昨今、各領域でノーコードツールの活用が広がっています。開発にあたって、これまで必要だった専門的なプログラミングが必要なくなり、一定の操作であればドラッグ&ドロップで完遂できるようになりました。
そんななか「今後エンジニア・プログラマー・コーダーは不要になるの?」「どこまでの開発をノーコードツールだけでできるの?」と考えている方も多いことでしょう。
今回は、ノーコード・ローコード開発サービスを展開する当社の視点で、「ノーコードツールの登場によりエンジニアは不要になるのか」について解説します。これからのシステムエンジニアに求められるスキルも紹介しますので、参考にしてみてください。
ノーコード開発とは
ノーコード開発とは「プログラミング言語を書かずに開発する手法」を指します。開発は各ベンダーがリリースしているノーコードツールのUI上で行います。
既にテンプレートとして備わっている各機能を、ドラッグ&ドロップによって組み合わせることで完結します。
必要に応じてカスタマイズする際には、コーディングによって機能を追加・編集することも可能です。
ノーコード/ローコード開発の市場規模
ノーコードツールに似た手法に「ローコード開発」があります。ノーコード開発は完全にコーディングなしで対応できますが、ローコードは一部のみコーディングの必要があります。
どちらも、従来のエンジニア工数を大幅に削減できるほか、専門的なエンジニアスキルが必要ないことが魅力です。
ITRによる「ITR Market View:ローコード/ノーコード開発市場2024」ではローコード/ノーコード開発市場の売上規模が右肩上がりであることが紹介されています。また次々に新しいツールがリリースされている状況です。
国内25ベンダーへの調査では、2022年度の売上金額は、2021年度比16.0%増の709億4000万円となっています。2025年度には1,000億円規模に拡大する見込みです。
ローコード/ノーコード開発が広がっている背景には、経済産業省が2018年に発表した「2025年の崖」問題があります。2025年の崖とは、「複雑かつ老朽化したシステムに依存すること」に対するリスクを指す言葉です。
各社がシステムの刷新を進めていることも追い風となり、ノーコード開発の市場規模は年々広がっています。
参考:経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」
ノーコード開発の普及でエンジニアは不要になる?
ノーコード開発が一般的になっていくなか、専門的なスキルを持つエンジニアは不要になるのでしょうか。結論としては「今後もエンジニアは必要」です。その理由を3つの観点で解説します。
ノーコード開発には限界がある
ノーコ―ド開発でつくれるアプリケーション、システムには限界があります。例えばテンプレートにのっとったWebサイトや、小規模なアプリケーションであればノーコ―ドツールだけで開発ができます。
しかし、大規模なシステム開発はできません。また処理速度を高めることも不可能です。こうした開発をおこなう際にはエンジニア・プログラマーの手でコードを追加する必要があります。
今後「ノーコ―ドツールでできること」の範囲が広がる可能性はあります。しかし現時点では、将来的にエンジニアが不要になることはないといえるでしょう。
開発の上流工程は必要となる
またコーダーとは違い、エンジニア・プログラマーの仕事には「開発の上流工程の整理」が含まれます。例えば以下のようなステップです。
- ヒアリングによる課題の抽出
- 顧客の要求定義
- システム・アプリケーションの要件定義
- プログラム仕様の定義・仕様書の作成
- 詳細の設計書作成
こうしたタスクはノーコ―ド開発でも必要になります。実装作業ではないのでノーコ―ドツールでは代替できない仕事です。
こうした観点も踏まえて、エンジニア・プログラマーが不要になることはありません。
ノーコード開発で対応可能な分野とは
「エンジニアは今後も必要になる」の根拠となる情報を細かく解説します。はじめに「ノーコード開発で対応可能な開発分野」を紹介します。
Webサイト制作
ホームページ、LP、サービスサイト、採用サイトなど、Webサイト制作はノーコードツールを用いて開発が可能です。代表的なツールは以下です。
- STUDIO
- Wix
- Jimdo
- WordPress
- ホームページ・ビルダー
- ペライチ
各ツールがWebサイト制作に必要な機能、テンプレ―トを兼ね備えています。それらをコピー&ペースト、ドラッグ&ドロップして制作できるのが魅力です。
また「TOPページ」「製品紹介ページ」「ブログページ」など、ページタイプごとにテンプレートがあるため、初心者でも簡単に基本的なデザインが施されたWebサイトを作れます。
ECサイト制作
ECサイトの制作はWebサイトのなかでも特殊です。商品紹介ページ、カテゴリページ、顧客情報入力フォーム、カート画面、決済画面など、複雑な作りになります。
その点、ECサイト制作でもノーコードツールを用いることで、基礎的なテンプレートがある状態で、ドラッグ&ドロップして制作できます。
代表的なツールは以下です。
- BASE
- STORES
- Shopify
- 侍カート
- サブスクストア
それぞれに「越境ECに強い」「サブスク販売型に強い」などの特徴があります。
ただし、ツールによっては「ブログ機能がなくマーケティングができない」「テンプレート数が少なくブランディングをしにくい」などの制約を受けます。
小規模な業務アプリケーション開発
小規模な業務アプリケーション開発であれば、ノーコード開発で完了できます。例えば株式会社サイボウズが提供しているkintoneは、ノーコードで「顧客管理アプリ」を開発できます。
ツール上の画面には「日付」「日時」「文字列」「チェックボックス」などの機能があり、これらをドラッグ&ドロップで設置していくだけでUI・機能を設定できます。
参考:kintone「顧客・案件管理にキントーン」
ノーコード開発では対応できない開発領域とは
続いて、ノーコード開発では対応できない開発内容を紹介します。この部分については、エンジニアの専門的な知見が必要です。
実行速度が求められる開発
ノーコード開発で作られたアプリケーション、Webサイトなどは実行・表示速度が遅くなる傾向があります。「動作が遅すぎて使えない」というレベルではありませんが、利用者にストレスを与える可能性があります。
実行・表示速度が速いアプリ・Webサイトを構築するためには、コーディングによる開発が必要になります。プログラムの高速化のためには、「言語を見直す」「アルゴリズム改善する」など、エンジニアの専門的な知見とコーディングスキルが求められます。
大規模かつ複雑な機能要件が求められるシステム開発
またノーコードで実装できるプログラムには限界があります。基本的にノーコードツールは対応できる範囲が定まっています。
そのため範囲外の複雑で大規模なシステム開発には対応できません。このようなシステム開発を進める場合、コーディングが必要です。
独自性の高い開発
また基本的にはテンプレートを組み合わせて開発するため、「独自性の高いシステム・UI」は実現できないのもデメリットです。
例えば「Webサイト上に複数のレイヤーで動画ファイルを組み込んで動的に見せたい」とします。しかし「同じセクションに複数の動画ファイルを埋め込めない」というノーコードツールの仕様上があるケースも考えられます。
この場合は、コードを記述することでカスタマイズする必要があります。
これからのシステムエンジニアに求められる能力
このように、ノーコードツールでは従来の一部のコーディング業務を代替できます。一方で高度なプログラミングが必要な場合は、エンジニアが必要です。
それでは、ノーコードツールが広がっていくなか、これからのエンジニアに必要なスキルを紹介します。
高度なプログラミングスキル
ノーコードツールで対応できない高度なプログラミングスキルは、これからも必要です。反対に初歩的なプログラミングしかできないエンジニアは淘汰されてしまいます。
扱える言語の幅、幅広い要件に対応できるスキルはもちろんですが、プログラミングには「課題を特定する力」「要件を定義する力」「適切なスケジュールを引く力」などの上流工程も含まれます。
こうした上流工程はノーコードツールでは代替できません。そのため「課題解決」の一連を思考するスキルが求められます。
対人コミュニケーションスキル
システム開発をする際には、エンジニアだけではなく、さまざまなステークホルダーとコミュニケーションをとる必要があります。
セールス、マーケター、バックオフィスなど、課題を持つ部署の担当者と対話をしながら課題をキャッチアップして解決策を提示しなければいけません。
システム開発において、コミュニケーションエラーは致命的です。担当者とのコミュニケーションを怠ると、機能要件などで齟齬が起きる原因になります。そのため「コミュニケーションスキル」は、エンジニアにとって今後も非常に重要な能力です。
課題発見力・課題解決力
エンジニアにとって「課題を正しく把握し、無駄のない解決策を提示する能力」は、今後より重要になります。
開発において「課題を理解すること」は非常に大切です。課題を誤って認識すると、その後の工程すべてでミスが起きます。
また「無駄のない解決策を考えるスキル」も重要です。開発したシステムは長期的に使われるものです。長く作業の無駄が続くと、大規模なコスト(人件費)の損失が発生します。そのため、最善の解決策を考えられるエンジニアは、今後も重宝されます。
自社でノーコード開発を成功させるためのポイント
最後に「ノーコード開発を成功させるためのポイント」を紹介します。
「導入の目的」を定義しておく
前提として目的を定義しておきましょう。まずは「解決すべき課題」と「開発要件」をしっかり定義しておく必要があります。そのうえでノーコードツールを導入する目的を定めてください。
この前提がブレてしまうと、ノーコードツールを導入した後で「必要な機能が備わっていない」「課題を解決できない」などの問題が発生してしまいます。
「自社の課題をノーコード開発で解決できるか」を知っておく
まずは前提として、抱えている課題をノーコードツールで開発できるかを把握しておきましょう。ノーコード開発には限界があるため「”流行っているから”導入した」という思考で導入してはいけません。
事前に「自社の課題をノーコードツールで解決できるか」を把握しておくことで、安心して開発できます。
また、この際に「一次リリース後に出てきそうな課題」もラインナップしておきましょう。リリース後に「アップデートのために必要な機能がノーコードで作れない」といった問題も起きがちです。
運用フェーズまでを見越したうえで、問題ない場合にノーコードツールを導入しましょう。
開発初心者はリリース前にレビューを重ねる
ノーコード開発ではコーディングが必要ありません。必要な機能やワークフローをドラッグ&ドロップで構築できるため、非エンジニアでも担当できます。
しかし、ノーコード開発でも「無駄のないシステム」を構築するスキルは必要です。この思考力はエンジニアスキルの一部です。システム開発に慣れていない非エンジニアが構築する場合、無駄の多い成果物になってしまう可能性があります。
そのため、初心者がノーコード開発をする場合は「開発に着手する前」「リリースする前」に有識者からレビューしてもらうことをおすすめします。
また社内にノーコード開発の知見がない場合は、初回のみ外部企業に委託することもおすすめです。
ファンリピートではノーコードに特化したシステム開発・導入支援サービス「BOLT」を展開しています。お客様のご要望を丁寧にヒアリングしたうえで、開発を推進します。
BOLTについて、気になる方は以下のページから資料請求していただけます。
まとめ
今回は「ノーコード開発が広まるなかエンジニアは不要になるか」について解説しました。結論、まだノーコードツールには限界があるため、今後もエンジニア、プログラマー、コーダーは必要とされます。
一方でノーコードツールによって開発スピード向上、開発の民主化が進んだのは間違いありません。今後も積極的に活用していきましょう。
しかしながら、初心者の方にとってノーコードツールをいきなり使いこなすことは難しい面もあります。不安がある場合は、ノーコード・ローコード開発の専門化であるファンリピートまで、お気軽にお問い合わせください。