い自作での顧客管理システムですが、課題も存在します。主な課題についてご紹介していきます。
顧客管理システム自作における技術的なハードル
主な課題としては、開発スキルやメンテナンス、セキュリティ対策といったものがあります。特に、その中でもメンテナンスの観点と開発スキルの観点についてみていきましょう。
メンテナンスが難しい
自作のシステムは、メンテナンスが難しいという問題があります。往々にしてある問題として、担当者が変更になった際に十分な引継ぎがなされずもともとの仕様や運用が形骸化していってしまうという点があります。
また、運用が複雑化していくことでシステムも追加開発に伴い複雑化していってしまうという問題があります。
弊社ではシステムリリース後の保守運用なども含めた包括的な支援を行っています。少しでも興味あれば一度チェックしてみてください。
社内SEに聞いてみた
Q. 顧客管理システムを自作することのリスクはなんですか?
A. 多くの場合、仕様書が作られずにシステムが出来上がってしまうため、機能を追加したいと思ってもできないといった事態が起こります。
また、要望によって追加開発が行われていくことでシステムが複雑になりすぎてしまうという問題も発生します。システム開発は要件定義の重要度が高いですが、ひとりで要件定義を行うことの難易度は高く、機能ごとに要件定義から試験の流れが必要です。
また、システム化できるかどうかの判断が難しいという問題もあります。システム開発会社の場合、課題の解決方法についての知見があるので、様々な角度からアプローチできますが、自作だと工数的にも大変になってしまいます。
開発スキルが必要
自作の顧客管理システムを構築するには、一定の開発スキルが求められます。特に、カスタマイズや機能追加を行う際には、プログラミングの知識が必要です。
一定の範囲内までは通常のExcelやスプレッドシート技術で運用可能ですが、実現したいことが増えることによって非エンジニアが個人で運用していくには限界が生じてしまいます。
社内SEに聞いてみた
Q.自作で管理システムを作成する場合に必要な知識にはなにがありますか?
A. ソースコード(プログラミング言語での開発)の場合には、データベースやインフラ関係、 セA.キュリティ、アルゴリズム、プログラミング言語の知見が必要となります。
また、ノーコード/ローコードの場合には、データベースやツールの知見、アルゴリズムについて把握している必要があります。
幅広い知識が必要になるため、簡単ではありません。
Q.作成までにはどれくらいの期間が必要ですか?
A.要件にもよりますが、プログラミング言語を使った開発(ソースコードによる開発)の場合は、勉強含め簡単なもの(CRUD処理ができるのみ)で早くて3か月以上はかかります。
ただし、簡易的なもののため実用性は低いです。
一般的なSaas顧客管理システム(Hubspotなど)レベルのものであれば、何か月かかるか想像つかないくらい難しいです…また、要件が増えてくるとさらに期間も延びてしまいます。
※CRUD処理とは:作成、読み取り、更新、削除の機能 ex)メモ帳
株式会社ファンリピートが作成した顧客管理システムのデモアプリ
- メールアドレス:demo@example.com
- パスワード :demo1234@@
弊社では開発を依頼するお客様がローコード・ノーコード開発でどのようなモノができるかをイメージしやすいように、デモアプリを作成しています。
今回は簡易的な顧客管理アプリを作成してみました。機能やどれくらいの工数がかかったかなどを解説します。
アプリの概要と特徴
概要と特徴は以下の通りです。
- ログイン機能
- メールアドレス、パスワードでログイン
- 案件一覧
- 商談ステータスを表示する際に役立つ
- 件数や合計金額、単価表示
- ホット度合いが一目で表示できる
- フィルター検索機能
- 名前検索機能
- 顧客一覧
- 案件一覧より情報量が多い
- 1ページで顧客情報が表示できる
- フィルター検索機能
- 顧客登録
- 顧客情報を入力して登録
- 登録した後は編集ボタンから編集可能
- ToDo機能
利用方法
ログイン
こちらのURLから、アカウント情報を入力します。
- メールアドレス:demo@example.com
- パスワード :demo1234@@
案件ボード
ログインすると、案件ボードが表示されます。
案件ボードでは、登録した案件を一覧で表示できます。案件のステータス(商談、制約、検討…etc)ごとに分類されており、今の状態が分かりやすく管理できます。
案件が増えた場合はフィルターや検索機能で絞り込めます。また、顧客のホット度合い(関心の強さ)に合わせて色分けしているので、優先度合いの表示も簡単です。
顧客の管理
顧客一覧画面では、登録した顧客の情報が一覧で表示できます。顧客情報を作成するには右上の「顧客登録」を押下し、情報を入力します。
一度登録した顧客情報は後から編集可能です。
※既存のサンプルデータは編集できないように設定されています。
編集完了後、「保存する」を押下すると、編集内容を保存できます。
案件一覧の「+」をクリックすると、案件を追加できます。
案件一覧画面からも顧客情報の編集ができます。右側ではチケット(ToDo)管理が行え、今後やるべきことや今までの商談履歴が表示可能。
チケットを保存すると、ToDoリストを作成できます。
今後追加できる機能
主な機能を紹介しましたが、あくまでデモアプリなので簡易的なものです。以下の代表的な機能を追加することも可能です。
- リマインド通知(チケットの期限が近付いてきたら通知)
- メール/Slack/Teamsでの通知
- 見積・請求書の作成機能
- 権限管理
- マイページ
- CSVエクスポート
他にも実装可能な機能がございますので、ご興味をお持ちいただけましたら、お気軽にお問い合わせください。
注意事項
今回のデモアプリは、多くの方々にアプリの機能を知っていただくことを目的としております。一度ログアウトした場合、入力したデータは保存されない仕様となっておりますので、ご了承ください。
デモアプリの開発期間
今回ご紹介したデモアプリの開発期間は約3営業日ほどで、UIなどの画面イメージを含めても4営業日ほどで完成しました。株式会社ファンリピートは、「ローコードxAI駆動開発」を駆使して、より高速かつ効率的な開発を行っております。
この「ローコードxAI駆動開発」によって、開発コストの大幅な削減にも成功しました。
低コストかつ短期間での開発をお探しの方は、ぜひ一度ご相談ください。
株式会社ファンリピートのシステム開発事例
ファンリピートの手掛けた管理システム開発の事例をご紹介します。
項目 | 内容 |
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開発したシステム | 営業業務全体を一元化するSFA(営業・販売管理)システム |
開発支援前の課題 | もともとExcelでデータを管理しており、営業の管理データを一括で見られなかった 顧客管理、案件管理、商品管理が別のシステムだったため、管理が複雑化 ダッシュボードで見られるようにしたい |
開発支援の内容 | 顧客管理・案件管理・商品管理の一元化 ダッシュボード機能の実装 |
期間 | システムの作成自体は1か月以内 要件定義を含めた期間は半年ほど |
使用したツール | PowerAppsモデル駆動型アプリ |
こちらの事例の企業様でも、元々は顧客管理システムを自作していましたが、管理が複雑化したことに伴いシステムを新たに開発することになりました。
システムの作成のみではなく、要件定義なども丁寧に実施させていただき、半年ほどのプロジェクトとして無事に成功しました。
まとめ
Excelやスプレッドシートを利用して顧客管理システムを自作すれば、初期費用も掛からないため、手軽にはじめることができます。
ただし、運用が複雑化していくことで徐々に自作のシステムでは成り立たなくなり、新たに開発しなければならないフェーズに至る可能性もあります。
また、セキュリティやメンテナンスの観点から課題もあり、場合によってははじめから外部のパートナ―企業とシステムをつくった方がメリットが大きいこともあります。
そのため、専門のパートナー企業を見つけて、まずはどのようなシステムをつくりたいか相談してみるとよいでしょう。